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中里大企業・本社ビルにある会長室――――
「………私だ」
中里雅史はプライベート用の携帯電話を使ってある組織にコンタクトを取っていた。
『マサさんですか。お久しぶりですね。あんたがここにかけてきたってことは……仕事ですか?』
マサさんとは当然雅史のことを指す。
「私の息子を大いに傷つけただけでは止まらず、息子が通っている学校を炎上させてその飛び火が我が大企業にまで降りかかり、この私と我が社そのものに傷をつけた愚か者が現れた。後は……もう分かるな?」
『もちろん。いつものやつですよね。それに、あんたが今言った件はこちらもある程度聞いてます。坊ちゃんの容態はいかがですか?近いうちに部下にお見舞い品を送らせましょうか?』
「ふん、そうさせてもらおうか。今回の標的の名前と見た目の特徴をこれから伝える。いいか―――」
雅史がかけている連絡の相手は、反社会に位置する組織の人間である。雅史が 起業した会社が中流の企業、国内トップクラスの大企業へと上りつめるまでの間、多くの商売敵やライバル企業に揉まれたことが何度かあった。
それらを蹴落とす手段として、莫大な金を餌にして反社会的勢力…法律の外で生きている人間が集った組織(いわゆる暴力団・ヤクザ)と関係を結び、利用するようになった。主に荒事で解決したい時に彼らを呼び出して、出張らせて敵対している会社・企業に圧力をかけていた。
汚い手段・無法者の力を多用してライバルをたくさん蹴落とした結果、自分の会社を国内トップクラスの大企業へと発展させたのだ。当然このことが世間に明るみになってしまうと中里大企業も雅史自身も社会的に終わることになるので、彼も必死に上手く隠し通している。成功者であると同時に彼はギリギリの人生を歩んでもいる。
『――こいつ、本当に坊ちゃんと同い年なのですか?どう見ても高坊か大学生のガキにしか見えないのですが。
それにこいつ一人で、坊ちゃまと彼の仲間たちをあそこまで痛めつけたっていうのですか?あれはどう見ても複数人による暴行を受けたようにしかみえませんよ』
「暴力の知識に長けている君が言うのならそうなのだろうが、残念ながら私が言ったことは事実だ。奴…三ツ木柊人が一人でやったことだ。今回の標的は当然荒事に…というよりそれを専門としているガキだ。
君たちなら大丈夫だと思うが、くれぐれも油断はするなよ。そして、殺しも無しだ。奴にはこれからの地獄をたっぷりと見せなければ気が済まない。簡単に死んでもらっては困る……」
『おー、怖い人を怒らせたものだ。こちらとしてもお得意様であり恩もあるお方からの頼みとあらば、当然やる気を出しますよ。それで、標的を捕らえたらマサさんのところへ届けましょうか?』
「必要無い。そっちで殺さない範囲で好きなだけ甚振った後、適当に捨てて置くだけで良い。では、これで失礼する…」
通話を切ると雅史は仕事用の椅子に腰かけて一息つく。彼はたった今、ビジネス(荒事)として繋がりを持つ暴力団に、三ツ木柊人を徹底的に潰し、息子の中里優太と同じあるいはそれ以上の傷を負わせるよう依頼した。
元々シュートに反社会的勢力の刺客を送るのは、もっと先にする予定だった。シュートの両親を経済的に追い詰めて甚振ってからシュートに直接的な暴力を振るう、というのが雅史の計画だった。
それを大きく変更して、先にシュートを潰す方針に変えたのは、先程のシュートとの通話が原因である。わずかな時間での話し合いの中で、雅史はシュートに対して何とも言えない脅威を抱いた。不気味にも思い、早めに潰しておこうと判断した故の措置である。
「私の裏の部下でもある暴力団の連中は、都内でトップ規模の組織だ。奴らが総出で動けば、たかだか中学生一人など砂利も同然。そうだ、何も恐れる必要など無い…」
口ではそう言う雅史だが、しばらくしてから中里大企業が有する、荒事に長けている表向きの団体にも連絡を入れるのだった。
中里雅史が万が一のことを想定して入念な対策を進めている間、シュートは調査をしていた。中里会長の普段の動向についての観察である。中里会長が普段どの会社に通っているのか、いつ出勤していつ退勤しているかなど、おおよその一日のスケジュールを予測していくのだった。
