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公認ラヴァ〜それでも愛してる〜

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公認ラヴァ〜それでも愛してる〜

24 - 第24話賢也side<思いがけない事実が自分のバカさを再認識させる>

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2023年09月11日

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月曜の朝、桑原部長にミーティングルームに呼び出された。


部長がオレに何の用だろう?

人事異動にしては時期がおかしいし、何かのプロジェクトの打診だろうか?

だとしたら、仕事に打ち込める時間ができるのは今のオレにはいいかもしれない。



入室すると部長が一人で座っていた。


「片桐君、ドアに鍵を掛けてから座ってくれ」


かなり重要な案件なんだろうか?

言われたとおりにドアに鍵を掛けてからテーブルを挟んだ向いに座った。


「君を呼んだのは、ある話を聞いたからなんだよ」


なんだろう・・・


「総務部の大森恵美さんと営業部の片桐くんが不倫をしているという話を聞いたんだが」


頭の先から体温が失われていく、それなのに汗は大量に毛穴から噴き出していった。


「それは・・・そんなことは・・・」

喉がひりひりする、なんとか言い逃れる事ができないだろうか・・・シラを通すしか・・・


いいわけを考えているオレの前に数枚の写真が置かれた。

それは、有佳が持っていたのと同じ写真だった。


「こういう証拠写真もあるんだよ、言い逃れはできないし大森さんからも話は聞いているから」


大森さんが部長に言ったのか、部長に言いつけるという言葉ハッタリでは無かったということなんだ。


「さすがに、不倫はね。かばうのは難しいし、この会社にいるのだって辛くなるだろ。女性社員を全員を敵に回すようになるし、倫理的に問題のある君をだれも取り立てることもなくなる」

「まぁ飼い殺しされるとでも言った方がいい」


まさか、大森さんがそんなことをするとは思わなかった。

仕事を辞めても、次の仕事が見つかるのか生活はどうするのか頭の中は同時に処理しなくてはいけない事柄でパンクしそうだ。


「離婚の話がでているそうだね、それならばいっそ離婚して大森君と結婚したらどうだ。そうすれば、君は誠意のある人だと思ってくれる人もいるだろう」


なにを・・・・言っているんだ?


「妻とは別れるつもりはありません、話し合いをして離婚はしないと言うことに落ち着きました」


「家庭内ではそうかも知れないが、会社としては不貞をはたらいた人間に仕事を任せるのはねぇ。もし、離婚をしないのなら地方へ行ってもらうことになるよ」


「転勤ですか・・・・」


転勤ですむのなら、また有佳に迷惑を掛けてしまうがなんとか理解をしてもらおう。


「ただし、転勤先には単身赴任で行ってもらう。部屋も単身用の寮に入ってもらう、たぶんこっちに戻ることは絶望的だと考えてくれ」


「ど・・どうして単身赴任・・・」


「離婚して大森さんと結婚すれば、この話はわたしのところで止めてやろう。君は今まで通りに出世街道を進んでいくことになる。どうせ、家庭でも修復はむずかしいのではないか?」

