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大きな扉の部屋が見えた。案内された部屋は図書館だ。「そう言えば、図書館の中まで見てなかった気がする」そう独りごちりながら扉を開けた。

「な?!」

室内は高いところまで本棚になっていて、

本が沢山並んでいる。奥までゆっくり歩き進むと、ステンドグラスの窓から太陽の光が溢れていて、床に青や赤やカラフルな光を映していた。

「綺麗……」

声が溢れうっとりとしいると、穏やかな男の人の声が聞こえた。

「このガラスはドワーフ族の作品だよ」

「?!」

ビックリした!!

全く人の気配を感じなかったから、 突然声を掛けられてびっくりした。意外と近くに居たようだ。

「びっくりした。思わず数ミリ宙に浮いたわよ」と心の中で文句を言う。

ゆっくりその声の方へ振り向くと、彼は柔らかく笑い、

「驚かせたかい?すまなかったね」

「いえ、大丈夫です。ところで、どちら様でしょうか?」

と話をふってみたけれど、ーーーこの雰囲気。

私の中で危険信号が点滅している気がした。

「君、そんなに警戒しなくていいよ」

「は、はい」

「初めまして、僕は君が薄々勘づいたとおり、アルアドネ・サバイ・コンタノール。以後よしなに、エリナーミア嬢」

アルアドネはクスッと笑う。

第1王子…王太子。さっそくお出ましですか。まさか学園に王太子がお忍びで来るなんて、よほどボンハーデンを味方につけたいのね。

「王太子殿下にご挨拶申し上げます。エリナーミア・ボンハーデンで御座います」

作り笑いを浮かべているが心の中は「まったくもって、めんどくさい」と強く思う。

人払いまでして私と接触するなんて、そんな事より他国の姫とよろしくやればいいものを。暇なのかしら?

「君、今失礼な事考えないかい?」

「いえいえ」

心読めちゃう?一瞬ヒヤリとしてしまう。

どうにかしてここから逃げないと。まずは行動のみ。

王太子の横をさりげなく通り過ぎて、上手く通り抜けたらダッシュ、だな。

と意気込んで逃げる事だけを考えた。

「それでは、私はこの辺で…」

ニコニコ微笑みながら横を通り過ぎようとしたが「?!」ガシッと腕を掴まれた。

「ですよねぇ〜」とその選択をした自分を恨んだ。

「話し終わってないんだけど?」

と口元は笑っているが、目元は冷え冷えとしている。

「あはは…」

あぁ〜もう、嫌。

王太子はテーブルの椅子を引き

「どうぞ」

と圧をあたえながら座れと言う。

あぁ〜。

「ありがとうございます」

私は渋々椅子に腰掛けた。王太子はむかえの席に座る。

こうなったらさっさと話を終わらせて帰ろ。

「王太子殿下、お話というのはなんでしょうか?」

とりあえず、知らないふりをしてみる。

「そうだね。私は楽しい事しか考えないから、君が嫌がる話ではないよ」

「左様でございますか」

作り笑いを崩さず、

「いやいや、嘘だ。そんな楽しい話しでわざわざマッチョーズを使ってここに呼ぶなんてしないでしょ〜」心の中はおしゃべりである。

「君、分かってて分からないふりは止めようね」

「えぇ〜そんな事ないですよ〜」

担任リリアン・ソラテーラの真似をしてみた。

「ふむ」

王太子は話を進めるかのように言った。

「私と婚約について進めている」

「!?」

「君はこの学園をやめて、妃教育に行ってもらうからね」

あぁ〜ホント、嫌。

私はふうと一息ついてにこやかに言った。

「お断り致します」

「残念ながら、まだ誰とも婚約をしていない君は断る事は出来ないよ」

王太子はやれやれと言った感じであるが、

「婚約者は居ますよ」

と言うとタイミング良く後ろから筋肉質の腕が伸びて来て、そのまま抱きしめられた。

「アルアドネ様お話中失礼します。私の婚約者がこちらにお邪魔していると聞いて、会いたくて参上いたしました」

「ラル待っていたわ」

ラルの頬を腕を上げて撫でる。

私の嬉しそうな顔を見て、王太子はため息をついた。

「イーラルドか。確か私の護衛が入り口にいたと思うけど?」

「アルアドネ様あれを護衛などと、もう少し腕の立つ者に変える事をお勧めします」

「ふむ。そうだね。イーラルドかハデスリードがなってくれるといいのだけれど」

ラルは私の頬にキスをすると、

「俺はエリナーミアに生涯をかけた騎士なのでお断りします」

「まったく、君達は付き合いが悪い。そして、私の知らない間に、婚約を交わして。ガッカリさせてくれたね。あんまりじゃないか、 そうだろ?ロイドーラ」

目を王太子が見ている方へ向けると、ロイド兄様が現れた。

「まったくあなたと言う人は。私は何度も言いましたよ。エリナはあなたに落ちないと。それに、エリナの自由を奪わないで欲しいとも」

「そうだったか?私はボンハーデンが欲しかったわけでは無い。ところで、 ロイドがここに来たと言う事は?」

ロイド兄様は王太子の側まで来ると、片膝を折って頭を下げた。

「おめでとうございます。王太子殿下いえ、国王陛下。無事済みましたので、お迎えにあがりました」

「?」

どう言う事?と思いつつ、ラルに促され椅子から立ち上がり、ロイド兄様にならいスカートを摘み私も頭を下げた。

王太子が国王陛下?と言う事は、反乱軍を立ち上げず、父王を廃王にしたって事?

