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「はっ…」
「…こ、こは…」
レイマリはぱちぱちと、何度か瞬きをする
「…!」
ガバッ、と身体を勢い良く起こし、荒くなっている呼吸を、頑張って整える。
「…みぞれさ…」
もう、居ない人の名前を思わず呼んでしまう。
あの日の記憶が鮮明に脳に焼き付く
みぞれと最期の別れをした、あの日。
レイマリはゆっくりと起き上がり、リビングではなく、メテヲの部屋に向かった。
メテヲの部屋の扉をノックし、ゆっくりと入る。
はっとした様子でメテヲは、レイマリの顔を見ると、微笑んだ。
「ちゃんと覚えてるよ。」
「あの約束。」
2人はなんとなしにベランダに出ると、そこから見える景色を2人でぼうっと眺めた。
沈黙が1分ほど流れる
気まずい、だなんてことは全くない。
ただ、哀愁に浸るのみ。
そんな2人を、朝日が静かに照らしていた。
メテヲが話し始める。
「…本当に、戻らないのかなぁ。」
それは、なんとも言えない悲しみや、やるせなさの吐露であった。
あの日、散々泣いた、別れが来ると、分かっていた。
「実感なんか、あるわけないですよね。」
「私だって未だに…変な気分です。」
「みぞれさんの名前を呼んだって、もう居ないのに」
「…食事だって、出さなくていいのに。」
レイマリは、ベランダの柵にもたれかかる。
そしてふう、とため息をついた。
「…後を追ったりしないので、このままでいていいですよね?」
「いいんじゃない。」
「めめさんも、多分怒んないよ。」
メテヲも背を向けて、部屋の窓を開ける。
「じゃ、メテヲは行くから、気が済んだら戻ってきてよ。」
「…間違ってもタヒのうとか、お互い考えないこと。」
「わかってますよ!!みぞれさんもそんなことぜーったい望んでないですから!!」
メテヲはそんなレイマリを見て、ふふっ、なんて笑う
そして
「…お疲れ様、レイマリ。」
「よく頑張ったよ。」
_メテヲはそう言って、部屋に戻って行った。
メテヲは診断書を自分の部屋の机に置くと、リビングに向かった。
_リビングには、あの時と同じように、良くても2、3人程しかいない、静かな場所になっていた。
「…あ、メテヲさん…」
ぜんこぱすが、メテヲに話しかける
「もう大丈夫、なの…?」
メテヲは思い出す。
忘れていたが、1ヶ月ほどは心療内科に行く以外、部屋から出ていなかった。
「あー…」
「メテヲは色々と踏ん切りついたから、さ。」
「もう…大丈夫かなって。」
ぜんこぱすの目が、心から安心したものに変わる
「よ、よかったぁ。」
「レイマリさんも、全然部屋から出てこなくてさ、えっと…大丈夫?」
「あー、レイマリも大丈夫だと、思うよ。」
「…信じてもらえないかもしれないけどさ、みぞれさんと会ったんだ。」
その頃、めめんともりがリビングまで来る。
めめんともりは、メテヲの姿を見て心から驚き、安堵した様子を見せる
「メテヲさん…!!身体はもう大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だよ、色々あってさ。」
「…みぞれさんと会ったって、どういうこと…?」
ぜんこぱすは聞く、それにめめんともりも驚く。
「…夢で何度か、ね。」
「…色々…話も出来たんだ。」
「…まださ、事故のこと…フラッシュバックすると思うよ。」
「けど…もう大丈夫なんだと思う。」
「よ、よかったぁ…本当に、本当に心配したんですよ!?」
めめんともりも涙ぐんでいた。
その後、レイマリも、リビングにやってきた。
2人はさらに驚いた表情をした。
レイマリもメテヲと同じくらいの期間、部屋から出ていなかったからだ。
「…皆さんを呼んできます、今日ならきっと大丈夫ですから。」
「…きっと、みぞれさんが…いなくなる前みたいに、できますから。」
_5分後、全員が、数ヶ月ぶりにリビングに集まった。
みぞれがいた時ほど、明るく自然な雰囲気ではなくとも_前よりはずっと、安らかな気持ちでここにいた。
ヒナが聞く
「…2人とも本当に大丈夫なの…?」
「メテヲは大丈夫だよ。」
「私も…いつも通りとはいきませんけど、大丈夫です。」
みぞれを除いた、15人の部屋
そこには、少しばかりの優しい空気が流れていた。
8時、いただきますと、皆が合掌して朝ごはんを食べる。
レイマリ、メテヲ以外にとっては、何ヶ月ぶりかの皆での食事。
だが、そこに彼女は_みぞれはいない。
もう戻ることは無い。
だが、少しばかりの皆での雑談を、楽しむことにした。
みぞれに会った2人の話題で持ち切りだったのだが。
「…本当に安心した。」
ぐさおがそう言う。
「…」
思えば、今までは全員の中に、大きな壁があったように思う
「本当にね。」
ぐさおの言葉に、菓子が返す
「あの茶子ですら動けないくらいなんだから、相当よ。」
「菓子ちゃーーん!!?」
笑い声が響く。
(…本当に、日常って感じだなぁ。)
(………これでよかったのか、分かんないけど…)
レイマリは、空いたひとつの席をぼうっと眺めながら、思いを馳せた。
めめんともりが、一息つく。
「よし!今日は久しぶりにゲームでもしますか!!」
そんな明るいめめんともりの声が響く。
全員がそれに賛成し、コントローラーの取り合いが始まる。
テレビの画面が着き、懐かしいホーム画面が映る。
コントローラーを取れなかった人が、そのテレビ画面をリビングから見ていた。
「はぁ!!?おいレイマリぃいい!!何やってんだよぉおお!!」
「うるっさ!!ウパさん声でかいですよ!!」
「ってうわぁあああ!!!!!」
「レイマリも大概じゃん!! 」
___今までで一番、懐かしい喧騒。
彼女はもう戻らないし、それが覆ることはない。
それでも_私たちは、前に進むしかないのだ。
___
みぞれが亡くなって、半年。
レイマリとメテヲだけで、お墓参りに来ていた。
カーネーションを添えて、掃除をし、手を合わせる。
_誰かにとってほれは、ひとつの礼儀で、尊敬の意を示すものなのかもしれない
だが、2人にとっては、約束を忘れないためのものでもある。
少し涼しい風が、2人の服を揺らす。
なんだか、みぞれを少しだけ_感じられたような気がした。
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