続きぃ
青山「……………これでよし」
青山は小峠を仮眠室に運び込み、右手と左腕に手当てを施した。
右手は強く引っ掻いたために人差し指と中指の爪が剥がれかけ、左腕は数多の傷口を引っ掻いたために出血多量。
ベッドに横たわっている小峠は、穏やかな寝息を立てている。
青山は傷に触らないように、小峠の左手を優しく握る。
青山「……冷てえ……」
その手は、死んでいるのではないかと勘違いする程に温もりを失っていて、冷たかった。
血を流しすぎたために、血流が些か悪くなっているのだ。
切った痕、刺した痕、抉った痕、火傷の痕、引っ掻いた痕。変えたばかりの白く清潔な包帯の下では、数多くの傷が小峠を蝕んでいる。
青山「…そうだよなぁ………分かんねえよなぁ……」
自分の舎弟が、なんでこんなことをしたのかはまだ分かっていない。その舎弟自身も分かっていないのだから、真相は闇の中だ。
自分に今できることといえば、心にも体にも傷を負って苦しんでいるこの大切な舎弟を見守ることだけ。
ただ見守ることしかできないことに、青山は少なからず悔しさを覚えていた。
青山「…ごめんな、気付いてやれなくて」
そう言って青山は小峠の頭を優しく撫でる。
これからどうしようかと考えていると、後ろから扉の開く音がした。
和中「ここにいたか」
それは和中だった。
これには流石の青山もビックリする。
青山「和中の兄貴!?なんでここに…」
小峠を起こさないようにできるだけ小声で問う。
和中「俺も華太を探していた。分かるだろう、お前も」
確かに和中は青山に直接小峠のことを探ってきたことがあった。
青山「なるほど…でございます。ですが、なんでこんな時間まで?」
和中「お前と同じだ、青山。直接何があったか聞き出そうと思っていた」
青山「そうでしたか…」
青山は和中と会話しながら、和中から見えない角度で小峠の傷を隠していた。
青山自身、小峠は傷を見られることに多少なりとも抵抗があるだろうと思ったからだ。
青山「(…よし、袖も戻したから見えねえはずだ)」
そして和中は寝ている小峠に近寄る。
和中「華太には一度自分自身の身の大切さを叩き込まねばならんな」
青山「仰る通りです。ちゃんかぶはなんでも溜め込んでしまいますから……」
和中「だがこればかりは此奴の性格上仕方がない。上からも下からも必要とされる中間管理職だからな。相談するにもできないことがある」
和中の言う通りである。
小峠は、上の立場に立つ人間からも、下に立つ人間からも必要とされる中間管理職であり、その上小峠のクソ真面目な性格が邪となりひとりで抱え込んでしまう要因となっているのだ。
だがその時、和中が何かに気がつく。
和中「……ん?青山、華太の右手の指先に包帯が巻かれているが…何があった?」
和中が小峠の右手の傷を見つけたのだ。
青山「(やっべぇ右手隠すの忘れてた!)」
青山は左腕のみを隠したため、右手は隠れていなかったのだ。
青山「い、色々ありまして………(やっべぇ俺死んだァ…)」
青山は目を泳がせながらなんとか誤魔化す。
だがそんなものが和中に通用するはずもなく。
和中「嘘だな。もう一度だけ言うぞ、青山。何があった?」
こんなに圧を掛けられれば、流石の青山も嘘を通すことが出来ない。
少し考え、和中ならば…と思った青山は諦めたように口を開いた。
青山「……実は………」
青山は申し訳なさを感じながら、自分が見てきた全てのことを洗いざらい話した。
話が終わったあと、和中は口に手を当てたまま動かなくなってしまった。
和中「………」
青山「あのー………和中の兄貴?」
和中「……すまない、少々取り乱した」
何か悩みがあるとは分かっていたが、それがまさか自傷行為だとは思わなかったのだろう。
普段冷静沈着である和中でさえも焦りを見せた。
和中「…俺が見ていた限りは、そこまでやっていたようには見えなかったものでな」
青山「………和中の兄貴は“コレ”が醜いと思いますか?」
和中「…何?」
青山は和中を真っ直ぐに見つめながら問う。
青山「華太の傷を、醜いと思いますか?」
その顔には先程のような焦りはなく、兄貴の舎弟という関係性を無視した、小峠への本心を探る視線があった。
和中「フン…愚問だ。思うわけがなかろう」
和中は少し黙ってから、青山の目を見てきっぱりと言い放った。
そして小峠の頭に手を置き、子供をあやす様に優しく撫でた。
和中「この傷は……こいつが…華太が今まで生きてきた証拠だ。華太の優しさだ。ここまで我慢していたのは頂けないが、それでも生きててくれてありがとうと……今まで良く頑張ったと言ってやりたい。…お前もそう思っているのだろう?青山」
和中は再び青山のほうへ視線を戻す。
青山「そう言ってくれてほっとしましたよ。もしさっきの質問に肯定してたら、俺は貴方を殺すところだった」
和中「生憎だが、俺はそこまでひねくれてはいない」
和中は顰め面をしながらそう言い返した。
青山「兄貴、このことは……」
和中「誰にも言わないと約束する。それが華太の望んでいることなのだろう?」
青山「…頼みます」
和中はそっと小峠の手を取る。
和中「……冷たいな」
青山「血の流しすぎですね。骨まで届いている傷も何個かあったので」
いつも見ているはずの舎弟の手が、今にも壊れてしまいそうなほど脆く見えてしまう。
その手が壊れないように、強く握った。
和中「…明日は俺が華太を見よう。野田の兄貴にはもう話はつけてある」
青山「分かりました。よろしくお願いします」
時計の針が指すのは午前3時。
和中は小峠の身体をヒョイと持ち上げる。
和中「(…軽い)とりあえず連れて帰る。車を出してくれるか」
青山「任せてください!直ぐにお届けしますよ」
そして3人はそれぞれの家に帰っていった。
to be continued…
コメント
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続きありますか!?
続きが気になり過ぎます!!
あの、Sun方の「久我虎徹の♡♡♡行為!?」に、似ていて、最初の場面も、これってどちらがパクっているんですかね、