あの夜、あなたがくれた大切な宝物～御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く～

「麗華ちゃん、いいね～こっち目線で挑戦的な笑顔ちょうだい」

有名カメラマンにカメラを向けられてる気分、最高なんだけど。

私、itidou化粧品が誇る、超人気の口紅、秋の新色CMに参加することになってかなり興奮してる。

人気モデルばかりが数名集められ、それぞれの色を担当する。

私は髪の色に合わせて「チェリーブラウン」。

まだもう少し先にやって来る秋にピッタリの色だ。

美しい発色と、食事をしても落ちないのが売りの商品。

ピンクにはホワイト、黒にはゴールドの飾りをあしらった高級感溢れるケースもロングヒットの要因だ。

「麗華ちゃんいいよ～もっと唇、色っぽく」

口紅のイメージポスターの撮影のために様々な動きをつける。

「いいね、それ！ 色っぽいよ。そのまま視線を右側にズラせて。そう！ ゆっくりとね」

カメラマンが一流だと、どんどん気分も上がって、一気に撮影が進む。

今日は、まだこれからCM撮影もある。

私の姿がテレビに流れると思うとワクワクした。

テレビCMは初めての経験。

普段は人気雑誌のモデルをしてるけど、ゆくゆくはテレビの世界で活躍したいと思ってる。

使えるコネは何でも使う。

だけど、お父様はそんなに甘くないから、今回のCMもオーディションを受けた。

合格した時はすごく嬉しかったけど、周りには「どうせ父親の後押しがあったんだろ」っていうバカな人達もいた。

違うわよ、私は自分の魅力でこのCMを勝ち取ったんだから。

これからもっとメディアに露出するから見てなさい。

ポスター撮りの後、ビルの屋上での撮影に臨んだ。

itidouの日焼け止めを手足に塗り、バッチリ対策した。

日差しは最大の敵。

この顔と体にシミなんてできたら大変だわ。

いつだってプロ意識を忘れずにどんなことにも取り組んでる。

私は……

他のモデル達とはランクが違うんだから。

「お父様！」

「麗華、頑張ってるな」

屋上へ向かうとお父様がいた。

「どうしたの、撮影現場まで来るなんて」

「今日の撮影は、どうしても見ておきたかったからね」

itidou化粧品の社長が来てるとあって、少しピリッとした空気が漂ってる。

でも、スタイルが良くて、年齢を感じさせないダンディなお父様に、周りの女性スタッフやモデル達は目を輝かせながら挨拶をしてる。

「一堂社長」

「ああ、優木君。今日はよろしく頼むよ」

「お任せ下さい。麗華さんや他のモデルさん達に気持ち良くCMに臨んでもらえるように、我々もチーム一丸となって取り組みましたので。今回も喜んで頂けると思います」

お父様がいつもお世話になってる大手広告代理店の優木 薫(ゆうき かおる)さん。

以前はモデル仲間でもあったけど、今は立派な営業マン。

爽やかでかなりのイケメンだけど、残念ながらモデル仲間と結婚しちゃった。