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目の前に現れた大きすぎる蜘蛛。
あまりの大きさ、そしてその様相に全身にサブイボが立つ優恵楼(ゆけろう)。
眼が8個あり、その白目がなく黒目しかないような目に
優恵楼が持つ松明の光が反射し、やけに艶やかに見える。
さらにその眼の周り、というか顔の周りにも短い産毛のような毛が無数に生えているのも気持ち悪く
顔付近から生えている脚も、可動域が広いのか、間接からの動きが気持ち悪く
お尻が大きいのも気持ち悪く、歩くときに、お尻が少し上下左右に揺れるのも気持ち悪く
お尻に生えているのが、産毛ではなく、1本1本がしっかりとし
光を反射し、艶やかな毛で覆われているのも気持ち悪く、もう気持ち悪い点が多すぎるのも気持ち悪く
ナレーターの私も「気持ち悪い」という言葉が出てきすぎて気持ち悪く
ゲシュタルト崩壊してきて気持ち悪く、とにかく気持ち悪く、大きすぎる蜘蛛の全貌が明らかになった。
はいー。無理ー
と瞬間的に思う優恵楼。野生の熊と遭遇したときのように
その蜘蛛から視線を外すことなく徐々に後ろに下がる。視線を外すことなく…
「気持ち悪っ」
気持ち悪すぎて視線を外し、その大きすぎる蜘蛛の足元の床を見る。
その後もチラチラと蜘蛛に視線を向け、ジリジリ下がり、また視線を外し、を繰り返していた。
しかし、下がっている間も蜘蛛も優恵楼にジリジリとにじり寄っていたので、距離感は変わらない。
それどころか、シュルシュルシュルという声なのか、糸を作る音なのかが優恵楼の背後からも聞こえた。
「Oh…my…」
思わず英語が飛び出る優恵楼。ただ目の前にも蜘蛛がいるため、背後を見るわけにもいかない状況。
考えた末、横の石壁を背にして、左右を見れる状況にした。すると
「鏡かな?」
と思うほど左右に全く同じ大きな蜘蛛がいた。
あぁ〜〜〜〜〜どうするぅ〜〜〜〜〜
心の声がまるで壊れたロボットのような
扇風機の前で「我々はぁ〜」と言っているような感じになる。いつもなら
逃げろ
とスタンガンをお目当ての生徒ではない生徒にしてしまった理科の先生が如く逃げていたが
現在、逃げようにも逃げられない。左には蜘蛛の巣まみれの通路を背にした蜘蛛が。
右手には松明の明かりがある通路を背にした蜘蛛が。
殺るなら右か
ということで震える左手に盾を、震える右手に鉄の剣を装備し
「…っしゃー!…殺ってやんよ」
と震える声で震える脚で対峙した。
先程まで左側にいた蜘蛛も空気を読んでくれたのか、手出しする様子はなく
この世界に来て初の戦いをすることとなった優恵楼(ゆけろう)。
「まあ、いずれは。戦うことは避けては通れないと思ってたよ」
と言う優恵楼に呼応をするように、シュルシュルシュルという声なのか音なのかを出す蜘蛛。
「すまん!」
先制攻撃は優恵楼。バスケットボールを殴ったときのような反動が
鉄の剣越しに右手に伝わってくる。攻撃を喰らい、キュルシュルッっとと後ろに下がる蜘蛛。
蜘蛛も蜘蛛でジャンプをし、脚を使って攻撃してきた。痛いのは嫌なので…盾を構えた。ゴンッ。
木製のテーブルを叩いたときに手に響く衝撃のような衝撃が左手、いや左腕に響く。
「うぅっ」
RPGのように優恵楼が攻撃し、蜘蛛が攻撃してきて攻撃を防いでを繰り返した。
キュルシュルシュル。という声なのか音なのかを残して倒れ
倒れたと思ったらすぐに体が黄緑色の光の魂(たま)の集合体となって解けて消えていった。
その光の魂(たま)の一部が優恵楼(ゆけろう)の体に吸収される。
「おぉ。これが経験値ね」
そう。ワールド メイド ブロックス(元ネタのゲームのプレイヤーの皆様も(小声))を
プレイしているプレイヤーはわかると思うが、黄緑色の光の魂(たま)みたいなのが経験値なのである。
それが消えゆく体の一部、魂のようなものの一部であることは恐らく優恵楼しか知らない。そう思うと
