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じゃむじゃむあっぽー🍏
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🫧🌸🫧
桜のつぼみがふくらみ始めた、三月の終わり。
俺は、ついに看護学校の卒業式を終えた。
手元にあるのは、ずっしりと重い卒業証書と、先日合格通知が届いたばかりの看護師国家試験の書類。
もともと勉強が大嫌いで、美術の授業をサボって保健室に逃げ込んでいた俺が、本当に看護師になったんだ。
「若井くん、本当におめでとう。よく頑張ったね」
いつもの大森さんの部屋。集まった俺たちをもてなすように、高野さんが嬉しそうに乾杯のグラスを掲げた。
「ありがとうございます。高野さん、大森さん….二人がいなかったら、俺、本当に途中で折れてました」
「何言ってんの、頑張ったのは若井くんでしょ。…..うん、やっぱり、すごくいい顔してる」
大森さんはソファに深く腰掛け、グラスを傾けながら、俺のことをじっと見つめていた。
その視線は、どこか優しくて、眩しいものを見るようで、そして…ひどく愛おしそうな熱を帯びているように思えた。
実習中も、試験前も、大森さんはいつも俺の体調を気遣い、誰よりも近くで支えてくれた。
その眼差しに込められる温度に、俺は最近、薄々気づき始めていた。だけど、それを言葉にすることはなかった。
俺の胸には、ずっと 涼架がいたし、大森さんもまた、涼架の親友だったからだ。
「あ、そうだ。ちょうどいい区切りだし、これ、今渡さなきゃな」
高野さんが思い出したようにポンと手を叩き、カバンの中から一通の手紙を取り出した。少し色あせた、でも丁寧に保管されていたのが分かるピンク色の封筒。
「え?なにそれ、清宗」
大森さんが不思議そうに眉をひそめる。
「これね、涼ちゃんが亡くなる少し前に、俺にコッソリ預けてきた手紙。….『元貴が若井くんとちゃんと仲良くなって、若井くんがひと区切りついた時に、元貴に渡してね』って言われてたんだ」
「….僕に?」
大森さんが目を見開く。高野さんは「うん」と頷いて、その手紙を大森さんに手渡した。
「若井くん、ちょっとこれ、二人で読んでもいいかな。涼ちゃんからの、元貴への手紙」
「あ…..はい、もちろんです」
大森さんは少し震える指で封を切り、中にある便箋を広げた。俺も自然と身体を寄せ、大森さんの肩越しに、あの懐かしい、涼架の丸っこい文字を見つめた。
そこには、驚くべき「秘密」が綴られていた。
『元貴へ
この手紙を読んでるってことは、僕はもう学校に行けてないか、遠いところに行っちゃった後かな? 実はね、元貴に謝らなきゃいけない隠し事があります。
僕がいつも他校の二人に『若井くんがカッコいいんだよ!』って話してる時、元貴、いつもどんな顔してたか覚えてる?
元貴は『へえ、会ってみたいね』って笑ってたけど、若井くんの写真を見る元貴の目が、すっごく真剣で、優しくて…..。
あ、元貴、若井くんのこと気になってるな、好きになりかけてるなって、実は僕、気づいてました!
