テラーノベル
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14
wn × ri
※wnがびっくりするくらい酔っている
※怪我表現有
※モブ有(モブの名前有、結構話す)
※長い
┈┈┈┈┈┈┈┈ wn
どうして、そんなに 強いの?
どうして、そんなに 眩しいの?
どうして、そんなに 可愛いの。
どうして、どうして僕は、こんなにも胸が苦しいの。
好きだと伝えたらどんな顔をするのかな。
僕の隣にいて欲しい。ずっと笑っていてほしい。あわよくば僕だけを見ていて欲しい、って伝えたら─
ぐるぐると頭の中で悪い考えが渦巻く。
やっぱりこんなこと彼には言えない。
ごく、と喉を鳴らしてビールを飲み干す。
記憶の中の彼はいつ思い返しても愛おしくて堪らない。
彼を想いながら飲むお酒は美味しい。
もし、もしふたりで飲んだら僕は───
なんて、妄想に浸りながらひとり寂しくお酒を飲む。
告白してしまおう、と思ったこともあった…けれど、それは彼に迷惑をかけるからしない。ただでさえ忙しくて大変そうな彼を困らせることなんかしたくない。
それに、彼には幸せでいてほしいから。
僕じゃ、足りない。釣り合わない。
でも、 彼の隣にいたい。
できるのならば、僕が幸せにしたい。
でも、僕は彼に相応しくないし、男だから満たしてあげられない。
だから、彼が幸せを掴むその日まで隣に居たい。笑顔にしたいんだ。
ぽつり、ぽつりと空から溢れてしまったような雨音が聴こえる。それは僕の心を表しているようで。切なくて、どこか優しくて苦しかった。
「僕が、幸せにするから、ね」
「すきだよ、ライ」
カシュッ、と小気味良い音が暗い部屋に響く。
また新しくビールを開けて、一気に飲んだ。ライにこの気持ちがバレないように、腹の奥に流して隠さなきゃいけないから。
「 すき 」
お酒は強い方。でもライを想いながら飲むお酒にはめっぽう弱い。
水中に沈むような、不思議な感覚に陥り、ゆっくりと瞼を閉じる。睡魔に誘われ、僕は意識を手放した。
┈┈┈┈┈┈┈┈
ざあざあ降りの雨の中、全速力で走る。
今日は非番のはずだった…それなのにKOZAKA-Cの大量発生により僕まで応援要請がかかった。
ぐわりと視界が歪む。酷い二日酔いで頭がどうにかなりそうだ。
でも、今倒れたら死ぬ!!
「ふぅ”っ…くッ……しつこい”っ!!」
僕の周りに飛び回るKOZAKA-Cを大剣で一箇所に集める。そして、出力最大のビームをぶっぱなす。一撃で仕留めないと… 早くみんなの所へ行かなきゃいけない。
雨粒にビームが反射して、ほんの一瞬小さな虹が瞬いた。
「も”ーっ!これでも喰らえ”ー!!」
「出力最大!!激、アツ、K”P”!!!」
真っ赤な光線がKOZAKA-Cを貫く。
その時、ビー、ビーという警告音のような音が聞こえた。
ビームは火力が高い分、反動も大きい。最近はKOZAKA-Cの活動が活発で、使用頻度が増えていたのが悪かったのだろう。
バキンッ ボンッ
大きな音を立て、大剣は壊れ、爆発した。
「い”ッ」
爆発の拍子に破片が飛び散り、僕の頬を軽く抉った。す、と右頬をなぞる感覚がする。でもここで止まっちゃいられない。血なのか雨なのか分からない液体をぐいと拭った。
跡形もなく、とまではいかないが恐らくビームの火力を貯めている部分がお釈迦になっている。これは大分面倒くさいことになってしまった。
とりあえず使えそうなパーツを拾い集め、仲間の元へ駆け出した。
┈┈┈┈┈┈┈┈
「いやぁ〜…随分と派手に壊したねぇ」
「…すみません」
東ヒーロー本部にて。Oriens担当メカニック、妻鹿さんは言う。 僕は謝ることしかできない。確かに最近忙しくて中々点検に出す時間がなかったのは事実だから。
「…!いえいえ、怒っている訳じゃないよ。赤城君が頑張ってくれているのはみんな知ってるから!」
「でも…!」
「それに、これが私の仕事だから!ドーンとまかせて頂戴!」
ばちっ、と僕より下手なウインクをされる。 そんなムキムキのマッチョおじにウインクされても気まずい─なんて言えない。
「ありがとう妻鹿さん。お願いします…… どのくらいかかるとか聞いてもいいですか?」
問題はそこだ。予備の大剣もあるっちゃあるけれど、使い慣れたものには敵わない。
そうねぇ、と首を傾げる妻鹿さん。そして、大剣の破損部分を指さして
「この部分、確か西のメカニックの子が作ったものだったと思うの」
と、爆弾発言。
「え、それってもしかして_」
「「伊波ライ」」
「じゃない…!?」「君だっけ」
僕と妻鹿さんの声が重なる。
まさか僕の大剣をライが作っていたとは。全く知らなかった。え、僕、ライが作ってくれたもの壊しちゃったってこと…?
