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1.ある夏の日
「っはよ〜ざいぁす…」
いい加減な挨拶をしながら、特異4課隊員・院瀬見がオフィスへ入ってきた。
「おはようございます」
「よぉ、何してんの」
リヅが院瀬見に気づいて振り返った。院瀬見が荷物を自身の机に置く。
「朝来たら冷房がぶっつぶれててん。さっきから直してんねやけどこらもう無理やわ」
「…潰れ…。 ?」
東京生まれ東京育ち。生粋の都会っ子院瀬見には、リヅの関西弁が伝わらなかったらしい。こういうときはリヅの親友であるイサナに翻訳を頼むのだが─。
「イサナは?」
「アイツ暑さで伸びとる。そりゃ深海の悪魔やしな。暑いのあかんのやって」
「ふーん…」
確かに横を見ると、そこには完全にやる気の抜けたイサナが突っ伏していた。
「みーんな暑っつい暑っついゆーて。誰ぞ機械系いける人おらんの?」
「いねぇな。全員自分の頭のネジ付けんのに精一杯だからな」
院瀬見が呆れたような顔をして去っていく。その院瀬見の元にイサナがふらついた足取りで歩いてきた。
「これ…昨日の資料…」
ガン!!
院瀬見にプリントを差し出したと思った途端、遂にイサナは前に倒れ、院瀬見の机に頭を強打した。
「おま…おまっ大丈夫か…」
「いたい…」
院瀬見はそれはもう笑いを堪えるのに必死。というかもはや既に吹き出している。
「…よし、じゃあ前髪結んでやる」
そう言って院瀬見がゴムでイサナの長い前髪を結んだ。
「ッハハハハ!!!」
「おい何して…ブッハハハ!!!」
院瀬見と、こちらに歩み寄ったリヅが途端に大爆笑する。
「いや、いや誰!?」
「もう誰だかわかんねぇ!!!」
「…」
2.アイスクリーム
「あ”ぁーほんとあっちぃムカつく…」
院瀬見、リヅ、イサナの3人は今日も任務へ出た。向かう途中に任務に行くアキと天使の悪魔の姿が見えたため、探せば案外近くにいるかもしれない。
「あつぃ…もうやだ…帰りたい…」
早くもイサナが音を上げた。無理もない。悪魔どころか人間だって同じ気持ちだ。
「しゃーねぇな…アイスでも食うか」
「ホンマに!?」「ほんと…!?」
2人の瞳が一気に輝いた。悪魔であろうとなんだろうとアイスは好きらしい。
「お姉ちゃんたちそんな厚着で大丈夫なの?熱中症なるよ?」
移動販売車のおじさんが院瀬見を見て言う。
「さっきも同じ服着た人いたけど…せめてワイシャツにでもなっときなよ」
「”さっきも同じ服着た人”?」
院瀬見が聞き返す。
「ほら、あそこのチョンマゲの兄ちゃん」
「あ」
おじさんが指さした先には、同僚であるアキと天使の悪魔の姿があった。
アキと天使は何か喋っていた。少し距離があるので内容までは聞き取れなかったが…。
暫くして、2人はどこかへ行ってしまった。
3.予感
「お。院瀬見先輩、おったで」
リヅが路地裏で何かを指さした。
その先には、なんとも化け物らしい姿をした悪魔がいた。見た目からして”ネズミの悪魔”と名付けるのが丁度いいだろう。
「おーおーやっとか…あっちぃからさっさと倒しちまおうぜ。…あ、イサナやるか?」
「やだ…あつい…」
「路地裏なんだから暑いもクソもねぇだろ」
「…」
院瀬見の言葉に納得したのか、イサナがすっと前に出た。
イサナがパン!と両手を叩いた。
途端、大きな水の泡が悪魔の体を包み込んだ。
「お?初めて見る技だ」
院瀬見が呟いたその直後。
パチン、と、イサナが指を鳴らした。
パァン!!
悪魔の体は、自身を包んだ泡と共に弾けた。
「さっすが」
4課の中でも実力はあるイサナだ。このくらいの雑魚悪魔なら簡単に倒せてしまう。
「こちら院瀬見。ただいまネズミの悪魔討伐完了」
院瀬見が無線に向かって言い、そして無線を切った。
「さて、どないします?帰ります?」
「あぁ、一旦な」
3人はとりあえず本部へと戻ることにした。
丁度その頃。
「…」
「星野、これ頼む」
「あ、はい」
対魔2課オフィスには、隊員・星野がいた。
「…どうした?」
「…いえ」
上司が顔を覗き込む。星野は目を逸らし、窓の外をじっと見つめた。
「少し、胸騒ぎがするだけです」
続