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赤いドレスの女,ジュン
『最後の贈り物』
1度、2人で行ったことがある市内を一望できるデートスポット。丘の傍に車を停め煌びやかな夜景を、車の窓を全開し、眺める、、、、、、
初秋の夜の風立ちは,思ったよりも爽やかで、少しばかりの涼風が肌を撫で通り過ぎる。
「ジュン❗️お前を1人にはさせないよ、これからはずっと一緒さ…」
男は女を抱きしめ、唇を重ねる。
思いもよらない男の言葉に、彼女は溢れ出る涙を止められなかった。
何処かで、ずっとこの日を待ち詫びていた。そうだ!女はずっと,彼の邪な恋慕の片棒を担ぐ駒でしか無かったから、、、、、不幸になるかもしれないと思いながらも、女は男から離れられなくなっていた。
あの夜、店で出会った日から、同じ孤独な匂いを感じ取り惹かれていく。
女の名は、ジュン
昼間のパートと、夜は場末のスナックバーで深夜まで働く。普段は、ジャージ姿で過ごし、ノーメイクの彼女にすれ違ったとしても、誰だか分からないだろう、彼女は自分の存在を消して生活しているから。
「ガツガツしなくたって、おまんまが食べられたら、ええやないの!安い給料やけど、内で働きヤ」
夜の店には珍しい位、人の良いママのお陰で、女を売らずとも生活出来ている。
「あんたスタイルもいいし、面相もなかなかの美人なんやから、着るものと化粧で間違いなく、化けるわよ!」
確かに、夜は豹変する。
ジュンの儚さが際立つ妖艶な美しさに、客は最初、誰しも息を呑む。
しかしながら、愛想も話術も無く、酒を出し、お酌をし、一通りの仕事が終われば、俯き殻に閉じこもる。
ママに何度も嗜められるが、ジュン自身、酒場で働く身で在りながら、客等どうでもよかったし、媚びるつもりもさらさら無い。クビになるならそれも良い、それでも良くしてくれるママには、申し訳ない気持ちは過る、片腹痛い。
そんなある夜、彼が息を切らし、倒れ込むように店のdoorを開けて入ってきた。
全身に大汗を掻き、蒼白く透けるような肌からは、腐っていく屍の臭いを放出し、それはまさに逃げて、逃げ切れず追い詰められた息も絶え絶えの手負いの獅子。
ジュンは、お絞りとウヰスキーと冷たい水のデカンタを急いで用意した。ジュンが注いだ、水とウヰスキーを交互に勢い良く飲み干す。
ヤサグレ男の喉首を、バニラの香りがする水の雫が伝い落ちている…。
流れる男の汗をジュンは躊躇いも無く、何度も拭ってやる。
男は抑揚のない掠れ声で…. “ありがとう” とジュンの瞳の奥を真っ直ぐに見つめながら、言った。
徐に水割りを口に含むと、後は一言も話さず、唯々遠い目をし、何を思わんや、ずっと1点を見続ける。ジュンは、男の眼差しに、限り無く哀しく狂わしい陰翳を見ていた。
その後、男は度々ジュンに会いに店を訪れ、ジュンも又、彼の来店を心待ちにしていた。
暫くして男は、ジュンの誕生月Ruby色(7月の誕生石はRuby)、『ピジョン.ブラッド』鳩の血の色と同じ🩸、マザリケノナイ赤い色、周囲の色など跳ね除け寄せ付けない、美しい赤いドレスを贈る。
その夜,ジュンは愛される。彼女は身も心も歓びに打ち震えた。( 例え彼に愛する人、殺めてでも奪いたい女がいたとしても、構わない❗️この夜の幸せと、彼の愛は私1人のものだから………………………)
しかし、男はこの部屋に、再び泊まる事はなかった。
( 彼の為なら何でもする、其れで彼が苦しみから逃れられるならば、アタシは大丈夫よ、どうせ1度は捨てた命だもの……)
( アナタを匿い庇うアタシも同罪!!当然の報いを受けるワ、、、其れでもアタシは本望だし、望んで生まれて来た訳じゃない!心配御無用ヨ )
長く薬漬けだった男の命の灯は、残り少ないと知っていたから、支え続けているのか、男の頼みが、犯罪に手を染めることだとしても、ジュンにNOと言う選択肢は無い。
ジュンは、誰とも付き合わず、冷血女と揶揄われ、待ち伏せされ、暴力を受け、警察沙汰になったことも有る。今の店の客の誘いも頑なに拒んできた。
それは何故❓
彼女の壮絶な過去のトラウマなのか?天涯孤独な身の上から来るものかは分からない!
唯、選べる人生を見失い、異常な程の闇の男を、愛する選択をした彼女は、もう引き返すことも出来ず、男の犯罪の渦に巻き込まれて行く……。
ある殺人事件の報道が、地上波から流れてきて…………………………いた。
それから少しして、ジュンは、かけがえのない日を、迎えていた。
彼からのデートの誘い、犯罪の匂いはしない、初めて男がジュンの為だけに、心を配った時間、、、、
彼から贈られたお気に入りの真っ赤なドレスを着てジュンは、彼の誘いに身も心も騒めきながら、束の間の2人だけの時を過ごす。
ジュンは、初めて生きている幸せを噛み締める。
深夜のデートスポットの、小高い丘の傍に車を駐車し、隠し持ってきた缶ビールを開け、1番親しい相手との遊び、腕をクロスし,お互いの口に流し込む、、、。
「ジュン!お前を、もう1人にはしないよ絶対に、これからはずっと一緒さ❗️ 」
男は、ジュンを強く抱きしめ、唇を重ねる。思いもよらない、彼の優しい言葉に涙する。
彼女は、身体中で幸福感に酔いしれる。
強く抱きしめていた彼の腕が緩み、いつしかジュンの背中を優しく撫で挙げている、……そして、躊躇いも無く男の両手が素早くジュンの細い首を掴み,強く,しっかりと出来るだけ一気に締めあげる❗️モット、モット強く、息が残らぬよう苦しみが短くて済むように……………、
こうするしか彼女を救う方法はなかったと、男は呟く。
”’ 俺の残された時間も長くは無い、
俺の最後は、俺1人だけのものだし、誰にも邪魔されたくない!!たとえお前であっても、全てを知るお前には、こうするしか無かった!
ゴメンナ、ジュン❗️
俺なりの落とし前をつけたなら、必ずお前の側に行く、約束だ、、、’”
お気に入りの真っ赤なドレスを着ているジュンの顔から、煌めく滴が流れおちる………。
カット見開いたジュンの瞳は、幸福の光で満たされていた✨ 、、、、、、、、、、、、
完