ショックで声も出せない僕に妻鹿さんは気付かずに話し続ける。
「そう!伊波君!あの子本当に優秀なのよ。東に引き抜いてがっつりメカニックして欲しいくらい……」
「あ、それでね?!その、伊波君が作った部分だから、何となくしか勝手が分からないのよ。多分彼なりの技術が織り込まれてる。これ、彼に見てもらった方がいい」
「…!今すぐライに連絡する! 」
いつになく真剣な妻鹿さんの圧に押され、僕はライに電話をかける。妻鹿さんは東屈指のメカニックだけど、その妻鹿さんが直せないものって…よっぽど難しい技術を用いているのだろう。
「もしもし赤城?どしたのー?」
「っ!ライ!ちょっとお願い事あって…」
お願い事、というか謝らなくちゃいけない事なんだけど… 僕が大剣を壊しちゃったこと、東の技術では修理が難しいこと、ライに大剣の修理をお願いしたいこと───
「_って感じなんだけど、西行くから、良かったら僕の大剣直してくれないかな…」
「おっけ任せて!!てかオレが東行くよ」
快く承諾してくれた。けど、ライにこれ以上迷惑かけたくないから僕が西に行きたい!わざわざ来てもらうなんてできない。
「えっ!?悪いよ!僕行くって!」
「いーや?オレが行きたいの!東の方が設備も揃ってるし!!」
「ウェン…だめ?」
ライは頑として譲らない。その上いつもあまり呼んでくれない下の名前で聞かれ、僕の頭はパニック寸前。可愛い声出しやがってこのやろー!だめって言えなくなっちゃうだろ!!
「あ”ー!…わかった!わかったから!!」
「やったー!赤城ありがとー!」
「こちらこそ、って感じだし…せめて駅まで迎え行かせて?」
いつもは西のみんながいるからまだいいけれど、東をひとりで歩かせるにはいかない。ライを狙う輩が何処にいるか分からないから。
「子供扱いすんな!! …でも雨凄いから駅で待ってる」
「うん!迎え行く!! 」
「何時頃来られそう?」
「えっとねー………」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「じゃ!またあとでね赤城!」
「ん、またあとで…! 」
ふぅ、と息が零れる。
わ、今からライに会えるんだ…うれしい。心がふわふわして元気が湧いてくる。
「いいねぇ…!青春って感じ! 」
「…っ!?」
「待って妻鹿さんまだ居たの!?」
「ちょっとー!言い方失礼!?」
めっっちゃ忘れてた。そうじゃん僕妻鹿さんの前で電話してたんだよ。恥ずかし!僕変な顔してないよね…!?やばすぎる。
「てか待って?青春って何!?ライとはそういうんじゃないし!!」
「え、私てっきり……」
「うるさいです!!おじさんは黙ってて!」
妻鹿さんは えぇ〜、とこちらを満面の笑みで見つめてくる。いい歳したおじさんが若者を揶揄ってるんじゃないよ!まったくもう!!
