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それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
交換日記の最後のページが近づいていることに気づいたのは、偶然だった。
來亜が何気なくページをめくると、残りはあと一枚だけ。
🤍「もう終わっちゃうんだ。」
思わずこぼれた独り言を、柚葉が聞いていた。
🩵「意外と早かったですね。」
🤍「もっとたくさんある気がしてた。」
🩵「私もです。」
二人は顔を見合わせて笑った。
最初は何を書けばいいのか分からずに戸惑っていたノート。
今ではその重みが、過ごした時間そのもののように感じられた。
その日の夜。
來亜は最後のページを前にして、いつも以上に長い時間ペンを止めていた。
書きたいことはいくらでもある。
ありがとう。
一緒にいてくれてうれしかった。
屋上で過ごした時間が好きだった。
でも、どの言葉も少しだけ足りない気がした。
悩んだ末に書いたのは、こんな文章だった。
『柚葉へ。
このノートが始まった頃の私は、こんなにたくさん話せるようになるなんて思っていませんでした。
うれしかった日も、不安だった日も、ページをめくるたびに思い出せます。
これから先、交換日記がなくなっても、眠れない夜に屋上へ行くと思います。
もしそこに柚葉がいたら、また隣に座ります。
いてもいなくても、その場所があるだけで安心できる気がします。
ありがとう。
來亜』
翌日、ノートは柚葉のもとへ渡った。
そして夕方。
机の上に戻ってきた最後のページには、丁寧な文字が並んでいた。
『來亜へ。
私はこのノートで、自分の気持ちを言葉にする勇気をもらいました。
でも、一番うれしかったのは、文字よりも屋上で過ごした静かな時間です。
來亜が隣に座ってくれるだけで、「今日は大丈夫」と思えました。
最後なので、一つだけ本音を書きます。
私は、來亜と出会えて本当によかったです。
これから先も、きっと変わりません。
柚葉』
ページはそこで終わっていた。
もう書き足せる場所はない。
けれど、不思議と寂しさは少なかった。
その夜。
約束も連絡もしていないのに、二人は自然と屋上へ向かった。
扉を開ける音が重なり、お互いの姿を見つける。
🤍「来ると思ってた。」
來亜が笑う。
柚葉も少し照れたように笑い返した。
🩵「私もです。」
二人はいつものベンチに並んで腰を下ろす。
言葉はほとんどなかった。
街の灯りが静かに瞬き、風がゆっくりと髪を揺らす。
しばらくして、柚葉が空を見上げたままつぶやいた。
🩵「交換日記、終わりましたね。」
🤍「うん。」
🩵「でも、終わった感じがしません。」
來亜も同じ空を見上げる。
🤍「だって、また明日も会えるから。」
その一言に、柚葉は小さくうなずいた。
かい
2,859
52
ノートには最後のページがある。
けれど、人との時間には必ずしも終わりの線は引かれない。
書ききれなかった言葉は、これから先の何気ない会話に。
伝えきれなかった気持ちは、隣に座る静かな時間に。
そうやって少しずつ形を変えながら、積み重なっていく。
屋上には今夜も星が浮かんでいた。
数は多くない。
それでも、二人にとっては十分だった。
最後のページを閉じたあとも、新しい物語は静かに続いていく。
そして眠れない夜が来るたびに、きっとまた同じ場所で隣り合い、何も言わずに空を見上げるのだろう。
END.
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第5話、読み終わりました…。 交換日記が終わる瞬間って、なんだか切なくて、でも温かい気持ちになりました。特に「書ききれなかった言葉は、これから先の何気ない会話に」っていうフレーズがすごく心に残ってます。終わりじゃなくて、新しい形で続いていくんだなって。 屋上で言葉が少なくても隣にいられる関係、すごく素敵だと思います。靜かに星を見上げる二人の姿が目に浮かびました…ほっこりするエピソードでした🌙