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「鬼」そう呼ばれる者とは思えぬ、白くか細い脚がそっと庭へと降りていく——
兄の墓石に、丁寧に酒をかける。
(この下に、兄様が眠っている……)
「兄様…」
ユイは墓石に寄り添い、朝まで眠る事もよくあった。
凍えるほど寒い朝には、ばあやが悲鳴を上げて起こしたものだ。
(ああ…凍え死ぬことすらできないのか……)
「兄様、明日は戦に出るからね…」
墓石を優しく大切に撫でた——
そして、口づけをした——
墓石を背にした、ユイの背中は
誰にも見えぬまま、泣いているようだった……
縁側を上がりかけたところで、あの番いを思い出した、
(……見掛けなくなったな…
お前たちは、一緒にいるんだろう?
……死んでいたとしても…一緒に死ねたんだろう……?)
ユイは、しばらく庭を見つめたまま動かなかった。
(兄様……
俺は、まだこちら側にいる……
だが――次は、きっと……)