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あれから3日が経ったけど、樹にはまだ、私の想いを伝えることができないでいた。
2人ともが、まるで何も無かったように過ごしている。
樹が側にいてくれるだけで、こんなにも安心感があるなんて……
楽しくて、充実した毎日が私にはとても心地良かった。
「柚葉、今夜は食事に行こう。美味しい店があるから予約しておく」
「本当? 嬉しい、楽しみにしてるね」
その誘いのおかげで、夜までバイトも頑張れた。
樹とのデートに心が弾む。
お互い仕事が終わって合流し、ワクワクしながら樹が呼んだタクシーに乗り込んだ。
後部座席で隣同士に座る2人。
樹のスーツ姿、初めて見た。
今夜のお店はドレスコードがあるらしく、樹は紺のカジュアルスーツを見事に着こなしていた。
イケメンで細身の長身、脚の長さが際立っていて、周りの男性達とは桁違いのカッコ良さだ。
私も、今夜は少しだけ頑張って、胸の下で切り返しになってるAラインのワンピースを着てみた。
色はベージュっぽいからちょっと地味かも知れないけど……
「その服、似合ってる」
「えっ、あ、ありがとう。バイトの前にマンションに探しに行ったんだけど、こんなのしかなくて、ドレスコード大丈夫かな?」
「問題ない。本当に似合ってるから。悪かったな、急に誘ってしまって……」
「ううん、嬉しいよ。フランス料理なんて、ほとんど食べたことなかったから、楽しみ」
今夜はフランス料理のレストランに連れていってくれるらしいけど、本当は、マナーが少し心配だった。正直、あまり詳しくなく、ナイフとフォークは外側から使う……くらいの知識しかなかった。
「オーナーが柊の知り合いなんだ。俺も紹介してもらってからたまに行ってた。日本に戻ってからは初めてだ。ずっと柚葉と行きたいと思ってた」
「ありがとう、嬉しい」
「ああ」
そんな会話をしながら到着したレストランは、外観も内観も、とても洗練された一流の雰囲気を感じた。かなり場違いな感覚は拭いきれないけど、もう覚悟を決めるしかない。
「いらっしゃい、樹君。よく来てくれたね。アメリカはどうだった?」
「お久しぶりです。はい、何とか頑張ってました。柚葉。こちら、オーナーの原田さん」
「は、初めまして。間宮です」
「間宮さん、とても可愛いらしい方ですね。樹君の大切な人だと伺っていますよ」
「えっ、あっ、そんな……」
何て言えばいいのかわからない。
大切な人だなんて、すごく素敵な嬉しい言葉だけど……
40代と思われるオーナーさんは、とても優しい笑顔でテーブルに案内してくれた。
席に着いて、樹がお店の方にオーダーしてくれた。
コース料理とワイン。
「そんなに緊張しなくていい。オーナーもあんな感じで気楽に対応してくれる」
「う、うん、そうだね。ちょっと安心した」