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「お前が信じなくても、それが現実だ。自分でもわからないんだ、何でこんなにもお前に惹かれるのか。ちゃんと、柊の彼女だって理解してるのに……」
心臓の音がどんどん早くなる。
「俺は、柊と柚葉を応援してるフリして、ずっと柊を騙してたんだ。お前に片思いしてること、口が裂けても言えなかった。でも、これだけは言える。お前が柊と結婚するなら……」
樹、もうそれ以上言わないで……
「俺は、黙ってお前のことを想い続ける覚悟だった」
「そんな……」
「でも、柊が柚葉を大事にしないなら、俺がお前を守りたいって思った」
ダメだ……
必死にせき止めていた感情が一気に溢れ出す。
我慢しなきゃと思うのに、どうしようもない思いにかられ、私は両手で顔を隠して泣いた。
樹の想いが、死ぬほど嬉しい――
「柚葉、ごめん。お前を泣かせるつもりなんてなかった」
首を横に振り、気づいたら、私は樹の胸に飛び込んでいた。
ねえ、柊君。
私、あなたのことが本当に大好きだった。
好きで好きで仕方なかった。
一生、ずっと一緒にいたかった。
でも……
もう、何もかも全部忘れたい。
忘れてしまいたいよ。
これ以上、苦しい思いは……したくない。
柊君、お願い、私の心の中から消えて……
今すぐ私を自由にしてほしい。
そんなことを考える私を、樹は何も言わずに胸の中で泣かせてくれた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔。
恥ずかしさを堪え、その顔をあげたら、樹の目は切なく、悲しい色をしていた。
樹、どうしてあなたはそんなに素敵なの――
思わず口にしてしまいそうになる。
もう……ダメ。
樹を求める感情がひとりでにこぼれ出し、手に負えないくらいのスピードで駆け出した。
樹は、その想いを見透かしたように、濡れた頬を両手で優しく包み、優しく私にキスをした。
樹……
私、樹が好き。
この「好き」の感情、間違ってなんかないよね。
触れ合う唇が、離れてもまた、磁石のように求め合う。
「ごめん、いっぱい泣いて」
「泣かせて悪かったな……」
「ううん……」
お互い、気恥ずかしさで、まともに顔が見れない。
しばらくの沈黙が続く……
「わ、私、お風呂入るね」
「あ、ああ」
ぎこちない会話。
本当はまだ2人でいたいのに……
私は上手く本音を言えないまま、いたたまれなくなって慌てて浴室に向かった。
ぐちゃぐちゃの顔も、早く洗ってしまいたい。
こんな腫れた顔、これ以上樹に見られたくない。
「私……これからどうすればいいの?」
お風呂に入っても、ベッドに入っても、さっきのことが頭から離れない。
明日はバイトで早いのに、全然眠れそうになかった。
もし、明日の朝目覚めて、樹とキスしたことが夢だったら……?
ううん、これは夢なんかじゃない。
だって、ここにはまだ、樹とのキスの感触がハッキリと残ってるんだから――