第十話 . 偽りの姿を _ 。
沈黙が続く 。
僕もジュノも 、 征四郎と少し距離を置いて座り込んでいる 。
征四郎が何に対して怒っているのか …
僕にも分からないんだ ……
征四郎に聞かなきゃ …
忘れないうちに聞いておかないと ……
僕の息はだんだんと荒くなる
呼吸の仕方が分からなくなってくる
征四郎のことばかり考えていて 、 僕自身に目を向けていられない 。
ジュノが僕に何か話しかけている
聞こえないんだ … ジュノ …… 。
意識が遠のくような感覚がするんだ …
ごめんね … 、 たくさん迷惑をかけて …… 。
居なくなれるのなら 、 本望だよ …
僕は … 、 ぼくはね …… ?
あぁ …… 、 もう … だ 、 め …… 。
「息をずえ゙ぇ゙ぇ゙ ! ! ! ! ! 」
「居なくなるな゙ぁ゙ぁ゙ ! ! ! 」
せ … し 、 ろぉ …… ?
せいしろ … 、 あたまがいたいよ …… 。
せいしろう …… 、 たすけ 、 て ‥. (泣
まだ … (泣 まだここにいたいんだ … (泣
「た ッ … 、 けて ッ ッ …… ! (泣 」
声も出せないくらい苦しい
息が吸いたいのに 、 吸えない 。
僕は息の吸い方すらも忘れたの ‥. ?
征四郎 … 、 僕 、 助かってもいいのかな ?
このままの方が …… 、
ダメだ … ! 僕 …… !
しっかりするんだ兄だろう … ! ! !
「すぅーーー ! ! ! (泣 」
僕は大きく息を吸った
次第に呼吸も落ち着いてきた
ジュノはなぜか泣いていた
征四郎は … 、 僕に顔を見せてくれない … 。
…… (泣
僕の何が嫌なの … ? (泣
どうしてなの … ! (泣
「どうして僕を避けるんだ … ! ! ! (泣 」
僕の感情はバラバラだった 。
互いの感情が激しくぶつかり合っている
征四郎は僕の目を見てこう言ったんだ ……
「お前の前では平気なフリしてるけど 、
お前が俺の存在を忘れるのは怖ぇんだよ 。
だからお前から離れようと思ったんだ 。
お前に “ 誰だ ” って聞かれるのが俺はすごく怖かったんだ … 。
こいつ ( 世良 ) をお前のところへ連れて 、 お前はこいつを頼れば良かったんだ 。
そうすれば俺との関わりは一切なくなる。
お前が俺を忘れたタイミングで 、 俺はここを出ようと思ってたんだ 。
お前が思い出すことのないように 、 なんの跡形もなく散ってやろうと思ったんだ 。
なのに … 、 俺はできなかった …… 。
お前と一緒に居たいから … ! ! !
俺はお前が … 、 お前がすきだから … ! (泣
… 俺のこと 、 忘れないで 、 にぃちゃん(泣
俺の側から居なくなるな … ! ! ! (泣 」
征四郎の弱音を聞くのは何年ぶりだろう …
いや 、 忘れたのかもしれないが … 。
僕にいつも強気でいた征四郎が ……
僕に弱音を吐いた … 。
僕のことを思って 、 … そうかい …… 。
ごめんね 、 征四郎 。
怖い思いをしたよね … 。
僕は征四郎を抱きしめた
征四郎は小刻みに震えている
僕に弱音を吐くのも 、 相当な勇気が必要だったのだろう 。
僕が記憶をなくしているうちに 、 征四郎をここまで追い詰めていたとは … 。
征四郎のことをずっと気にかけていたつもりだったが 、 僕が気にかけていたのは …
僕の前で偽りの姿をしていた征四郎だったんだね … 。
気づいてあげられなくてごめんね 。
僕と征四郎は抱き合ったまま目を閉じた