テラーノベル
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📍深夜1:42 都内某所・事務所。編集部屋
やまとと○○だけの部屋の中に、カタカタとタイピング音だけが響いていた。
画面の中では、コムドットの新作動画の編集が進んでいる。
○○は椅子に座りながら涙目
「……いった……」
また、だ。
さっきから何度も襲ってくるジーンとする鈍痛。深く息を吸ってごまかしているけど──限界は近い。
机の引き出しには、空っぽになった痛み止めの箱。
その箱の中身は、ここ数日で○○が一人で飲みきったものだった。
もう、どこの薬局も開いてない。
今日が終われば、明日は朝から予定が詰まっている。
つまり──今この痛みに耐えるしかない。
○○「…次ここカットでいい?」
❤️「……うん」
(やまとの声)
作業をしていた❤️は、手元のマウスを操作しながらふと目を○○に向けた。
○○は無言で俯いた。
その顔には、メイクも消えかかって、疲労と痛みでほんのりと汗が滲んでいる。
……数分後。
❤️は無言で立ち上がり、何かをポケットから取り出した。
「○○」
そう呼びかけると、スッと片手を差し出す。
そこにあったのは──市販の痛み止め2錠。
○○は、目を見開いた。
「……え?」
❤️「これ、飲むでしょ?」
○○「……なんで…持ってんの?」
❤️「俺が持ってたのか、お前が持ってると思ってたけど実は俺が把握してたのか。どっちだと思う?」
○○「…………(無言)」
❤️「飲みな。辛いでしょ?」
○○は、反射的に手を伸ばしてしまった。
錠剤を口に入れ、水で流し込む。
その動作すら、今では身体に染みついている。
……ごくん。
喉を通ったとたん、全身から一気に痛みが引いていくような気がした。
でもそれ以上に、心の中にズシンとした重さが残った。
痛みが引いて冷静になって考えた。
──なんで、やまとが持ってたの?
──なんで、全部知ってるのに何も言わないの?
🕯️静けさの中、編集再開。けど空気が違う。
画面の中では、いつものYouTubeっぽいテンションの映像が流れている。
でも、○○の手は止まっていた。
編集ソフトのタイムラインを見つめながら、さっきの出来事を何度も何度も反芻していた。
(これ…普通に考えておかしいよな?
私……やまとに薬、もらっちゃったんだよね?)
心の奥から、ズズズ……と、罪悪感と恐怖が押し寄せてくる。
自分で隠していたつもりだった。
痛み止めを飲んでればバレない。
顔に出さなければ大丈夫。
「行ってきた」と言えば、誰も気づかない。
──でも。
(全部、見透かされてたんだ……)
❤️「○○」
不意に、やまとの低い声が響いた。
「お前、さ」
「いつから俺の目、誤魔化せるようになったの?」
○○は、背中がゾワッとする感覚を覚えた。
「痛み止め、全部なくなってるのも知ってた。
編集中に口を押さえてんのも、知ってた。
ごはん食べる時、右で噛んでないのも見てた。」
「全部、黙ってたよ。俺。」
やまとの声は静かだったけど、芯がある。
何より、優しさではなく責めだった。
○○「…………」
❤️「でも今日、俺が渡したあれ。何も考えず飲んだよね?」
○○「……考えてなかったわけじゃ…ない……」
❤️「じゃあさ、その瞬間、自分がどれだけヤバい状況か理解できてた?
痛み止めがないと、生活できないくらい放置してるのに、まだ行かないつもり?」
○○「………………」
❤️「俺たち兄弟でよかったね、○○。
これ、他人が見たら**“自己管理できてない未成年に薬渡してる兄”**だよ。」
○○「っ………」
❤️「黙るな。考えろ。
いつ、どこで、どの瞬間から歯科検診やめたのか。
何の言い訳で、誤魔化してたのか。
どうして、半年も薬に頼るまで放置してたのか。」
○○「…………やだ……」
❤️「やだじゃねぇよ。」
バシッと、机の上に空の薬箱が叩きつけられる。
❤️「これが、お前が誤魔化してきた証拠だよ。」
「○○、歯が痛いのはお前のせいだよ。俺らのせいじゃない。」
「でも──
このまま何も言わなかったら、“兄として一番の失敗”になるのは俺だと思ってる。」
「だから言う。明日、歯医者行け。俺も一緒に行く。」
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