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naru
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「どうして……! なんであいつは落ちないのよ!」
おりんは、自室で爪を噛み締め、鏡の中の自分を睨みつけていた。
おさくを陥れるために張り巡らせた嘘が、すべておさくの追い風になっていく。
焦りはおりんの心の余裕を容赦なく奪った。
元々、嘘を重ねすぎて情報の整合性が取れなくなる悪癖があった。
精神的に追い詰められたことでその綻びは一気に広がり、客の前でも露骨にボロが出るようになっていく。
まばゆい笑顔は引きつり、おだて文句も上滑りして、客足は目に見えて途絶え始めた。
「もういい、こうなったら……!」
一位に追いつきたい、おさくを引きずり下ろしたいという一念に突き動かされ、おりんは客を選ばなくなった。
普段なら絶対に断るような、素性の知れない危ない客、羽振りの良さだけが自慢の汚い男たちを、強引に自分の部屋へ引き入れ始める。とにかく数をこなし、おさくより金を稼げば勝てる。
その盲信が、おりんに致命的な破滅をもたらした。
ある朝、おりんは自分の肌に異変を感じた。 太ももに走る、妙な斑点。
それは日を追うごとに広がり、やがて顔にまで小さなしこりとなって現れ始めた。
悪質な性病――梅毒だった。
「お前さん、その顔はどうしたんだい」
部屋に現れた遣手婆の目は、凍りつくほど冷たかった。
おりんは必死に白粉を厚く塗りたくって隠そうとしたが、婆の鋭い眼光は誤魔化せない。
「……その顔じゃあ、もうお職には出せないよ。客を怖がらせてどうするんだい」
「待って、お婆さん、治るわ、すぐに治るから……!」
「治る保証なんてどこにある。あんた、自分の噂を聞いてるかい?」
婆は冷酷に言い放った。
「客たちが言ってるよ。『あいつの方が本当の化け物だ』ってね。
おさくを化け物呼ばわりして陥れようとしたバチが当たって、自分が本当の化け物になっちまったんだ、とさ」
おりんは息が止まった。
自分が放った「化け物」という呪いが、形を変えて、自分自身の顔を食い破りながら戻ってきたのだ。
「嫌、嫌ぁ!」
と叫ぶおりんは、客からも、そして郭のルールからも切り捨てられた。
彼女は二度と表舞台へは戻れず、裏の薄暗い、隔離された隠し宿へと引きずられていった。
コメント
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うわ、これは重い……。おりんの焦りと自滅、因果応報が容赦なく描かれていて、読んでるこっちも息苦しくなりました。「化け物」って言葉が二重に効いてくる構造、すごく好きです。嘘で塗り固めた者が自ら崩れ落ちる展開、伏線の回収が丁寧で唸りました。肌の異変の描写が生々しくて、もう戻れない感がひしひしと伝わってくる……。次の話が気になるけど、ちょっと心の準備が要りそうです。