テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
愛梨は震える手でステッキを握りしめた。「え、えい!」
叫びと同時に、先端から淡い光が放たれ、モングーの胸元を直撃する。
「グォオッ!?」
不快な絶叫を上げ、モングーの体がわずかにのけぞった。
「よ、よし…!」
愛梨が小さく息をつく。だがその瞬間、モングーの口が大きく開き、紫色の光が渦を巻きながら放たれた。
「っぐっ、!?」
視界が一瞬で真紫に染まり、耳鳴りが頭を締めつける。足元が崩れるような感覚とともに、愛梨の体は吸い込まれるように暗闇へ落ちていった。
「愛梨!!」
外からパララの慌てた声が響く。
その背後で、静かな声が割り込んだ。
「さて……今までの鍵を返してもらいますよ。マジカル・アイリーン」
里香の瞳は氷のように鋭く光っていた。
――気がつくと、愛梨は冷たい何かに囲まれていた。
「……なに…ここ、胃の中?」
全身がぬるりとした液体に包まれ、空気は重く、呼吸するたびに酸っぱい匂いが鼻を刺す。変身は解け、制服の裾が濡れて張りついている。
愛梨は慌ててポケットからスマホを取り出した。
「ダメだ……圏外になってる…」
液晶の隅に並ぶアンテナは一本も立っていない。
「…どうすれば、いいの…」
声は液体に溶け、かすかに泡立っただけだった。
そのとき――。
(愛梨ーっ!!)
くぐもった声が、外から必死に届こうとしていた。
パララだ。見えないけれど、確かにそこにいる。
愛梨は唇を噛み、拳をぎゅっと握りしめた。