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2話
【1日の楽しみ】
なんだかんだでここ(優也の家)にきてしまった。
立ち尽くすとそこには少し大きめの3階建てアパートが視界に入る。軽々とした足取りを見せる優也におどおどしい足を地につけついて行くと階段に足を進める。
かんかんと鳴る階段を登りきるとそこは3階の1番右の部屋、そこの番号を確認し慣れた様に鍵でドアを開けた優也は当たり前に扉へ入って行く。
どうぞと一言零したあと自身の足は惹き込まれるよう靴を脱ぎ玄関のさらに奥のリビングへ足を進めた
2人住むには少し不便な1LDKの真ん中に置かれた机に教科書を広げ課題を進める。
それに対し優也は寝室を後ろに隠す仕切りの前に用意されたキッチンで淡々とワイヤレスイヤホンを繋いだスマホで曲を聴き料理に取り掛かっていた
「〜〜♪」
「あ。その曲知ってる」
鼻歌に反応を示すと気づいた優也が少し驚いたように目を向ける
「お、知ってるの?」
「うん、流行った曲でしょ?なんかの小説が原作のドラマ化した曲。」
「へぇ、流行ったから何となく聞いてたから知らんかったわ」
「えー。」
もったいな。
なんて適当に吐き連ね会話は途切れる。手を止めたついでに時計を見るといつの間にか18時を超えていた。
「……やば」
吹き出る冷や汗、門限は18時。今から家に帰れば軽く20分オーバーは余裕の時間帯であり絶望の彼方へ引き落とされる
「親御さんなら連絡した。泊まっていいってさ」
「え、あ、ぇ?」
急展開を指す言葉に思わず上半身が優也に振り向きごちゃごちゃとした言葉から無理やり五十音をたたきだす
「時間が時間だしさ。飯も2人分、いいでしょ」
「ま、ぁ、それなら。」
想定内だと言わんばかりに用意された机に並ぶ
こいつは確かに家事全般の腕前はよく、美味しそうな炒飯に小籠包、おまけにスープが並びどれもこれも食欲をそそる匂いが溢れている
「ほら、召し上がれ?」
「ありがと。いただきます」
………
「ご馳走様でした」
皿の中には先程まで乗っていた料理は残らず胃の中へと奪われ、最後に流し込んだスープが舌をまだ刺激する
「おそまつさま〜」
かちゃかちゃと食器を重ね流しへ持っていく背中を目尻に伸びが自身の喉を唸らせる。
「俺風呂洗ってくるわ。」
「え、いいの。ありがと」
決まった時間に入る私は早めに風呂を洗い流そうと遠さも感じぬ浴槽へ足を運び出す。
すぐ側に来て浴槽を開けると一人なら十分な浴室、ちゃっちゃと終わらせる為スポンジをとり水に濡らす。暑い時期に冷えていく指先が気持ちいい
スポンジが色を濃く変わり濡れた事を理解し蛇口を戻す
「……他の世界、行ってみたいな。」
洗剤をスポンジにかけ呟いた言葉。
優也が歌っていたドラマの主題歌は元々異世界転生がモチーフのMV、本も出ているほど人気でその世界に憧れていた。
うちが、主人公になりたいとかじゃなく、行ってみたい。ただそれが願いなだけで
「他にはなんも無い……」
思いを馳せたところでエコーが掛かり静寂に包まれる虚しさを知りながら浴槽にスポンジを当て、左右へ動かしていく。
小さい泡が浴槽の中を付き纏うのを見ながら鼻歌を刻む
大方スポンジを当てただろうと理解を示し泡をシャワーで流す
シャワーの音が鼻歌をかき消し水が飛び散る
ふと下を向くとしゃがんでいた指先は赤くなっていて随分足に無理をさせたと考える
「よぉし、さっさとお湯張ろう」
ボタンを押すとお湯張りをします。そうアナウンスが流れ湯が溜まり始める。
それを尻目に部屋へ戻る。
続く
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