痛い。痛い。痛い。イタイ。イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイやける。さける。はがれる。くだける。はじける。
──痛い。
──痛くない?
──違う違う違うチガウ違う
頭の中で何かが暴れている。俺なのか?俺じゃない。俺だろ?違う。俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
叫ぶ。口が裂ける。喉が焼ける。声が出ている?出ていない?わからないわからないわからない
目の前が揺れる。光が走る。赤い。青い。黒い。白い。紫。オレンジ?
おかしい。なにこれ。なにこれ。なにこれ。
笑ってる。誰かが笑ってる。
「アハハハハハハハハハ!!!!!!」
──誰だ。
──俺だ。
──俺じゃない。
──俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない
イタイイタイイタイイタイいたいイタイイタイイタイイタイイタイ痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
ダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカ
助けて。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
喉の奥が焼ける。胃が反転する。手足がちぎれる。皮膚が剥がれる。
どうして俺がこんな目に。
いや、最初から決まっていたのか。
こうなることは初めから。
あの親の元に生まれてきた時から。
俺はあの親の元に生まれた瞬間から、何かが狂っていた。
生まれてすぐ、変な注射を打たれた。何のためだったのか、今はもう覚えていない。ただ、毎日暴れて苦しんで、家の中の物を壊し続けた。三歳の時だ。そのころには、すでに俺の周りには暴力しかなかった。殴られて、蹴られて。あの親の手で。それが当たり前だと思っていた。
孤児院に入れられたのは、それからだ。親が警察に捕まった。近所の人が我慢できず、警察に通報したんだ。俺にはどうでもいいことだが、あの瞬間に、何もかもが変わった。
孤児院では、暴力を受けることはなかった。ただ、暴れるたびに、注射を打たれた。それだけだった。最初は暴れて、そして注射を打たれることに恐れを抱いた。やがて、幼い脳みそがそれを理解し、計算し始めた。暴れることをやめれば、痛みが少しでも和らぐんだと。
でも、そんな日常も、あっけなく壊された。
また、毎日殴られ、蹴られ、何度も何度も血を流した。どれだけ流したか、もうわからない。全身は、真っ赤な結晶で覆われ、痛みが全身に広がった。ここで、俺は死ぬのだろうか。
「コウタ!」
──声が聞こえた。
耳の奥にこびりついた痛みの波にかき消されそうなほど、遠くて、頼りない声。誰の声だ?頭が働かない。思考が泥のように鈍く、体は鉛の塊みたいに動かない。
ゆっくりと顔を上げる。
視界がぼやけている。目にこびりついた血と汗のせいで、輪郭がにじむ。けれど、そこにいるのがヒロトとアキラだと理解するのに時間はかからなかった。二人の後ろに、見知らぬ男と女が立っている。
(……誰だ?)
思考がまとまらない。痛みのせいか、意識が遠のいているのか。そんな俺の疑問をかき消すように、怒声が飛んだ。
「あ、何逃げてんだてめぇらっ!」
びくっと二人の肩が跳ねる。
男の手には拳銃が握られていた。黒光りする鉄の塊が俺たちに向けられる。その瞬間、全身が氷のように固まった。逃げろと叫びたいのに──そう思うのに、体は動かない。喉が張りついたように乾ききって、声すら出ない。
(逃げろ──)
シュッ──
空気を裂く音がした。目の前にいた男の体が、一瞬で、斜めに割れた。
「……え?」
理解が追いつかない。
男はのけぞるようにして、そのまま膝をついた。斬られた箇所から、真っ赤な血が滝のように流れ出す。ドクン、ドクン、と肉が脈打つ音すら聞こえてきそうだった。
「ぐえええええっ!!」
男の絶叫が響く。
今のは……日本刀か?誰が斬った?そう思って視線を動かすと、見知らぬ男が無造作に刀を構えていた。刀身にはべったりと鮮血がこびりついている。
「まだ一匹残っていたのか」
低く、淡々とした声が響いた。
一匹?まるで、”人間” じゃないみたいな言い方だった。
「お見事。」
隣の女がそう呟く。男は笑いながら刀を払った。血飛沫が地面に散る。
その間にも、ヒロトとアキラが俺に駆け寄る。
冷えた手が鎖を外し、俺の体を支えた。
「大丈夫か?」
その言葉に、俺はようやく自分の状態を意識した。
(……大丈夫?)
いや、そんなはずがない。
体中が痛い。焼けるような痛みが走る。喉はからからで、肺はまともに空気を吸えていない。力が入らない。全身が血と汗で濡れている。指先は震えていて、足は地面に根が生えたみたいに動かせなかった。
なのに──俺は、生きている。
殺されなかった。まだ、息ができる。
……それが、現実味を持たなかった。
「この結晶は一体……」
女が俺の体に触れ、俺の体に生えた結晶をまじまじと見つめる。
「これも奇病の一つなんじゃない?」
こいつらは俺たちのおかしな病気について知らないのか。それはとても都合がいい。
「三人とも早く車に乗って。病院へ行こう。」
「……あなたも、俺たちを傷つけるの?」
ヒロトは女にそう聞いた。
「ひどいことはしないよ。病院に行って君たちの傷を見てもらわなきゃ。あとその病気もね。」
女は男と共に俺たちを外へ運び出し車に乗せると急速でどこかへ向かった。もうどこへだっていい。この地獄が終わるならどこでも。
そう思っていたら着いた場所は病院だった。
「え……?」
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