なち視点
「っはぁ…はぁ…」
「ここまで走れば、もう来ないだろう…」
イタ王にあんなこと言われてしまった
なんでもない
なんでもない
そう言い続けていたがもう限界なのかもしれない…
でも絶対言えないんだ
人を殺したなんて…ましてやそれを隠したなんて…
これからアイドルなんてやっていけるのだろうか
こんなキレの無い動きと笑っていない目で
ファンは離れていくだろうし、
彼奴からも冷められてしまうかもしれない
それも絶対嫌なんだよ…
「なち…ッ!」
「イタ王…」
そんな事を考えていたら、またイタ王がこちらに走ってくる
いつまでこうしていられるだろうか
警察はもう動いているのだろうか
正当防衛、だった
やりすぎたんだ、それを隠してしまったらもう100%犯罪だから
「もう俺から離れてくれ…、お願いだ。お前には何も関係無い事だし、変にずかずかプライベートに入られては困る」
これはプライベートな事
もうここまで来たら引き返せないし、自主しようとして何度もやめた
通報されたら、捕まってしまう
2人とのこの関係が崩れるのだけはあってはならない
もし2人が味方になってくれたら心強いけども、バレたときに共犯者として扱われてしまう
もう無理なんだ
「このままじゃライブにも影響が出るし、第一io達は仲間なんねッッ…」
「ちょっとだけでも、話してほしいんね!」
やめてくれ
これ以上言われたら、感化されそうになるんだ
「大丈夫、今までも弱みとか悩みいっぱい共有し合ったし、引くことも離れていくことも無いんね」
それが困るんだよ
この悩みを聞いたら離れていくだろうし、むしろ離れていってくれ
お前らが捕まるなんて、俺が死んでも御免だから
「ね、辛い事あるんでしょ。その悩み、ちょっと分けてほしいんね」
「うるさい…お前なんかに分かるもんか…ッ!!」
突き放してしまうのは辛いけども、こうするしかない
いっそ消えてしまいたい
そう思ったとき、身体が暖かい感覚に包まれた
「分からないかもしれないけれど、恋人なんだから、頼ってくれたっていいんね、全部肯定するんね!!」
「…へ、」
抱擁だ
ぎゅっと、心が締まる音がして…
暖かいと感じたのは、身体だけじゃなくて心のせいもあったのかもしれない。
気付いたら目から水が零れていたようで、あたふたしているイタ王が揺れた視界に映った
俺がちょっと笑ったら、頭にはてなマークを浮かべていた相手も笑い出した
…あの人を殺さなければ、犯罪を犯さなければ
こうやって笑い合える日が、もっと続いたのだろうか
そんな、もしもの事、俺には知りえるはずも無かった。
コメント
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一気読みさせていただきましたああああああなんですか最高ですか✙のメンタルが心配だよ、、、