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18 - 第18話 「夏祭りの夜に」

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2023年04月26日

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1.居酒屋での話

その夜─

「あそうだ。リヅ、イサナ、明日の夜夏祭り行ってみっか?」

「夏祭り?」

3人が今いるのは近所の居酒屋。仕事終わりのサラリーマンなどが次々とやって来て騒いでいる。どうやら外は大雨のようで、暖簾をくぐって入ってくる人は皆全身びしょ濡れだった。

院瀬見はビール、リヅはコーラ、イサナはリンゴジュースをそれぞれ飲みながら頼んだ品を待つ。

「夏祭りなんてあるん?」

「え、知らねぇの?毎年やってんの」

「花火…去年もあげてた…」

院瀬見とリヅの会話にイサナが加わる。リヅが思い出したように手を打った。

「あーあれか!行こう行こう!」

「りんご飴食べる…」

イサナがジュースを飲みながら呟く。運ばれて目の前に置かれた鱚の天ぷらの皿を片手で押しのける。

「イサナお前魚食わねぇの?うめぇのに」

「お魚きらい…」

「なんで」

明らかに嫌そうに目を背けるイサナを院瀬見は不思議に思って見つめる。すると、リヅがレバニラを小皿に取りながら呟いた。

「自分の仲間を食べてる気分になるから嫌なんやって。僕も魚と肉は嫌いやわ」

「なるほどな。…いやじゃあお前どうやってタンパク質取るんだよ。つかお前レバニラ食ってんじゃねぇか」

「レバーは肉ちゃうし」

リヅがレバニラを食べようと口を開けた途端、院瀬見が身を乗り出してきた。

「はァァ〜!?バァカかテメェレバーは肉に決まってんだろうが!!」

「バカはそっちやろ!レバーはレバーや!!」

「バァァカレバーはれっきとした豚の肝臓ですゥ〜!肉ですゥ〜!!」

店のど真ん中にいるにも関わらず、院瀬見とリヅが喧嘩を始める。それもレバーが肉か肉じゃないかという、なんともくだらない理由で。

「なぁイサナ!!レバーって肉だよな!?」

「海!肝臓は肉ちゃうやんな!?」

2人からいっぺんに問い詰められたイサナだが、1ミリも動じずに冷奴を口にする。

「別にどっちでもいいと思う…」

「だぁーそれじゃダメなんだよ!!ちゃんとどっちか言ってくんねぇと困るって…!」

院瀬見は酔ったままのテンションで机に思いきり頭を打った。

2.夏祭り

次の日の夕方。夏祭り会場は沢山の人でごった返していた。

「うひ〜!どんだけ来てんだ…!マジで大盛況じゃねぇか…」

「僕たこ焼き買うてくるわ。海も一緒に行かん?」

「行く」

リヅがすっと立ち上がって振り返った。

「と、いうことで場所取り頼むで!院瀬見せーんぱい♪」

何とも頭にくるドヤ顔を残し、リヅはイサナと手を繋いで人混みへと消えていった。

「あンのクソガキ…」

院瀬見は引きつった笑みを浮かべた。


「たーだいま〜。まだ花火始まらんの?」

暫くして、リヅがたこ焼きを片手に戻ってきた。イサナはその横で真っ赤なりんご飴に色々と向きを変えながら一生懸命かじりついている。

「分かんねぇけどもうすぐじゃね?」

院瀬見があぐらをかいたその時だった。

ヒュゥゥゥゥゥ…

画像 ドォォーン!!

「わぁ…!!」

リヅとイサナが突如打ち上がった花火を食い入るように見て、院瀬見が2人のその姿を見ながらにっと笑う。

「花火なんていつぶりやろ…綺麗やわ…」

「本物の花火…生まれて初めて見た…」

「え、ホンマに!?」

夜空を見上げたまま言うイサナをリヅは驚いた様子で見た。イサナは今まで人間と接することなく生きていたため、このようなものを見る機会がなかったのかもしれない。

ドン!ドォン!ドォーン!!

一発、二発と瞬く間に起こる花火の乱れ打ち。人々はそれを目に焼きつけるのに必死だった。

そして。

「終わってもうた…?」

「まだ来るかも」

深く暗い空に咲く花が静かに消えた時だった。

ドォン!

「?」

院瀬見は聞き逃さなかった。遠くでした、花火に似た何かの音を。

「他んとこでもやってんのか…?」

院瀬見は特段気にせず、再び始まった花火に視線を戻した。

3.訓練施設

その頃。

「勝負アリ!!」

「…あ、ありがとうございました…!」

特異2課隊員・星野は2課の訓練施設に来ていた。たった今後輩の顔面を容赦なく思いっきりぶん殴ったところである。

「星野ォ〜、なかなか良かったじゃねぇか?も少し手加減しても良かったような気がするが…」

そう言いながら歩み寄ってきたのは野茂。星野の先輩である。

「実戦でそんな戯言が通用するとでも」

星野は相変わらず淡々とした口調で言った。野茂の傍を通り過ぎ、近くの椅子に座る。

「…まぁ、そうだな」

「次!早川!!」

この時、訓練施設には4課隊員・早川アキとそのバディである天使の悪魔もいた。星野が頬杖をついて早川と新人の戦いを眺める。

「勝負アリ!!」

「ぐぅぅ……ご指導ありがとうございました!!」

新人が鼻血を流しながら早川に頭を下げた。仲間に支えられている。

「アキィ〜、わざわざ来てもらってすまないな」

野茂が早川の肩に肘を乗せて話す。星野はそれを見ながら水筒を下に置いた。

「野茂さんの頼みは断れません」

「おぉ?そうか?なら今からでも2課に戻ってこい」

早川はずっと前、4課ではなく2課に在籍していた。それは星野も知っている。野茂はそんな早川に戻ってきてほしいようだ。

「─順当に行けば5年後には俺が副隊長になる。そうなったら本気でお前を誘うからな。…なぁ?星野もそう思うよな?」

「知りません。先輩の場合その”順当に”が全うできるのかが問題かと」

「…つれねぇ奴」

野茂は口を尖らせた。


訓練が終わった。早川と天使は本部へ戻ろうとしてるが、2課は片付けがあるためまだ残っている。星野と野茂は玄関の掃除をしていた。

「星野、花火大会ってもう終わっちまったかな」

「さぁ」

「まだやってたら一緒に行かねぇか」

「嫌です。ナンパ癖気持ち悪いので」

その星野の一言が野茂のイタいところを的確に突いた。

「お前ほんっと毒舌だよな…だから新人に怖がられて嫌われるんだ」

「嫌われても生きていけますので」

「あっ、周りの評価聞き入れないタイプ?」

なんともテンションの低い会話を続けながら2人ゴミを掃いていた時だった。

「……」

「? どうした?」

「人影が…誰ですかあれ」

突然、星野が真っ暗な外に向かって目を細めた。誰かが這いずりながらこちらに来る。

「敵襲か?」

「いや、あれは…」

星野がほうき片手にゆっくりと近づいた時だった。

「う…ぅ…助け…」

「…!!」

「…特異課…味方…た、すけて…チェンソー様を…たすけ…」

そう呻く男の姿に、星野は見覚えがあった。

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