ごめんね。気づいてたけど、僕は若井くんが大好きだったから、譲りたくなくて、気づかないフリをしてました。
でもね、僕の命がもう長くないって分かった時、不思議と一番に頭に浮かんだのは、僕がいなくなった後、一人で泣いちゃうかもしれない若井くんのことでした。
若井くんは優しくて真っ直ぐだから、僕のことでずっと自分を責めちゃうかもしれない。
だから、元貴。
もし、僕がいなくなって、若井くんが一人で迷子になっていたら、今度は元貴がその手を引いてあげて。
元貴の作る音楽みたいに、若井くんの傷ついた心を、たくさん愛して、癒やしてあげてほしい。
僕は、僕を愛してくれた若井くんも、僕の大切な親友の元貴も、二人とも世界で一番幸せになってほしいん だ。
元貴なら、若井くんのあの締麗な三日月みたいな目を、もう一度優しく笑わせられるってじてます。
あ、でも、付き合うとかは僕が嫉妬しちゃうから、最初はただの頼れるお兄さんから初めてね!笑
今まで黙っててごめんね。二人とも、大好きだよ。
涼架より」
「….涼架、お前….」
大森さんの目から、ぽろぽろと大粒の涙が溢れ出し、便箋を濡らした。
彼は片手で顔を覆い、声を押し殺して泣いていた。
「….気づかれてたんだな。僕、隠せてると思ってたのに…..最低だ。涼架の好きな人なのに、話を聞くたびに、若井くんに会いたくてたまらなくなってたなんて…..」
大森さんの肩が激しく震える。
俺は、驚きで言葉を失っていた。大森さんが、俺をそんな前から….涼架が生きていた時から、想ってくれていたなんて。
そして、涼架はそのすべてを知った上で、自分の死後、俺を大森さんに託したんだ。
「元貴は最低なんかじゃないよ」
高野さんが、大森さんの背中に優しく手を添えた。
「涼ちゃんはさ、元貴のその気持ちを知ってたからこそ、安心して旅立てたんだと思う。若井くんを一人にしないって、借じられたからだよ」
大森さんは涙を拭い、真っ赤になった目で、ゆっくりと俺を振り返った。
その瞳には、涼架の手紙によって解き放たれた、溢れんばかりの愛おしさが真っ直ぐに宿っていた。
「涼架に『よろしく』って言われちゃったし、何より、僕は僕の意志で、君のことが好きだよ。…..もちろん、君の心の中にずっと涼架がいるのは分かってる。看護師になるために必死な君を、邪魔するつもりもない。だからさ…..」
大森さんはふにゃりと、どこか涼架に似た優しい笑顔を浮かべた。
「付き合って、とは言わない。手紙にある通り、まずは『頼れるお兄さん』から始めさせて。君が寂しい時、実習でボロボロになった時、いつでも僕が隣で支えるから。…ダメかな?」
「大森さん……」
涼架が遺してくれた、もう一つの優しい奇跡。
隣で高野さんが、「あーあ、僕の目の前で盛大な告白が始まっちゃったよ。涼ちゃん、空の上でヤキモチ焼いて泣いてるんじゃない?」と、わざとらしくため息をつきながら笑っている。
俺は、ポケットの中にある、もう随分と小さくなった『黒猫の消しゴム』に触れた。
涼架。お前は本当に、どこまでお節介で、どこまで優しいんだよ。
自分の消しゴムに俺の名前を書いて、恋が叶わなくなっちゃうって俺は泣いたけど….お前は、俺のこれからの幸せまで、ちゃんと全部叶えようとしてくれてたんだな。
俺は、涙を浮かべながら、ふにゃりと目尻を下げて笑ってみせた。
涼架が大好きだと言ってくれた、この吊り目を、精一杯優しく細めて。
「ダメなわけ、ないです。….大森さん。俺、まだ全然ダメな看護師だけど、これから大森さんの隣で、もっと強い男になります。…だから、よろしくお願いします」
「若井くん……っ」
大森さんは堪らなくなったように、俺の身体を強く抱きしめた。
彼の体温が、俺の胸の奥に残っていた最後の寂しさを、じんわりと溶かしていくのが分かった。
高野さんが、それを見て嬉しそうに目を細めている。
窓の外には、春の柔らかな夜空が広がっていた。
そこには、あの日の保健室から始まった、俺たちの物語を優しく見守るような、綺麗な三日月が白く輝いていた。
どうだったでしょうか?
次回からは少し遡って、元貴視点のお話
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コメント
2件
うわぁぁ……予想がまさかの当たっちゃった…🫠。新しい恋の予感ですねぇ…続き楽しみです、🫣💕。