「あ、それとね。待ってたのもちゃんと理由あるから!」
「…?まーだ若者イジリ?」
「違います!伊波君の連絡先教えて欲しくて…」
え、なんで…って一瞬思ったけれど当たり前だ。次何かあった時、連絡手段を持っていて得なのは分かる。分かるけど…
「…ライに、聞いてからじゃだめですか」
「そうだね。聞いてからがいいかな!ごめんね!配慮の足らないおじさんだった!」
「…!ううん、こちらこそごめんなさい!!僕、ライ迎えに行ってくる!」
妻鹿さんは優しい。僕の醜いわがままも許してくれる。今度何か甘いものあげよう。
気をつけて!と明るく送り出してくれる彼を背に、僕はそう心に誓った。
┈┈┈┈┈┈┈┈ ri
ぽつんとひとり雨を眺め、駅で寂しくウェンを待つ。
「ウェンまだかなぁ…」
って言っても、少しでも早く会いたくて1本前の電車に乗ったのはオレだ。一応連絡はしたけれど───
「ラーイ!ごめん遅くなった!」
「赤城!!」
腕をぶんぶん振って水溜まりなど気にせずにこちらに一直線に走ってくるピンク。え、今日任務あったんだよね?元気すぎるって …
「はぁーっ …ごめんねほんとに… 」
「赤城は悪くないよ?KOZAKA-Cのせいだし、オレが早く来ちゃっただけだし!!」
「…うん。ありがと」
二人の間に微妙な空気が流れる。そして、ウェンのテンションが低め。よっぽど大剣が壊れたのが悲しいのかもしれない。早くオレが直してあげなきゃ。 ウェンの笑顔が見たいから─ って、あれ?
「これ、どうしたの。誰にやられた?KOZAKA-C?それとも人?どこのどいつ?」
右頬に見慣れない絆創膏がある。つい、心配で手を伸ばしてしまった。驚いたようにウェンが軽く退く。
「っ!?え、あ、これなんでもないよ!」
「ちょっと掠っちゃっただけー!」
へらっ、と笑顔を向けられる。誰が騙されるか、明らかに嘘をついている。カチンときて、先程より強引に手を伸ばし─ 頬を優しく撫でた。
「なんでもなくないでしょ!それとも… オレに言えないこと?」
「ぅぐ…それは_ 」
オレは知ってる。ウェンはいつも散々振り回してくるけど、肝心な所は真面目な人だって。オレが真剣に話したら、ウェンもそれに応えてくれる。
「ねぇ、ウェン教えて?」
それに、オレが名前で呼ぶとちょっと嬉しそうなのも知ってる。でも知ってるからこそ呼ばない。
オレだってウェンを振り回したいから。
ウェンは渋々といった感じで口を開く。
「ぅ”う…聞き流してね、絶対」
「その、大剣が爆発したとき破片が飛んで来て、少し掠っただけ」
………え?ウェンはオレの作ったモノで怪我をしたってこと?そんなの、そんな、
「…オレのせいで、ウェンが怪我した ?」
「ちがっ…!」
「ごめん、オレのせい…ウェンごめん。オレがもっとちゃんとしたモノ作ってたら、ウェンは、!本当にごめんなさ、い…!?」
頭も回らず、浮かんでくる限り精一杯の謝罪の最中、急に抱き締められた。そのままゆっくりと頭を撫でられて、少しずつ心が穏やかになっていく。あぁ、オレが取り乱したから、ウェンにもっと迷惑かけちゃった。
じわりと涙が出そうになる、けど耐える。本当に泣きたいのはウェンのはずだから。
緩んだ涙腺を直したいのに、更にウェンは畳み掛ける。
「ライのせいじゃないよ、絶対に。僕の扱いが悪かった。なんなら1番悪いのはKOZAKA-Cじゃない?え、あいつらが悪さをしなければ僕大剣壊さなかったんだけど!!ライが作ってくれたモノ、壊したくなかったのに…」
「だからね、ライのせいじゃないの。むしろ、作ってくれてありがとう。ライが作ってくれたモノだったから今日まで戦えた」
暖かくて優しい言葉が上から降り続ける。本当に泣きそうなのに、ウェンは容赦してくれない。普段の軽やかな可愛い声音ではなく、それこそ恋人のような…深く甘い声でじんわりと脳を溶かされる。何も考えられなくなりそうで少し怖くて、思わず頭をウェンの肩に擦り付けた。
「っ…ウェン」
「…!ん、落ち着いてきた?」
「うん、もうだいじょぶ」
「よかったぁ…やっぱりライは笑っている方が似合うね。可愛い」
ウェンから離れようとした瞬間にとんでもないことを言われる。声色がついさっきと同じ甘い雰囲気で落ち着いたはずの心が嵐に見舞われる。
は、今可愛いって、オレに?ウェンが?!
