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菊池「次の目的地まで車で移動しまーす」
二宮「誰が運転する?」
菊池「俺やりますよ」
山田「お、珍しい」
菊池「今日の空気、俺がハンドル握らないと危ない」
〇〇「事故起きる前提で話すのやめて」
松村「同意」
菊池「ほら、もう始まってる」
二宮「じゃあ俺助手席な」
山田「後ろ三席か」
後部座席を見た瞬間、〇〇と松村の動きが、ほぼ同時に止まる。
三席。
逃げ場はない。
山田「俺、端行くよ」
そう言って、山田はさっさと右端に腰を下ろす。
残りは二席。
中央と、もう一つの端。
〇〇は一瞬だけ松村を見る。
松村も、同じタイミングで〇〇を見る。
そして、ほぼ同時。
〇〇「……端がいいです」
松村「俺も端がいいですね」
山田「端、一個しかないけど」
二宮「じゃあ」
二宮「〇〇と松村、隣で」
〇〇「え?」
松村「……は?」
菊池「はい決定。俺もうエンジンかけるから」
〇〇「ちょっと待って!!!」
二宮「待たない」
松村「別にいいけど」
〇〇「その言い方うざい」
松村「まだ何も言ってませーん」
菊池「シートベルトお願いしまーす」
山田「……近いね」
〇〇「近いです」
松村「物理的にですね」
〇〇「いちいち言わなくていい」
松村「事実だから」
〇〇「ほんとそういうとこ」
〇〇「お前が端なんだからもっと端によれよ!」
松村「〇〇が太っただけなんじゃない?」
〇〇「はぁ??レディーに向けてなんでお言葉」
二宮「実際は??」
〇〇「昨日現場でケーキ2個食べた」
山田「それでも〇〇スタイルいいよね、細い」
菊池「DMで最近またよく言われるらしいっすよ」
〇〇「ちゃんと食べてください!!って」
松村「じゃあ俺がご飯作るわ」
〇〇「いや、食べんから」
山田「ほくとって料理できるの?」
松村「得意ですね」
〇〇「お前のご飯食べたら毒で死んじゃうわ」
菊池「はいはい、予想通り口喧嘩始まりました」
二宮「でもさ」
二宮「さっきより距離縮まった感想は?」
〇〇「最悪です」
松村「気分悪いです」
山田「即答」
菊池「喧嘩するってことは、話す気はあるってことだろ」
〇〇「……」
松村「……まあ」
山田「じゃあさ」
山田「この移動時間、二人の話引き出そう」
〇〇「必要ないです」
松村「同意です」
菊池「却下」
しばらくして。
〇〇は、窓の外を見たまま、まばたきの回数が少しずつ減っていく。
松村はそれに気づき、視線を前に固定したまま、体を動かさない。
車がカーブに入る。
揺れで、〇〇の頭がわずかに傾く。
次の瞬間。
とん、と小さな重み。
〇〇の頭が、松村の肩に触れる。
松村「……」
山田「……え?」
二宮「今の見た?」
菊池「ちょ、すごい絵」
〇〇は完全に目を閉じている。
松村は、動かない。
避けることも、支えることもせず、
ただ“そこにある肩”のまま。
松村「……起こした方がいいですか」
声が、いつもより低い。
二宮「起こす?」
山田「いや、起こせないでしょ」
菊池「国民的アイドルで女優が、不仲相手の肩で爆睡」
松村「……警戒心なさすぎでは」
二宮「信頼されてるんじゃない?」
松村「……」
〇〇の頭が少しずつずれそうになるのを、松村は感じる。
ほんの少しだけ、
本当に数ミリだけ、体を傾ける。
〇〇の頭が、安定する。
山田「……優しい」
松村「違います」
菊池「じゃあ何」
松村「落ちたら危ないので」
二宮「言い訳が不器用」
菊池「もうすぐ着くけど」
松村「……もう少し、このままで」
車内が静まる。
〇〇は、何も知らないまま眠っている。
口喧嘩ばかりだった二人が、
一言も交わさず、同じ揺れに身を預けている。
車はそのまま、目的地へ。
カメラは回り続け、
何も起きていないのに、いちばん強い一瞬を映したまま。
その回は、静かに終わった。
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