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◆◆◆◆◆
結局それから一睡もできないで朝を迎えた。
最終ゲームは何だろう。
アリスのガキは“走る“と言っていたが。
それにしても―――。
『明日が、最終ゲームです』
仙田が蘇った後、涙目で振り返ったアリスのことを想う。
あの涙は同情だったのか、それとも同調だったのか。
いずれにしろ、公正公平、沈着冷静であったはずの彼が涙を流したのは興味深い。
感情がある?
人としての感情が――?
彼は何者なのだろう。
消毒用アルコールの匂い。
開閉型の医療用パジャマ。
―――病人?
入院中の病気の少年?
それなら、どうして今、この世とあの世の境目のようなこの場所にいるのだろう。
「待てよ……」
あいつは死神ではないと言った。
ただの案内人だと。
でも案内人のくせに―――。
『だって、見てるだけなんて寂しいじゃないですか。混ぜてくださいよ』
初めのトランプゲームの時、彼はこう言った。
そしてこう続けた。
『大丈夫。勝ちませんから』
“花いちもんめ“でも混ざっていた。
そして“だるまさん転んだ“でも―――。
あいつはもしかして―――。
「ゲームの参加者なのか……?」
祐樹は大きく息を吸い、そして吐いた。
アリスがこのゲームの参加者である可能性。
これは確かめる必要があった。
なぜなら、もし自分がわざと負けた後に、あろうことか尾山がアリスに負けて生き返ったとしたら――。
あの男を生き返らせるわけには行かない。
花崎は昨夜サイドテーブルに置いた警察手帳を握りしめた。
もし二人とも人間界に戻ったとして、あっちでも生き残れるのは一人きりだ。あいつを殺らなきゃこちらが殺される。
それならば――。
ここで……。
この619号室で勝負をつける。
そのためには、アリスがどちらなのかを見極めなければいけない。
次のゲーム。
アリスを負けさせる。
祐樹は警察手帳を胸ポケットに入れた。
「花崎さん。時間ですよ」
背後でドアが開いた。
祐樹はアリスと、その奥でこちらを睨んでいる尾山を睨んだ。
◆◆◆◆◆
「さて、お二人の間にはいろんな確執があるとは思いますが、今はしばし、ゲームに集中して下さい」
アリスはテーブルを挟んで睨み合う二人を楽しむように交互に見つめた。
「ここでの攻撃や殺し合いはノーカンです。多少の痛みや苦しさはあるものの、もともとない命を落とすことはできないでしょう」
アリスはクククと笑いながらテーブルの上に一枚の紙を広げた。
「―――これは?」
尾山が視線をアリスに移す。
「見てわかりませんか?」
アリスが大きな目で見つめ返した。
「平面図……?」