それから数日後、解雇処分を下されて会社の敷居にも入ることも禁じられたシュートの両親は自宅にいる回数が増えて、シュートと話す機会も増えた。
ある日母の羽佳理が、転校手続きを済ませるよう促してきたので、シュートは嫌々ながらも地元の公立中学校へようやく赴いて、転校手続きを済ませた。しかし七月後半に差しかかる時期となっていた為、シュートが学校に通うのは夏休み明けということになった。
その間在学生たちと同じ夏休みの宿題が大量に出されて、それを消化する日々に追われてうんざりするシュートだった。
そんなある日の夜。両親が揃って不在の中、シュートはいつものようにテレビゲームに熱中していたところにインターホン音、続いて玄関ドアを叩く音が響いた。
(親父でも母さんでもないな。二人は新しい会社の設立場所のリサーチとかで旅行しているから。
たぶん、歓迎しちゃいけない連中が訪れてきたのかもな)
時刻は二十二時を指している。こんな時間に訪れる者など、たいていは外出している家族かロクな連中かしかない、とシュートは決めつけていた。
その予想は正しく、インターホン画面を見ると真っ黒となっており何も見えない。玄関ドア前に立っている者が手でカメラを塞いでいる証拠である。
ますます怪しい連中が来たと確信するシュートだが、臆することなくドアを開けに向かう。異世界の力がある以上、誰が来ようとも自分には全くの脅威にもならないと自負しているからである。
玄関ドアを開いて、まず目に入った人物は頬に切り傷の痕がある金髪の若い男だった。人相もかなり悪いその男は、シュートを威圧しはじめる。
「三ツ木柊人、だな。うちの事務所に来てもらうぜ」
目の前にいるアウトローな見た目をした男とその後ろにいる数人の黒服の男たちからして、この連中が反社会的な勢力であると確信するシュートは、相変わらず臆さずのまま煽るように話す。
「お前らって明らかにヤの字が付く組織だよね?そんな社会のクズどもが一般人の家に押し入って威圧してくるとか、完全にアウトだろ。今すぐ通報してお前ら全員警察に―――」
直後、後方に視線を向けて余裕そうな態度で喋っているシュートの鳩尾に衝撃が走る。目の前にいる金髪の傷男が容赦無い突きを放ったのだ。この男は空手の黒帯を取得しているだけの実力があり、腹パンで相手を気絶させることなども容易としている。
(ふーん?そんな見た目してるくせに、武道経験あるんだ?ちょっと油断してた。
全然効いてないんだけど、ここはあえて気絶したフリでもして捕まってやろう)
そう決めたシュートは悶絶したリアクションをとり、全身の力を抜いて前のめりに倒れようとする。そんなシュートの体を持ち上げた金髪の傷男は素早く仲間たちの間に入って、シュートを運んでいるのを周囲に見えないようにする。
「はん、粋がってるだけのガキってのは本当らしいな。隙だらけだったからあっさり落とせたぜ」
シュートを殴った男は蔑んだ目で嘲る。所詮は中学生だと完全に見下した発言をしながらシュートを車へ押し込んだ。
「(ニィ……)」
シュートは気絶したフリをしつつ内心笑っていた。同時に怒りも抱いた。いきなり自分をこんな目に遭わせた彼らを存分に甚振って壊しても罪悪感は無い、彼らの拠点で存分に復讐してやろうと決意するのだった。
コメント
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カイガさんの新話、読んだよ〜!!📚✨ 中里雅史、ついに反社会的組織と直接繋がってる闇を曝け出したね…!「マサさん」呼びの時点でやばい匂いプンプンだったけど、まさかヤクザにシュート潰しを依頼するとは🥶 でもその場で気絶フリして逆に捕まるシュートの余裕っぷりが最高すぎる!!「ニィ…」の含み笑いにゾクゾクしたよ〜🌈✨ 暴力団相手にどんな仕返しするのかマジ楽しみすぎる!!!次の話も待ってるね🌸
カイガ
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#魔道具職人
こはる
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