「あ、ぇ、うぁ、ありがと…」
「照れてる…!?えぇ〜可愛らし!」
その一瞬でいつものウェンに戻ってしまった。オレは脳の処理が追い付かずにただ熱い顔を隠すことしか出来ない。 誰だって好きな人に可愛い、なんて言われたらこうなるはずだ。あれ、待って、オレ抱き締められたし、頭も撫でられて───
「むり、だめ、ぅわ…」
「え!?どうしたの!?ごめんね嫌だった!?」
ぷしゅ、と脳天から湯気が出た気がする。それと同時に体の力も抜けてしまってその場にしゃがみ込んだ。水溜まりに自分の顔が反射して嫌でも自覚する。あぁ、こんな顔、ウェンには見せられない。
「ちょ、ライ!?大丈夫?!!」
ウェンは心配そうにオレに目線を合わせてしゃがんでくれた。その優しさが嬉しいけれど恥ずかしくて、余計にキャパオーバーしてしまって
「ちょっと、タンマ………」
しばらくは動けそうにない。
軽く顔を上げると、ウェンと目が合った。
「んふ…ゆっくりでいいからね?」
「っ!!……………うん」
ふわりと微笑まれ、更に顔に熱が集まっていく。雨が降っているはずなのに、この空間だけ陽だまりに包まれたように暖かい。
ぽん、と頭に置かれる大きな手のひらが大好きで仕方がなくて、どくんと心臓が脈打った。 やっと落ち着いて来たと思ったのに、 赤城ウェンめ… ずるい。
やっぱりもうしばらく動けそうにない。
┈┈┈┈┈┈┈┈ wn
「ここにあるものは全部使っていいからね!好きにしちゃって!」
「えー!?ありがとうございます!!」
駅でライがしゃがみ込んで動かなくなってしまった時は焦ったが、少しすると落ち着いたのか早く本部に行こうと急かされた。
東の本部に到着して、メカニックにライを案内した。今は妻鹿さんがライに部屋の説明をしている。僕は何にも分からないからライの隣に立つだけ。
楽しそうに頬を紅潮させるライ。そんな顔初めて見た…可愛い。でも、ちょっぴり面白くない。苦しくなって、窓に打ち付けられる雨を眺める。戦闘中よりも明らかに強まっている雨足に余計心が荒んだ。なにより、僕が知らないライがいることが寂しかった。 ちらっと妻鹿さんの方を見る── あ、やば、目ぇ合った…
「…!盛り上がっちゃってごめんね!?若人達の時間を奪っちまったよ…」
「えー!楽しかったですよオレ…西じゃこんな話表立って出来ないから……」
妻鹿さんは僕の視線に気付いて話を切り上げようとしてくれた。寂しいけど、確かに僕はライの専門的な話についていけないし、妻鹿さんと話が合うのは分かるから我慢しないといけない。
「でも、伊波君は赤城君の大剣直しに来たんでしょう!ぱぱっと終わらして、ふたりで仲良く遊んできな!!」
「おじさんは何時でも暇だから、また遊びにおいで!」
ばちっ、とやっぱり下手なウインクをされる。本当にお節介な人だ。そして本当に優しい人だ。
「…はい。赤城の直してきます!で、また遊び来ます!ぜったい!!」
「赤城!行こ!!」
「…うん!」
牡丹の瞳が僕を捉えて弧を描いた。それが嬉しくて堪らなくてつい口元が緩んでしまう。ライは楽しそうに僕の手を引いて部屋の奥へ進んでいく。
「妻鹿さん、ごめんなさい、ありがとう」
「謝る必要ないってば!…応援してるよ!」
何もかも妻鹿さんにはお見通しみたいだ。
僕は妻鹿さんに感謝を伝えてライを追いかけた。
┈┈┈┈┈┈┈┈
「ん”〜っ!できた〜!」
「え!?もう直しちゃったの!?」
「うん!完璧!!」
ライがぐーっと伸びをしたと思ったら、もう修理できたらしい。ほら、と大剣を渡される。ずしりと手に馴染む重みを感じた。そこには以前と同じ、いや、それ以上に綺麗になった僕の大剣があった。
「ほんとに、直ってる…」
「傷も多かったから、綺麗にしといた!