「とりあえず、どうするべきか3日間時間をやるからよく考えろ」


それだけ言うと部長は立ち上がり、自らドアを解錠して出て行った。


残されたオレはただ呆然と椅子に座っていた。



夕食が終わってから有佳にすべてを話した。


「単身赴任という風に言われているが、オレは寮に入るらしいから、有佳だけ部屋を借りてくれればいいんだけど」


「仕事を始めたから無理だよ」


そうだよな、前だったら付いてきてくれたかも知れないが、今のオレに付いてきて欲しいとか言えないし、有佳だってオレのために何かをしたいとか思わないだろう。


「離婚はしたくないし、もちろん大森さんと結婚したいとかそういうことは全くないんだ。でも、このまま有佳と離れて暮らすのも嫌なんだ」


「そう・・・大森恵美さんと完全に別れてしまってもいいってこと?」


「もちろんだ、大森さんには恋愛感情は全くなかった。ただ体だけの関係だったんだ」


はぁ・・・


有佳のため息に今、自分が言った言葉が最低だと気付いたが大森さんに気持ちがあると思われたくなかった。


「ごめん、自分でも最低だと思ってる」


「賢也に覚悟があるのならいいわ。桑原部長の家は知ってる?」


「え?」


「桑原部長の家」


「何度かタクシーで送った事があるからわかるよ」


「ちょっと待っていて」というと有佳は部屋からバッグを持って出てきた。


「さぁいくわよ」


「えええ?部長のところ?」と焦るオレを置いて玄関に向った。



一緒に謝罪をしてくれると言うことなんだろうか・・・

自分のしでかしたことを有佳に尻拭いをさせるとか、情けないと思いながらも妻と別れる気が無いことをアピールできるかも知れない。



二人で車に乗るのは随分と久しぶりだ。

久しぶりに乗ったのが、不倫の後始末とは本当にバカだな・・・


部長の家は閑静な住宅街の戸建てだ。

たしか、奥さんが社長の娘で奥さんには男兄弟がいないため、部長が時期社長になると言われている。


「連絡もせずに来てしまってよかったのかな」


怖じ気づくオレに

「こういうのは早く行動を起こした方がいいの」

と言うと、躊躇無くインターフォンを押した。


有佳の行動力に今更ながら気がつき驚いた。


「どちら様?」


女性の声が聞こえてきた。


家政婦だろうか?何て言おうかと思っていると

「夜分すみません、片桐賢也とその妻の有佳ともうします。いつも桑原部長にお世話になっております」


「そう、会社の方なのね」


「はい、失礼かと思いましたが急ぎ謝罪をさせていただきたくて伺いました。失礼ですが奥様でしょうか?」


「はい、桑原の家内です」


「それでは、奥様からも私どもの謝罪を受けて頂くべくお口添えをお願いできませんでしょうか」


インターホンの向こうで「ふっ」という笑いのあと

「どうぞ」という声と共に門が開いた。


営業部でも成績のいいオレよりもずっと営業が上手いのかも知れないと思った。



玄関には二組のスリッパが用意され、年齢に見合った上品で綺麗な女性が立っていた。

「ご無理を聞いて頂きありがとうございます。急いで来てしまったため、手ぶらで来てしまい申し訳ございません。後日お礼を送らせていただきます」


「いいのよ、よほど急いでいらしたのね」

「さあ」と言ってリビングに通してもらえた。



ソファには桑原部長が不機嫌そうに座っている。

本当に大丈夫なんだろうか・・・


「夜分遅く失礼します」


「まったく失礼にもほどがある。どういうつもりだ」


有佳にばかり謝罪させては申し訳ないと思い

「申し訳ございません」


「謝罪をしたところで、あの話は変わらんぞ。奥さんを連れてきたところで無駄だ」


何も言えなくなり頭を下げるだけだったオレの隣で有佳は何かをバックから取り出し膝の上に置いていた。


「大森恵美さんにはなにか処分はあったのですか?」


その一言に部長が一瞬動きを止める。

「いや、彼女は言いにくいことだが片桐君に騙されたと言っていたから」


「それでは、大森さんはなにも処分はないのですね、それは少しおかしいように感じます」


「お・・おかしいとは何だ」

部長は声を荒げて威圧的な態度を取り始めるが有佳は依然落ち着いている。


「大森恵美さんとは会社のロビーで少しお話させていただきました。受付の三輪さんがご存じだと思います。その時、大森さんは私にとても口にできないような言葉で私を愚弄し、はやく離婚しろと迫りました。音声もございます、とても主人一人が悪いように思えないのです。ところが今回、処分されるのは主人だということは大森さんと関係があった男性のみが処分対象になるということになるわけですよね」


