白い雲が立ち込める空の下、俺は恋人の家のベランダで、手すりに身体を預けながら眼下を行き交う人たちを見つめていた。
彼に抱かれた次の日は、いつもなら起き上がることも辛くて昼過ぎまで寝ているのだけれど、今日は何故か早めに目が覚めていた。腰から下はやはり、気だるく痛みも多少あるけど、なんとなく寝ているのがつまらなくてベランダまで来ていた。 ティシャツに下着だけはいて出て来ている姿は、完璧に事後の気だるさを表していた。
ふと、ベランダにある灰皿の横を見ると、置きっぱなしになっていた彼のタバコが見えた。
「ボビーのタバコか…俺のと違うんだよな…」
俺がいつも吸うのはiQOSだから、紙タバコはあまり吸わない。少しだけ興味が湧いて1本取りだした。
それを咥えてライターを構える。火をつけて、軽く吸いながら火をつける。そのまま深く吸い込み、肺の中まで煙を行き渡らせた。この肺がキュッとなる感じが案外好きだった。そして、ゆっくりと口の端から煙を吐き出す。
口の中に広がる苦味が紙タバコのいいとこだったりはする。口からタバコを取ると、ベランダの手すりに肘をついた。
「たまにはこっちもいいなぁ…」
「俺も吸いたいわ…」
後ろから声が聞こえて振り返ると、ズボンにシャツだけを羽織って気だるそうに窓辺にボビーが立っていた。
おもむろにタバコを1本とって俺の近くに来て、タバコを俺の方に向けた。
「なに?」
「火、ちょうだい」
「んっ…」
意図を察した俺は、タバコを咥えたままホビーの方を向いた。ボビーはそれに自分のタバコの先を当てて、軽く何度か吸い火をつけた。
そのまま深く吸い込み煙を体に取り込むと、口元からタバコを取ると、俺の方を見てニヤッと笑った。
「シガレットキスって知ってる?」
「なにそれ?」
「今みたいにタバコ越しでキスすること」
「へぇ…普通にした方が良くない?」
「雰囲気ぶち壊すなよwww」
タバコを持って2人で顔を見合せて笑った。
キスをするのも抱き合うのも好きだけど、こうやって何気なく笑い合う時間も結構すきだったりする。こんな時間がずっと続けばいいと、空に向かって煙を吐いた。
コメント
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シガレットキスって普通のキスより大人っぽくてかっこいい…w