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#学園
不羽@やる気をください
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白鳥詩織の「庶民留学」が認められた翌日から、白鳥宮はかつてない狂騒に包まれていた。
「橘! 詩織が通うことになる『私立青葉学園』の警備体制はどうなっている!」
「はっ。旦那様。一般クラスの生徒に紛れ込ませる形で、我が財閥の息がかかった優秀なSPをすでに20名、同級生や教師として学園内に潜入させました」
「甘い、甘いぞ橘! 登下校のルートにある防犯カメラの数もすべて十倍に増やしなさい!」大真面目に怒鳴る父親の横で、執事の橘蒼太は「御意に」と静かに頭を下げた。学校側には白鳥財閥の権力を使って、詩織の正体が一般の生徒にバレないよう、徹底的な情報統制が敷かれている。詩織の登録名は、ただの「白鳥詩織」。
財閥の令嬢だとは夢にも思われないよう、完璧な裏工作が完了していた。一方、詩織の自室では、別の問題が勃発していた。
「お、お嬢様……! 本当にこれを、お召しに、お召しになるのですか……!?」
メイドのエマが、まるで恐ろしい爆弾でも扱うかのような手つきで、一着の衣服を掲げている。それは、私立青葉学園の指定制服であるブレザーだった。紺色のシックなジャケットに、チェック柄のプリーツスカート。一般クラスの女子生徒たちが毎日着ている、ごく普通の、既製品の制服である。
「ええ、とても素敵ですわ、エマ。私、こういうお洋服を着てみたかったのです」
詩織は目を輝かせ、鏡の前で自分の体にブレザーを当ててみた。いつも身にまとっている、最高級シルクやレースのドレスに比べれば、布地は驚くほど硬く、仕立てだって手作業ではない。けれど、詩織にとってはこれこそが「自由」の象徴だった。
「ですがお嬢様! 生地がポリエステル混紡でございますよ!? お肌が荒れてしまったらどうされるのですか!」
「まぁ、そんなに弱くありませんわ」
「ダメです! 夜通しで裏地に最高級の絹を縫い付け、ボタンもすべて特注のプラチナ製に付け替えさせました! これでなんとか最低限の気品は保てるかと……!」
ハラハラと涙を流すエマに、詩織は困ったように微笑んだ。数日後。すべての準備が整い、詩織のデスクには一枚の身分証明書が置かれた。そこには、ブレザー姿で微笑む自分の写真と、大きく【一般コース・1年A組】と印字されている。
「いよいよ、明日からですわね」
窓の外、夜の街の明かりを見つめながら、詩織はそっと胸に手を当てた。そこには、見たことのない世界への期待で、トクトクと小さく、けれど確かな高鳴りを刻む心臓の鼓動があった。
コメント
3件
読ませていただきました。第2話、一気に物語が動き出しましたね。何より惹かれたのは、財閥側の「完璧な裏工作」と詩織本人の純粋な憧れの温度差です。父親と執事のやり取りに込められた過保護さに笑いながらも、エマが制服にシルクやプラチナを縫い付けるシーンは、令嬢の日常と「普通」の間にある埋めがたい距離を感じさせて切なかった。最後の胸の高鳴りが、この先の学園生活をとても楽しみにさせてくれます。続きが気になります。