玲子姉さんは死んだ。二十年前、彼女は須藤幸喜との壮絶な戦闘に勝利した。その戦いの後、あの人は満身創痍のまま、星散病という奇病に侵されて命を散らした。あの戦いは俺たちが育ったあの都市を守ってくれた。あの人は、まさにあの都市のヒーローだったと言えるだろう。
そして今、俺たち三兄弟がその後を継ぎ、奇病に悩む人たちを救っている。
これは奇病と戦う俺たち三兄弟の物語。
「ヒロトくん、アキラくん、コウタくん、朝ですよ!」
眠たい目をこすりながら、ぼんやりと起き上がる。ここは孤児院。親を失った子供たちが集まる場所。夜の眠りから目を覚ますたびに、どこか寂しさを感じるけれど、それでも毎朝こうして目覚められることが、少しだけ救いだった。
「おはようございます、先生。」
先生はいつも優しい笑顔で、俺たちを起こしてくれる。顔を見れば、いつも安心する。朝ご飯を作ってくれて、学校に送り出してくれる。そんなあたたかい手助けが、俺たちを支えてくれている。
「あ、アキラ。また涙出てるぞ。」
「え、ほんとだ?」
「おやおや。それもこちらの箱に入れておきましょうね。」
アキラの枕に落ちていたピンク色の宝石。それは、彼の涙が変わった証。宝石のようにきらきらと輝くその涙を見つけた先生は、やさしく微笑みながら箱に入れてくれた。
箱の中には、色とりどりの宝石がきれいに並んでいた。その光景を見ると、少しだけアキラが特別な存在であることを感じる。宝石の涙を流す彼は、どこか神秘的で、痛みを伴っているけれど、決して誰にも隠さず、みんなに優しく接してくれる。
「ヒロトも薔薇が咲いてるぞ!」
「うげー、これ痛いんだよー。」
ヒロトの体に巻き付く薔薇の花。花びらは繊細で、茎には鋭いトゲが刺さっている。ヒロトはいつもこれに悩まされているけれど、何とか平然と過ごしているように見える。けれど、俺たちにはわかる。痛いんだって。
彼の痛みを取り除くため、俺は即座に茎を引き抜いた。無理にでもそれを取ってしまわなければ、ヒロトは痛みに耐え続けるしかないからだ。
「ありがとな、コウタ!」
俺達はその後、急いでパジャマから洋服に着替えた。今日は学校に行かなければならないから、忙しい時間が待っている。
ヒロトも、アキラも、俺も、それぞれにおかしな病気を持っている。ヒロトは体中に薔薇が咲く病気、アキラは涙が宝石に変わる病気、そして俺、コウタは血が結晶に変わる病気だ。どれも痛みを伴い、俺たちの体に異常をきたしている。でも、それが私たちの現実だ。
「よっしゃコウタ!早く朝飯食って学校行こうぜ!」
アキラが元気に言った。彼の声にはいつもエネルギーが溢れていて、時にはその元気が私たちを引っ張っていく。俺はうなずき、ホールに向かう。
朝食はトーストにいちごジャム、レタスサラダにコーンスープだ。親のところにいた頃は、こんな食事を食べることなんて考えられなかった。
「よし、コウタ!遅刻するから早く行こうぜ!」
「うん。」
アキラに急かされながらも、私は全部の食事を平らげ、立ち上がる。
「ごちそうさま。」と、先生にお礼を言ってから、ランドセルを取り、足早に孤児院を出る。
外は少し寒かったけれど、それでも学校に向かう足取りは軽い。俺たち三兄弟は、それぞれにおかしな病気を抱えているけれど、それを乗り越えるために、一緒に頑張っていくんだ。どんな困難が待ち受けていても、少なくとも、三人でなら乗り越えられる気がしていた。
孤児院にいて良いことは、こうして普通の食事がとれること。暖かい布団があり、着るものはボロボロでないこと、そしてお風呂に入れること。それらは当たり前のようで、実はとても大切なことだった。でも、悪いこともある。
「やーい、親なし!」
「きもちわるい花とか涙とか流しやがって!」
いつものように、通学路で声をかけられる。毎朝、必ず誰かが、俺たちを侮辱してくる。あの言葉が耳に入るたびに、心がざわつく。ヒロトやアキラに向けられた言葉は特に辛い。俺がどれだけ「どうでもいい」と思っても、二人のことをバカにされると、どうしても我慢できなくなる。
「まーたあいつらかよ!」
「コウタ、気にしなくていいんだからな!」
アキラが心配して言ってくれるけど、俺はうなずくことしかできない。だって、気にしないで済むはずがないんだ。自分の病気や、孤児院にいることは仕方ないことだと分かっているけれど、それでも周りの目が痛い。
でも、それよりも許せないのは、ヒロトやアキラがいじめられていることだ。二人は俺にとって兄弟で、どんなに周りの人たちが自分たちを異質だと思おうと、そんなことは関係ない。俺たちは一緒に過ごしてきた仲間だから、絶対に誰にも傷つけさせたくなかった。
「行こう、ヒロト、アキラ」
俺は二人の手を強く引っ張った。少しでもあいつらから遠ざかりたかった。せめて今は、俺が二人を守らなければと思ったからだ。
その時だった。
すぐ横に、突然車が止まった。何かがおかしい、そう感じた瞬間、世界が歪んだ。その後のことは、何も覚えていない。
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