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タボちょん、捏造、センシティブ注意
夜の部屋は、風呂上がりの湯気とコーヒーの香りで満ちていた。
ちょんまげはキッチンカウンターの前で、カップを二つ並べている。 タオルで半乾きの髪を拭きながら、ちらりとリビングを見た。
ソファには、長身で色黒の男がどっかり座っている。
ターボー。
会社の社長でそして、ちょんまげの恋人。
幼馴染だが、再会して付き合い始めたのは数ヶ月前。 けれど付き合い始めてからのターボーは、まるで今までの分を取り戻すみたいに甘かった。
「ちょんまげーまだ?」
低くてよく通る声が飛んでくる。
「はいはい、今持ってく」
返事をしながら、ちょんまげは小さな瓶を取り出した。
——媚薬。
といっても、ネットで見つけた怪しいやつだ。
「ちょっと気分が高まるハーブ」程度の説明だったが、半分は冗談のつもりで買った。
「…ほんとに効くのかな」
ちょんまげは苦笑する。
そもそも、ターボーは別に困っていない。寧ろその逆だ。
体格差もあるし、体力もあるし、ちょんまげがいつも先に参ってしまう。
でも今日は、ほんの出来心だった。
いつも優しく主導権を握るターボーを、少しだけ翻弄してみたくなったのだ。
「ちょっとだけ…」
ぽとり。
コーヒーのカップに数滴落とす。混ぜてしまえば、もうわからない。何食わぬ顔でカップを持ち、リビングへ向かった。
「はい、ターボー」
「お、ありがと」
ターボーは無防備に受け取って、一口飲んだ。ちょんまげはその様子を、そっと観察する。
(…何も起きないじゃん)
数分経っても変化はない。
テレビのニュースを見ながら、ターボーはいつも通りコーヒーを飲んでいる。
(やっぱり怪しい商品だったか)
そう思って気を抜いた瞬間だった。
「…ちょんまげ」
不意に呼ばれる。
「ん?」
振り向いた瞬間、ぐいっと腕を引かれた。
「わっ」
そのままソファに引き寄せられる。
近い。ターボーの体温が、すぐそこにある。
「タ、ターボー?」
見上げると、いつもより目が鋭い。
「なんか今日……」
ターボーは低く呟く。
「お前、やけに可愛く見える」
「え、何それ」
「いや、マジで」
大きな手がちょんまげの腰を軽く抱く。その力が普段より少し強い。
「…風呂上がりだからかな」
ちょんまげは目を逸らす。
内心、嫌な予感がしていた。
(もしかして……)
効いてる?
ターボーは元々ちょんまげに甘い。 けれど今の視線はそれ以上に熱っぽかった。
「ちょんまげ」
「な、なに」
「いい?」
「えっ……」
そう言うと、ターボーはちょんまげを軽々と抱き上げた。
「うわっ!?ターボー!」
「なんかさ」
ターボーは笑う。
いつもより少し獰猛な笑顔。
「やたらお前に触りたくてしょうがない」
「ちょ、ちょっと待って!」
「無理」
即答だった。
「今日は逃がさない」
ベッドルームの扉が開く。
ちょんまげは完全に悟った。
(これ…)
完全に自分のせいだ。
「ターボー、明日仕事だよ」
「社長だから平気」
「それ理由になってない!」
笑いながらベッドに下ろされる。
ターボーが見下ろしてくる。
長身で、肩幅も広くて、色黒の肌。
その迫力に、ちょんまげは昔から弱い。
「なあ」
「…なに」
「今日、やけに素直だな」
「そ、そう?」
「うん」
ターボーは優しく頬を撫でた。
「いつもより、可愛い」
その言葉にちょんまげの顔が熱くなる。
(いや、可愛いのはそっちだよ…!)
こんな顔をするのは、自分にだけだ。
ターボーは昔から、ちょんまげにだけ甘い。
「…なあ」
「ん?」
「逃げないよな」
その声は、少し低い。
「今日は、いっぱい構いたい」
「…ほどほどにね」
そう言った瞬間、ターボーは笑った。
「無理」
「即答すぎる!」
部屋の灯りが少し落とされる。
ターボーは額を軽く合わせた。
「好きだぞ、ちょんまげ」
「……知ってる」
「じゃあいい」
ターボーがくすりと笑ったあと、愛おしそうな目でちょんまげを見つめる。