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#学園
不羽@やる気をください
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日本の経済を裏から動かす超巨大組織、白鳥財閥。その総帥の愛娘である白鳥詩織(しらとり しおり)は、生まれた時から「白鳥宮」と呼ばれる広大な敷地から一歩も外に出されずに育てられてきた。世界中の宝物を集めたような豪華絢爛な自室で、詩織は窓の外の街並みをじっと見つめている。
「詩織お嬢様、朝でございます。お目覚めのお手伝いを」音もなく部屋に入ってきたのは、幼い頃から詩織の身の回りの世話をしているメイドのエマだった。エマの手には、この日のために仕立てられたシルクの純白のドレスが握られている。しかし、詩織はそれに目を向けようとはしなかった。
「……ねぇ、エマ。私はいつまで、この美しい鳥籠の中にいなければならないのかしら」
詩織が静かに呟いたその言葉に、エマは息を呑んだ。詩織の瞳は、タブレットの画面に映し出された「一般的な高校のパンフレット」を捉えていた。色鮮やかな制服を着て、友達と笑い合う同世代の少女たちの姿。それは、すべての富を手に入れた詩織が、唯一持っていない「普通の日常」だった。
「お嬢様、まさか……」
エマの制止を振り切るように、詩織は静かに立ち上がると、朝食の席へと向かった。100帖はあろうかという大食堂では、すでに過保護な両親が待っていた。詩織が席に着くなり、父親が血相を変えて話し出す。
「詩織、聞いたぞ! 一般の学校に行きたいなどと……! 冗談じゃない、外の世界は危険に満ちている。誘拐犯や、お前を利用しようとする不届き者ばかりだ!」
「そうですわ、詩織。あなたに何かあったら、私たちは生きていけません」
母親もハンカチを握り締め、今にも泣き出しそうな声をあげる。両親の愛は本物だったが、それは詩織の自由を奪う重鎖でもあった。
「お父様、お母様。私は白鳥の名を汚すつもりはありません」
詩織は背筋をピンと伸ばし、凛とした声で二人を見つめ返した。その瞳には、決して折れない強い意志が宿っている。
「ですが、私はこの目で見てみたいのです。教科書の中だけではない、本当の世界を。もしお許しいただけないのなら、私は明日から一切の食事を口にいたしません」
お嬢様としての気品を保ったまま放たれた、命がけの宣言。静まり返る食堂の影から、一人の青年が音もなく歩み出た。白鳥家に仕える若き執事、橘蒼太(たちばな そうた)である。橘は主人の前に膝を突くと、静かに頭を下げた。
「旦那様、奥様。お嬢様の決意は本物のようです。……これ以上お嬢様を閉じ込めてはお心が壊れてしまう。不肖この橘、命に代えましてお嬢様を影からお守りいたします。一般の学校への入学手続きを、どうか私にお任せいただけないでしょうか」
娘の強い眼差しと、信頼する執事の言葉に、両親はついに顔を見合わせ、深くため息をついた。こうして、白鳥財閥の歴史上、前代未聞の「お嬢様の庶民留学」が認められたのだった。
コメント
3件
ああ、なるほど……この「鳥籠からの一歩」、とても惹き込まれましたね。白鳥詩織の置かれた閉塞感と、それでも外の世界を見たいという意志の強さ。華やかでありながら圧迫感のある白鳥宮の空気が、エマや両親の台詞からひしひしと伝わってきました。そして橘蒼太――執事という立場で「命に代えて」守ると言わせる、詩織の覚悟の説得力がすごい。彼の登場で物語のバランスがぐっと締まりました。次話で彼女が見る「本当の世界」が、どう描かれるのかとても楽しみです。