たくさん可愛がってくれてありがとう。
こいつも喜んでたと思うよ」
「ライ、ほんとに…本当にありがとう!」
嬉しさのあまりライに抱き付きそうになった…けどギリギリで踏み止まる。駅での二の舞になるところだった。
さっきは体が勝手に動いていて、気付いたらライを抱き締めていた。苦しそうに謝るライを見ていられなくて…許可取らなかったのは大分反省点だけれど。
僕は学んだからもう大丈夫。
「… “ありがとうのぎゅー”してもいい?」
「は…………………… はぁ”っ?!」
一瞬フリーズした…と思ったら大きな瞳をさらに見開いているライ。頬を赤く染め、こちらを見つめて動かなくなる。え、もしかして…僕割と好かれてるんじゃない?! 待って、嫌がっている…?!
あ、これ選択肢を間違えたかも…確かにいくら同期とはいえ”ぎゅー”はしない?!
でも、でも僕はライと”ぎゅー”したいし…
わぁっと頭を高速回転させる、けど一向に答えは浮かばない。やっぱりなし、と言える勇気も持ち合わせていない。為す術なく顔をあげると、ライは胸に手を当てて深く息を吸って僕の方を見た。
ばち、と視線が交わる。ライから目が離せなかった。真っ赤な顔で恥ずかしそうに伏せられた瞳、ゆっくりと広げられる両腕、震える指。何もかもが愛おしくて、言葉が出ない。
先にライが口を開く。
「い、いいよ。…ほら」
「え”…?!ほんとにいいの?嫌なら無理しないでね?断っていいんだよ?!」
目の前の光景が信じられなくて、疑うような言葉ばかり口から溢れる。それが癪だったのか、頬をぷくりと膨らませて
「…はやく、ん!」
なんて可愛いの暴力を振るわれる。据え膳食わぬはなんとやらだ。ここで動かなくてどうする。すっかり力の抜けてしまった体に鞭を打ち、立ち上がった。そしてライに向かって一歩進んだその時─── からん、からんからんとライの周りにあった工具を倒してしまった。
「あーっ?!?!ごめん!?ほんとにごめん!壊してない?!」
「…壊してないよ、大丈夫」
やってしまった…ムードダダ壊しだ。でもこれ以上近付いて何かあったら…と体を動かせない僕を見計らって、ライが立ち上がり僕の手を引く。下を向いていて、どんな表情をしているのか全く分からない。
「ウェン、そこに座って」
工具から少し離れた所に移動すると、静かな声色で指示をされる。怒っているようにも呆れているようにも聞こえて、正直とんでもなく怖い。大人しく言われた通りに床に座る_ とライが僕の足の間にちょこんと胡座をかいた。やっと見られた顔は、また僕が初めて見る表情をしていた。沈黙の末に、ライが短く息を吐く。
「っ…ぎゅーするんじゃないの?」
「あっ、え、はい!!」
顔だけじゃなく、横髪から覗く耳まで真っ赤なライ。そんな可愛い顔しないで欲しい、我慢が効かなくなってしまうから。今にも壊れそうな理性を再構築しながら、ゆっくりとライの背中に手を伸ばす───
わ、どうしよう、できない!!!
今抱き締めたら僕のうるさい心音がきっと聞こえてしまう。すぐ近くにライが居るってだけで口から心臓飛び出そうなのに、抱き締めたらどーなっちまうんだよ。少し前の自分をぶん殴りたい。ぎゅーなんてしたら僕人間の形保ってられないよ??