「なんかいろいろ申し訳なく思えてきたなぁ〜…」
と主に経験値トラップなるものを想像し、多少申し訳ない気分になる優恵楼。すると背後から
「もう終わりました?」
と言わんばかりにシュルシュルシュルという声なのか音なのかをさせる蜘蛛。
「おぉ」
そちらの蜘蛛に体を向ける。戦いと終えたとはいえ、先程の蜘蛛と戦う恐怖でまだ脚が震えている。
「もう慣れたからな」
めちゃくちゃ嘘である。心の底では
戦わずに済むなら戦いたくない
と、親友が実は敵側だったときの、異世界バトルものの主人公みたいなことを思っていた。
しかし心を決めた。震える脚で、逃げることなく蜘蛛と戦うことにした。
仲間の仇と言わんばかりに先制攻撃は蜘蛛のほう。盾で防ぐ優恵楼。
戦いたくない以上に攻撃を喰らいたくない。攻撃を防いですぐに蜘蛛を鉄の剣で斬りつける。
不幸中の幸いなのが、斬った感覚がリアルじゃないこと。
まあ、リアルにこんなデカい蜘蛛を剣で斬ったことがないから、もしかしたらこれがリアルなのかもしれないが
想像上のグチャッ!グチョッ。といったグロテスクな感じがないのがせめてもの救いだった。
蜘蛛からの攻撃を防ぎ、優恵楼が蜘蛛に攻撃する。
またそれを繰り返し、目の前で蜘蛛が倒れ、黄緑色の光の魂の集合体になって消えていき
その一部が優恵楼の体に吸収された。
「ふうぅ〜〜…」
一仕事を終え、一安心。さて、その奥の蜘蛛の巣だらけの通路に近づく。
その通路は本当に蜘蛛の巣だらけ。1つ1つ剣で切り、アイテムとして回収していく。
すると蜘蛛の巣で気づかなかったが、通路の中央に黒い格子状のブロックが置いてあり
その中には小さな蜘蛛が囚われているようにクルクルと回っていた。
「初めて見た」
そう。お気づきの方もいるかと思うが、これは「スポーンブロック」。
ワールド メイド ブロックス(元ネタのゲームのプレイヤーの皆様も(小声))を
プレイしているプレイヤーはわかっているであろう。そのスポーンブロックというものは
そのスポーンブロックの周囲に無尽蔵にモンスターを湧かせる装置なのである。
湧くモンスターは、なんとなくわかるだろうが
そのスポーンブロックの中央で囚われているように回っている小さなモンスターである。
なので今回の場合、洞窟蜘蛛と呼ばれる蜘蛛が無尽蔵に湧くのである。
「壊すか?」
スポーンブロックは壊すことができる。しかし壊したら、当たり前だが
スポーンブロックによりそこにもうモンスターが湧くことはない。もちろん暗ければ湧くが。
「松明?」
壊す以外にもモンスターの湧きを抑える方法がある。それが正六面体のブロック、正方形が6面あるブロックの
設置されている床面以外、5面に松明を設置すること。
暗い場所で湧くモンスターを明かりに力で封じ込めるというわけだろうか。
とにかく原理はわからないが、それで湧かなくなるのである。
しかし、松明でスポーンブロックを囲みモンスターを湧かなくさせるという方法をとる場合
大概は今回の話で出てきた「経験値トラップ」なるものを作るためである。
だが今の優恵楼(ゆけろう)にはまだまだ必要のないものだし
洞窟蜘蛛の経験値トラップはめんどくさいのを知っていたので
トットットット。ポコンッ。ツルハシで壊した。
ちなみにスポーンブロックはアイテムとして入手することができない。
「まあ、この世界でも無理だよね」
ほんの少し期待した優恵楼だったが、やはりアイテムとして入手することはできなかった。
その代わり経験値の黄緑色の魂(たま)が優恵楼の身体に入ってきた。
「ふうぅ〜…。まだ脚が震えてる」
洞窟蜘蛛との格闘からだいぶ経っているがまだ震えは止まらなかった。
それほどまでに非現実的で恐ろしい体験だったということだ。
「少し…休憩…」
ということで石の壁にもたれかかる形で座り込んで一旦休憩をすることにした。