大声で怒鳴りつけるように「何を言っているんだ!」と立ち上がった所に、部長の奥さんがお茶を持って歩いてきた。


「あなた、そんな大声を出してきちんとお話をお聞きになって」


奥さんの一言でおとなしくソファに座る


「ごめんなさいね」と言いながらお茶をテーブルに置いていく


「どうぞ、お構いなく。ですが、奥様にも聞いていただきたいのですがよろしいでしょうか?」


「わかりました」と言って部長の隣に座った。


「先ほどからの話ですと、主人だけではなく処分を受けないといけない人がいるのでは無いかと思いまして」


奥さんは部長に向って「そうなの?あなたご存じ?」と聞いているが、部長は頭を傾げている。


有佳は先ほどバッグから取り出していたものをテーブルの上に並べていった。

それは部長と大森さんが腕を組んでホテルに入っていく姿と出てくる所の写真だった。


部長は慌てて写真をかき集めようとしたが、一枚は奥さんの手の中にあった。

「先ほどの話は聞こえておりました。たしかに、この女性と関係があるならあなたも処分を受けなくてはいけないですわね」


「いや・・・その・・これは違うんだ」


どうやらパワーバランスは奥さんに大きく傾いているようだ。


部長は慌てながら「もう、済んでいることなんだ。手切れ金も渡して綺麗さっぱり別れている、本当だ!」


部長が金を・・・

「オレも大森さんに100万を渡してます。手切れ金として・・・」


「なんだと!そんなこと恵美は何も言ってないぞ。しかもわたしも100万を要求された」


「恵美ですって?」

部長は奥さんの一言にソファから飛び上がりそうになっていた。


結局、大森さんは自分の懐はまったく痛んでいないということ・・・

それ以前に大森さんの恋人って部長だったんだ・・・


「私は離婚をするつもりで主人と大森恵美さん双方に慰謝料の請求書と誓約書を郵送しました。その結果、大森恵美さんから慰謝料200万円を受け取りましたが、主人とは話し合いの結果離婚はせず慰謝料の支払い請求も取り下げました。これらの行動を起こすため、興信所を使用し大森恵美さんと主人の行動を追っている時に桑原部長と大森恵美さんの関係がわかりました」


有佳は一度深呼吸するとまた話し始めた


「大森恵美さんが“同時期”に桑原部長と主人の二人と交際していたことは間違いがないのに、大森恵美さんと桑原部長は処分がなく主人だけが、私と離婚をして大森恵美さんと結婚するか単身で地方へ移動するかという選択を迫られたことに疑問を感じます。もし、主人だけが処分されるのでしたら、社長にことのすべてをお話させていただきたいと思い奥様にも話を聞いていただきました。とても不愉快なことで大変申し訳ありませんでした」


「そんな条件を!」

いままでとても穏やかに話を聞いていた奥さんが感情もあらわに言い放つ。


「自分の保身の為に、そんな条件を!公私混同にもほどがあります。なにより、一番の被害者である片桐さんの奥さんになんて酷い仕打ちをしようとしていたのか!」

部長に対して強く話していた奥さんが有佳に向って頭をさげた。


「こんなバカな話で傷つけてしまってごめんなさい、この件に関してわたしが責任を持ちます。安心して」

「わかりましたか!あ・な・た」

部長はソファの隅でただただ小さくなっていた。


「ありがとうございます、夜分失礼いたしました」

有佳は頭を下げ、立ち上がる。オレも慌てて立ち上がって頭を下げた。


部長の奥さんは玄関先まで見送ってくれて有佳にニッコりと微笑むと

「片桐有佳さんっていいましたっけ」


「はい、奥様」


「今度はお一人でいらして、ちょっとまっていてくださる?」

奥さんは一旦リビングに向うとスマホを片手に戻って来た。

「連絡先を教えてくださる?」


有佳は満面の笑みで

「是非よろこんで」

と答えていた。



「有佳ありがとう」


部長の家を出て夜の町を自分たちのマンションに向けて車を走らせていた。

有佳は何も言わずずっと窓の外を眺めている。


「大森さんが部長とも関係があるのを知っていたんだね、オレってバカだな」


有佳は、流れる夜景を見つめながら「本当にバカね」とだけ呟いてその後は二人とも何も話すことは無かった。



一人のベッドに倒れ込む


大森さんの彼が桑原部長とか・・・

結局、部長の精算のためにオレは使われたってことか・・・


結構ショックだけど、それ以上にショックだったのは

有佳がすべてを知っていたこと・・・

「本当にバカね」


残業だと言って大森さんに会っていたオレに愛想を尽かしていたのかも知れない。



会社に行くと部長のデスクがやけに綺麗になっていた。


昼過ぎに人事異動が発表された。

桑原部長が離島に新設される部署に移動し、大森恵美は子会社への出向となっていた。


二人が同時に処分されたことで様々な憶測を呼んだが、事実を知るオレにしたら憶測では無く噂されている事柄はほぼ当たっている。

ただ、その噂には俺は含まれていない。


「コーヒーでも飲もうぜ」

田中がオレの肩を叩いた。

田中はオレと大森さんが付き合っていると思っていたわけだから、今回の事に驚くのも無理はない。

オレだって驚いたし・・・



「あれ、どういうこと」

ドリンクコーナーでコーヒーをドリップしながらダイレクトに聞いて来た。


「まぁ、そういうこと・・・」

有佳と共に部長宅に突撃したときの事を話すと

「おまえさ、奥さんを大切にしろよ」と、また言われた。


「わかってるよ」と答えたが、言われるまでも無い

オレはこの先の人生を賭けて有佳を愛し続けていくつもりだ。



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