コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「 はぁ… 」
人の居ないカリスマハウスのリビングで、ふと吐いた私のため息だけが、誰の耳にも止まらず消えていった 。
今日は色々な事があって疲れた。
やるべき事もやりたくない事もって、普段よりも頑張った1日だった。
そんな日はソファーでゆっくりお菓子を食べるに限るよね…
なんて思いながら、左手で雑誌をめくり、右手でお菓子を口に運ぶ。
誰も居ないから静かだな…。
1人でゆっくり出来るのはいいけど、普段騒がしい分どこか少しだけ寂しい気もする。
そう思ってしまったせいか、次の瞬間に聞き覚えのある笛の音が鳴った。
『『 PPPPPPPPPP!!!!! 』』
この音は…。
嫌な予感がしてゆっくりと顔を上げて見れば、その予感通り、ムスッとした顔で笛を咥える理解さんが居た。
「貴方、今が何時か分かっていますか?
もう夕飯まで2時間をきっています」
ムスッとしたまま、ずいっと迫ってくる理解さんに、 目を逸らしながら
「あれーおかしいな、てっきりまだ3時かと、」
なんて棒読みで言えば、更に深く眉間に皺を寄せられ、お菓子の袋を没収された。
「まったく…夕飯前の間食は控えるようにといつも言っているでしょう…。
不健康になるし豚になります。」
あぁ…折角の至福の時間が…。
今日はいつもより頑張って疲れているのに…!
普段の私なら大人しく従うかもしれないが、今日の私は少し違う。
仕返しに少しからかってやる…!!
「……聞いていますか??」
「でも私、今日凄く頑張ったんですよ?
今日くらい見逃してくれませんか…?」
上目遣いで目を潤ませてそう言えば、理解さんは少しだけ動揺した。
「だ、駄目です!秩序が乱れます!」
「…じゃあ、理解さんが私の頭を撫でてくれたら、お菓子は我慢します」
そう言って、ふと目に止まったホイッスルを引っ張れば、理解さんはバランスを崩して私の座るソファーへ。
しかし思ったよりも勢いがあったせいで、理解さんが私を押し倒したかのような体制になってしまった。
「「あ……」」
私の上に重なる理解さんの顔はほんの数cm程で、少しでも顔を近づければ唇が…。
そんな距離だった。
理解さんの顔が赤くなっていくのも、距離が近いせいか直ぐに分かった。
それに比例するかのように私の全身の熱が高まったのも。
どうしよう。ここまでするつもりじゃ…!
なんて言っても、理解さんはきっと信じないだろう…。
ならいっそ、このまま流れに乗ってしまえばいいのでは…!?
「あ…すすすすみません!!
で、ですがホイッスルを引っ張ったのは貴方ですからね!」
顔を真っ赤にしながら私の上からどこうとする理解さんを無視して、首に手を回して見詰めた。
「え、あ、あの、〇〇さん!?」
「…頭、撫でてくれないんですか…?」
「え、頭…?え、あ、その、えっ」
「私いつも頑張ってるのに…。
撫でてくれないなら明日から理解さんの言うことは無視します…!!」
「む、無視…!?」
私が軽く脅すと、理解さんはあからさまにショックを受けているようだった。
「嫌だったら頭、撫でてください。
それとも、私が秩序を乱してもいいんですか?」
とどめを刺すように、私がそう聞くと理解さんは顔を真っ赤に染めながら必死に考えた。
理解さんのことだから頭は撫でずに叱って行ってしまうんだろうな…なんて考えていると、不意に何かが頭の上にのった。
「え……?」
状況が理解出来ずにクエスチョンマークを浮かべていると、理解さんはぎゃん!と大きな声で怒った
「あ、あ、貴方が頭を撫でろと言ったんでしょう!! 」
まさか、あの理解さんが本当に撫でるなんて…。
状況が追いつくとみるみる体温が上がって顔が熱くなってきた。
「え、あの…」
「では、明日からも秩序を守って生活してくださいね!!
あと、明日婚姻届を貰いに行ってきます」
そう言って理解さんはサッと自分の部屋へ戻ってしまった。
…婚姻届?
理解さん、頑張って平然を装っていたが、顔はこれ以上真っ赤になるの??と言う程真っ赤で、眼鏡を上げる手はすごく震えていた。
てか本当私何してるんだ……。
え、待って婚姻届??????
何か嫌な予感がしたがまぁまぁまぁ…と気にしないことにした。
ソファーに居ると何だかさっきのことを思い出して恥ずかしくなってしまって、自分も早足でその場を去った。