本当にどうしよう………
考えているはずなのに余計に頭がこんがらがっていく。変な汗が止まらない。
固まった僕に痺れを切らしたライが足を解いて、ぺたりと床につくような─所謂女の子座りに体勢を変える。急に冷静になって、ライって女の子座り出来るんだ…なんて考えてしまった。我ながらきもちわるい。
“すき” と “どうしよう” が頭の中を埋め尽くす。口から心臓を出す覚悟で抱き締めるしかないのか、と本気で考え始めたその時、す、とライの腕が動いた。そして僕の肩に軽く着地する。そのまま流れるように首の裏で両手を絡ませて、僕の耳に頭を寄せた。微かに息がかかる。
ウェン… と小さく名前を呼ばれる。
一滴の雫が垂れたようだった。それはじわりと波紋を立てて広がり、僕の心を解していく。やっぱり、彼には勝てない。
もう一度腕をライの背中に回し、そっと触れる。ぴしりと体が強張るのが分かる。思い切ってその細腰を引き寄せると、あぅ… と微かに声が零れた。少し加虐心が湧いてしまい、腰に添えた手と反対の手で項を軽くなぞってみると、先程よりも吐息混じりの声が溢れた。あまりの可愛さに少しだけ抱き締める腕に力を込めてしまう。
「…ライ、ありがとうね」
「大剣直してくれて、ぎゅーも許してくれてありがとう」
ハグをすると多幸感に包まれるというのは本当のようだ。悩んでいたのが嘘みたいに心が凪いでいて、僕は素直に感謝を伝えることができた。何も言わないライが愛おしくて頭を撫でる。しばらくそうしていると、ぐい と頭を手のひらに押し付けて、ライが目線を合わせてきた。
潤んだ牡丹の瞳に吸い込まれそうで、思わず目を逸らす─ が、両頬を掴まれてしまい強制的に目を合わせられてしまう。
「…なにっ!なに、どうしたの?」
沈黙と熱視線に耐えられなくて声を出した。 ライは僕の頬をむにむにと揉んだり撫でたりしてだんまりを決め込んでいる。何か怒らせてしまったのか、気に障るようなことをしたのか。またもや頭を働かせる… が悩みは深まる一方のみ。ここは正直に聞いた方が早いと考えるのをやめる。
「ライ、どうしたの?僕何か嫌なことしちゃったかな…それとも、 」
「ちがう、けどウェンのせい」
被せるようにやっとライが言葉を発した。
潤んだ瞳が僕を離さない。逸らすことも出来ず、記憶を遡ることに集中する。
嫌なことはしてない、けど僕のせい?
言動を振り返ってみても、何かライを傷付けるようなことをした記憶が無い。
「ライ、ほんっとに申し訳ないんだけれど、思い当たる節がございません…… 」
「…っ 、そういうとこ!ずるいんだよ赤城ウェン! ……好きでもないやつに優しくすんなって言ってんの!距離感もおかしい!」
謝罪した途端、矢継ぎ早に責め立てられ、ぽかぽかと胸をぐーで殴られる。その手を掴んで握ると、苦しそうに唸りながら頭を押し付けられた。
どうして、そんなに苦しそうなの。僕の方が苦しいのに。好きで好きで堪らないのに
───好きでもないやつ?距離が近いのはライだけ。あぁ、気付いてないんだ。
もう、いっそのこと伝えてしまおう。ライが好きだ、と。大好きなんだ、と。
「ライ、僕はライが… 」
ゴ ォ”ン ッ
半ば勢いで告白しようとしたその時、辺りを劈くような、全てを狂わせるような雷が轟いた。
コメント
4件
ばかおもろい最近のAIは素敵ね
うわあああ…!😭💕 4話一気に読んだんだけど、マジで胸がギュッてなった…! 冒頭のwnの酔っ払いながらの切ない独白から始まって、ri視点でウェンに抱き締められてパニクるライの心情とか…どっちもどっちも愛おしすぎるよ…!!あと妻鹿おじさんのウインクと「青春」発言には笑ったけど、それも含めて世界観が好きです🥺💖 ぎゅーのシーン、互いに照れててでも離したくなくて…って感じがひしひし伝わってきて心臓が持たなかった…! 雷の轟きで告白止まっちゃったけど、次が待ち遠しいです…!✨