テラーノベル
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「スト―ップ!!」
だけど相変わらず彼女は全力で拒否。
「大人の二人だからこそ感じられるたまらないドキドキ欲しくない?」
オレももうどうにかなりそうで、彼女の耳元でそっと誘惑する。
もうその気になってよ。
「透子をドキドキさせるのはオレだけでいたい」
他の誰かを考えないで。
他のヤツにドキドキなんてさせない。
あなたをドキドキさせるのはオレだけ。
今もこれからも。
「だけど。・・これ以上ドキドキさせるのはまた今度ゆっくりと」
でも。やっぱりさすがにこのままお互い流されるのもなんか違う気がして。
彼女をそれ以上惑わすことをやめた。
まだこの人の気持ちも何もわかってないし。
オレのこと好きになってくれてないうちは、オレはあなたには手を出さない。
本当にオレのことを好きになってくれて、オレが欲しいとあなたも求めてくれる時が来れば。
その時は迷わずあなたをオレのモノにする。
「まぁ少しずつこれからオレに夢中にさせていくから」
だから別に焦らない。
あなたがオレを好きになってくれるように、どんどん夢中にさせていく。
いつかオレがいなきゃダメになるあなたになるように。
「な、何それ。帰る・・・」
すると、彼女はなぜか不機嫌そうにそう言ってベッドから降りる。
「お邪魔しました」
彼女が自分の荷物を持って玄関へ向かいながら言う。
「どういたしまして。またいつでもどうぞ」
「またって・・もう来ることないと思うけど」
「そっ?またすぐに来るよ、きっと」
あなたが知らないだけで、すぐにその理由がわかるよ。
「あっ・・」
すると納得出来ていない彼女が不満そうにしながらも帰ろうとして、なぜだか立ち止まる。
「ん?どした?」
「あの・・こっから駅って近い?」
「駅?あ~。ん~まぁ、近いのは近いけど・・」
「駅までの道だけ・・教えて」
「いや・・教えなくてもわかるんじゃないかな・・」
「え?どういうこと?」
「玄関開けたらわかると思うけど」
「何それ。意味わかんない」
そして、やっぱり不満そうに玄関を出ていく彼女。
さすがに一歩出たらどこだかわかるでしょ。
オレはそんな彼女の後を追って、玄関のドアを開けるとキョロキョロしている彼女が見える。
すると、一生懸命状況を理解しようと整理している様子の彼女。
ふっ。なんだよ、可愛すぎかよ。
だからそこ自分家でここ隣だってば。
「ようやく気付いた?」
そのまま玄関のドアを開けながら外へ出て彼女に声をかける。
「ここ・・・」
「そっ。帰ろうとしてる家はお隣」
そう言って彼女の部屋の方を指差す。
ようやく一致したか。
「は!!?? えっ!ちょっと待って!意味わかんないんですけど!」
思った通りのパニックぶりだな。
おもしれー。
「だからオレと透子とは隣の部屋ってこと」
「えっ? 全然知らない! いつから!?」
「透子が引っ越してきてからずっと」
「えっ?私引っ越してからって・・ここ結構住んでるけど」
「うん。オレはもっと前からここ住んでる」
「はっ?私よりも前から!?一度も会ったことないよね!?」
「いや。たまに廊下ですれ違ったことあったけどね。そっちが気付いてなかっただけで」
切なくなるくらいにオレに気付かなかったからね。
「まぁ、それも滅多にないから。記憶にも残ってないんだろうけど」
言ってて悲しくなるわ。
「そっちは知ってたの・・?」
「もちろん」
「ごめん。全然気付かなかった」
「そうだろうとは思ってたから」
「なんかちょっと色々ありすぎてまだ頭の中整理出来てないんだけど」
「隣だってわかってたから美咲さんがオレにお願いしたってワケ」
「あ~、なるほど・・・。って美咲知ってるの!?」
「あぁ、うん。だって元々修さんに隣空いた時教えたのオレだから」
あの時あなたが前の彼氏との想い出が詰まってる部屋から引っ越ししたいと美咲さんから聞いて、タイミング良く隣が空いてるところに、オレがお願いした。
ここを紹介してほしいって。
そしたらあなたはここを気に入って引っ越してきてくれた。
そのきっかけを作ったのはオレだけど、結果決めたのはあなただから。
「なのでこれからは好きな時にいつでも会える♪」
そう軽いノリで伝えたけど。
ホントはあなたがようやくオレの存在に気付いてくれたことが嬉しくて仕方ない。
だからもう、これからは遠慮しない。
会いたくなったら会いに行く。
「か、帰る・・・」
だけど彼女は戸惑ってるのか照れてるのか、どういう気持ちなのかはわからないけど、またそう呟いた。
「またね。透子♪」
「・・・・」
そう彼女に最後に挨拶したけど、そのまま振り向くことなく部屋に入って行った。
さぁ、ようやくスタート地点に立ったって感じかな。
これで少しは彼女は意識してくれただろうか。
相変らず正気の彼女はあんな感じでまだ素直になってはくれないけど。
でも今まで彼女を陰で想ってきた時間に比べたら、こんなのなんてことないから。
きっと彼女はオレを好きになる。
絶対好きにさせてみせる。
思いがけず過ごした彼女との初めての朝。
初めて見たいろんな彼女。
きっとここから何か始まる。
そんな予感がした。
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