疑問だらけだったが、ロイド兄様が新国王陛下に報告している。

「前国王に全ての悪行を問い詰め、関わりのある貴族を全て捕らえております。後はあなた様の登場ですが、うちの愚妹で時間潰しをお止めになって、城に参りましょう」

「ははは…愚妹ね。シスコンでだろ?」

新国王陛下は私に目を向けると

「エリナーミア嬢、私は政略結婚ありきで君に声を掛けただけでは無いのだよ」

そう言うとラルへ目を向けると、

「イーラルド・ララドール。世が世なら、君が王弟いや国王だったかも知れない。エリナーミアを絶対離すなよ。彼女は国宝だからな」

新国王陛下の表情は先程の穏やかさは無く、冷めたく力強いオーラをかもし出していた。この姿は、すでに国の未来を背負う者の決意を感じさせられるものだった。


私とラルはほっと息を付くと、向き合って微笑みあった。

「ラルありがとう」

「いや、お前の言葉が俺を強くしてくれたよ」

「え?私何を言った?」

「大した事ではない。待っていてくれたのだなって」

「ええ、あなたは絶対来てくれると信じてた」

「うん」

私はラルの腕を引っ張ると、つま先立ちをしてラルの唇を奪った。


「やったわ」

まさかアルノールドが心を開いてくれるとは思わなかった。

エミ・サイラは中庭のベンチで本を読んでいるふりをして思い返していた。

アルノールドとクラスが違い、接点が途切れてしまった事に正直焦っていた。エミは出だしを失敗して、攻略対象と中々近づかない。クラハム・ハスラナも近づけないオーラで怖くて声を掛けられないでいた。

完全に自分がヒロインの意味が無くなったと愕然としていたのだ。そんな時、第2王子のアルノールドが取り巻きもつけずに1人寂しく中庭にいた。あれから気まずくて声を掛けることが出来なかった。でも勇気を出して声を掛ける。

「先日はすみませんでした」

エミの声にゆっくりと顔を上げる。

「あぁ…」

なぜか元気が無い。

「えーっと…」

エミは何を話せば良いか分からずいるとアルノールドはポツンと呟いた。

「俺は何も知らなかった」

「…何も?」

「ああ、王子である事で、父上のやっている事に興味すら無かった。兄上は全て承知で、俺は蚊帳の外だったよ」

「アルノールド様、今知らなければこれから知れば良いのではないですか?だってまだ私達は15年しか生きて無いんですよ。自分よりも多く生きている人と同じになるなんて、簡単じゃ有りません」

エミの言葉にアルノールドはハッとなった。彼女の顔を覗き込むとクスッと笑った。

「おまえ、まともな事も言えるんだな」

「ええ!酷いです」

「酷いはおまえと出会った時だろ?」

「あれは…忘れて下さいよ」

「ふふ、忘れない」

「もぉ〜」

アルノールドにとってエミは息がまともに吸える場所になったのだろう。


エミは本を閉じると、寮のキッチンで作って来たサンドイッチを入れた箱をバックから取り出した。そして蓋を開けると一つ取ろうとしたら、横から手が伸びてきてサンドイッチを摘んだ。

「うまいな。これおまえが作ったのか?」

ともぐもぐ口を動かしている。

「アルノールド様?!びっくりした」

「驚かしたか、悪かったな」

「あ、いえ。どうですか?適当に作ったので」

「もう一ついいか?」

「ええ。どうぞ」

エミは箱を差し出すと、アルノールドは嬉しそうにまた摘む。

「うまいぞ。次は俺のも宜しく」

「宜しくって、アルノールド様、こんな下賎な者の食べ物を口にしていいのですか?」

「あ?ああ。全然気にしない。それに俺は命を狙われる程身分は高く無くなったしな」

「えっと…それはどう言う…」

アルノールドの顔はスッキリとしていた。

「その内分かるよ。それより、おまえは名前聞いていたっけか?」

エミは自分の知る物語と状況が変わってしまっているので戸惑っている。

「わっ私は、エミ・サイラです」

アルノールドは小さく「エミか」と呟いてどこか楽しげである。

エミは楽しげなアルノールドを見て安心した。昨日の彼はとても普通じゃ無かった。エミの存在が彼を救えたのなら、それはとても嬉しい事なのである。



エリナの中の人 〜悪役令嬢と聖女編〜

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