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小学一年生になると同時に引っ越しが完了した。
ボロい二階建てアパートで二階部分が3部屋あるアパート。
右に意地悪なおばさんが住む部屋、真ん中が私達の部屋、左がフィリピンシングルマザーとその息子が住む部屋であった。
一階部分には麻雀屋とスナックが入っていて夜になると酔っ払いの騒ぎ声や、麻雀で負けたのか不満そうに暴言を吐く大人がいた。
大人が吐いた汚物がアパートの下にあったりするととても不愉快であった。
なんだかんだで母との二人暮らしは初めてだった。
母は朝から晩までパートをし、私はいわゆる鍵っ子というやつになった。
朝は一緒に朝食を食べて、平日は給食、土日は母がお昼休憩に家に戻ってきてお昼ご飯を作ってくれた。
その時に夜ご飯も作ってくれて置いていってくれる。
私と生きるためにとてもとても頑張ってくれた母。
でも母の背後には少しずつ少しずつストレスから来る黒いものが近づいていて、「それ」は破裂寸前だったことに未熟な私は気づきもしなかったのだ。
数ヶ月後
母は夜勤の勤務日数を減らし、夜には家にいることが増えた。
一緒にご飯を食べられるのはとても嬉しい。
でも母は白いご飯を食べない。
いつもお新香などを肴に晩酌ばかりしていた。
お酒の量はどんどん増えていき、私でも心配になる程だった。
母の座る定位置の周りには空いた空き缶や酒瓶等が転がる。
目はとろんと虚ろになり、ボーッとどこかを一点集中して見つめている。
「ママ、大丈夫?」
「んー?何がぁ?大丈夫だよ全然」
「そっか・・・。おいしいねご飯!」
大丈夫なんかじゃなかった。
今思えばまともにご飯を食べない母はみるみる痩せていっていたのだ。
私はよく1人で遊んでいた。
きょうだいもいないし、学校の友達と遊ぶこともあったがなんだか1人の方が気楽だったのだ。
「遠くへ行っちゃダメよ」という母の言いつけも守らず、自転車に乗ってはあらゆるとこに行った。
「おぉ、梨花ちゃん。今日もうちに寄ってくかい?」
「猫おばちゃん!うん!寄ってくー!」
猫おばちゃんはいろんな場所を探索しているときに知り合った一人暮らしのおばあちゃん。
といっても沢山の猫という名の家族がいる。
私はこんなように工事現場のおじさんやお兄さん、公園によくいるおじいちゃん、綺麗な朝顔の咲いてる家のお姉さんと沢山の友達を作った。
この時はまだ純粋で笑顔に溢れた子供だったためか、大人にはよく好かれたものだ。
「梨花ちゃん、今日も可愛いねぇ。うちでお菓子でも食べよう」
このおじさんはいつも大きな犬2匹を散歩していて犬に触りたくて話しかけたところから仲良くなった。
二十代くらいの娘さんもいてそのお姉さんもよく仲良くしてくれていた。
「うん!食べるー!!」
この笑顔がだんだんと大人への不信に変わり消えていくのであった。