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コメント
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このようなすんばらしい作品がまだ見つかってないとか世間は損してますね。フォローとハート失礼します
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永世⇢ℛNui🌍💫@リムんなァ
【彩る赤の誘う所】 ⚠️蘭江戸です。
政治的な意図等は一切含まれておりません。
それでも良いよという方はお進み下さい。
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真っ赤で艶やかなリップ、白い肌に映える紅いシャドウ、まるで浮世を生きているかの様な不思議な美を彩るその赤は、常であればルビーや陽の色と表現されるだろう。
だが、どうにもその者には、『血の色だ』という感想が真っ先に思い浮かぶ。 それはその者の儚さ故か、残虐さ故かは、わからない。
長い木製の椅子から見つめていると、ふと、その者と目が合う。宝石の様な血の瞳が長い睫毛に宝を隠す様に秘められている。
その血の瞳はこちらを見るとどこか不機嫌な様子で、その完璧な容姿に見合わぬ子供の様な拗ねた顔をした。 そうして、こちらに近寄ろうとお気に入りの高台から降りる。近くなる度に感じる背丈の違いに不意に不思議な感情になる。 普段高台にいるからだろうが、見ている格好と実の背丈がかなり違って見える。それがその者なりの精一杯の背伸びなのだろう。
遂には完全に着き、その艶やめかしく彩られた口から声を発した。
「爺には化粧なんざしないで良いとあれ程申したんじゃがの。若いもんに押されては敵わんわい。」
女々しく儚い容姿とは裏腹に、随分と老人の様な目線で物を言う。着崩された着物に片手に持つキセルが男らしさを演出していた。逆にそれがないとその者が女でないと証明が出来ない。その位には、『麗人』という表現が似合う顔をしている。
「そうか。随分と楽しそうに見えたが。」
見たことをそのまま述べると、その者はにっと笑って「嫉妬かい。まだまだ若いの坊主。」と俺の膝の上に座った。子供っぽいのはどっちなんだか。
「嫉妬じゃない、この狸じじい。」
と頭を軽く小突く。
「まぁ、都合が良かったのは事実じゃがの。」
「…都合?」予想外の言葉が出たのでつい聞き返した。
「最近の若者は洒落てるもんが多くての。どんどん化粧道具の質も上がってきとる。」
確かにその者に彩られた複数の赤は、一つ一つが美しく洗礼されている様に見える。その完璧な美の中に、艶めかしささえも感じる。ついつい視線が誘導されてしまう様な……。
不意に、その者がふっと笑う。
「矢ッ張り効果はあったのう。和蘭。先程から顔ばかり見よる。」
悪戯っぽく笑うその者は、やはり子供に見えて仕方がない。
「商売道具として、見定めて居ただけだ。」
図星を突かれてつい顔を逸らす。その者は、「そうかい…なら。」と言うと俺の頬に手を当て、顔を前に向き直す。膝の上に乗って居た筈のその者は、いつの間にやらこちらに姿勢を向けて居た様で、顔と顔とが寸で交わってしまいそうな程近くにあった。「…試してみるかい。」その艶めかしく彩られた口元に手を当て、色っぽく笑う江戸を前に、何かがぷつりと切れた気がした。「なーんての。冗談じゃ。」等といつもの様にへらへら笑ってみせるその者の腕を乱暴に掴む。少し肩を振るわせこちらの顔を見たその者は、何かを察した様でやけに焦っていた。
「待て、冗談じゃ。冗談。じじぃの戯言よ。だからよせ、まだ昼前じゃし。」
なんて言う江戸を他所目に腰を担ぎ、「お言葉に甘えて、試させて貰うからな。」と寝床へ向かう。
その者はそっと諦めた様に、やけに高い視線の空を遠い目で見つめた。
…後日、貿易品に赤い化粧が増えたのはまた別のお話である。
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【彩る赤の誘う所】 完