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「吉良の部屋に出入りしてた女…そんな格好させられてた子がいたわね」

「…え」



元カノってこと…?

初めて耳にする吉良の過去の女性関係…それを香里奈さんの口から聞くとは思わなかった。



「…なによ?もしかしてあなた…吉良の過去を、何も知らないの?」



つい見あげてしまえば、その通りだと言っているようなもの。


すると…香里奈さんは意地の悪い笑顔になって、とても楽しそうに言った。



「あなたみたいな子供じゃ想像もできないでしょうね…吉良の過去を引き受ける覚悟、本当にあるの?」



どういう意味ですか?…と聞こうとして、そこに吉良がやって来た。



「モネ…ずいぶん遅いから…」


「あ…ごめん」



私が吉良の方へ歩いた途端、香里奈さんはその場を離れていく。


さっきの…いったいどういう意味だったんだろう…




部屋で2人になると、吉良は改めて私の姿を見て、なんだか嬉しそう。



「…ど、どうかな?このパジャマ」



ベッドに腰掛けて、立ったままの私をクルクル回してみせた。



「ちゃんと尻尾までついてる…すごい可愛いな。モネ以上に似合う子いないだろ」



目を細めて、私に猫耳つきフードを被せてくる。

ご機嫌な様子だったから、私は吉良に聞いてみることにした。



「ま、前の彼女より…私のほうが似合う?」



たった今、香里奈さんに聞いたことを言葉にしてみれば、吉良はすぐには何も言わない。


吉良ほどの人に恋人がいなかったなんてあるはずないのはわかってるのに…どうして自分の過去の恋愛を頑なに隠すんだろう。



「さっき…香里奈さんが、これと似たような格好をした女の子が、昔、吉良の部屋に出入りしてたって…」



吉良はふぅ…っとため息をつき、ドアの方を軽く睨むように見た。


それは香里奈さんが余計なことを言ったことに苛立ったからだとわかる。



「吉良は絶対モテてきただろうし、私は平気だよ?元カノの話とかされても」



正確には平気じゃないけど…妙に何も言わなすぎる吉良の方が、ちょっと怖い気がする。


すると吉良は、私をそのまま抱きしめてきた。



「確かに、昔仲良くしてた女の子に、こういう格好をさせたことはある」


「…うん」


「だから…好きか嫌いかで言ったら、猫耳のモコモコした女の子の姿は…好きなんだと思う」


「うん…」


「でも、こんなに可愛くて、愛しいと思うのは、モネが初めて」


「…」



仲良くしてた女の子…

元カノ、とは言わないんだな。



「仲良くしてた女の子って元カノで…恋人だったってことでしょ?」


「…いや、恋人は、モネが初めて」


「…え?」



聞き返した私からの視線を咄嗟に避ける吉良。

…やっぱり、聞かれたくないのかな。


どうして、仲良くしてたのに恋人に発展しなかったんだろう…と、頭の片隅で疑問に思いながら。


聞いて辛い思いをさせるなら、やっぱり私は何も知らなくていいや…と思い直す。


そしてベッドに入って…その日は声を押し殺して…吉良に抱かれて眠った。


………


翌朝の吉良はいつも通りの様子で安心して、会社に送り出した。


香里奈さんはまだ起きてこないので、洗濯も掃除も少し待ったけど…お昼近くになってさすがに洗濯機を回すことにする。


「それにしても起きてこない…まさか、部屋で何かあったんじゃ…」


若い人だって急に具合が悪くなったり、重篤な状態になることはある。


そう思ったら少し心配になって、気づいたらドアの前に立っていた。


ドアをノックしようとして、ガチャ…と突然開いて驚いた。


「…なによ。立ち聞きの趣味でもあるの?」


相変わらず冷たい言い方…


「いえ…あの、昼食を作ろうと思いまして…香里奈さんは何を…」


「…いらない!あんなまずいおにぎりは二度とごめんだわ」


何を、食べたいですか?と聞こうとしたけど、途中でばっさり言われてしまう…。


そしてそのまま玄関を出て行ってしまったので、もしや自宅に帰ってくれたんじゃないかと淡い期待を寄せてしまった。


でも、開いたドアの向こうに広がる荷物の散乱具合からそうではないとわかり…私は閉められたカーテンを開けに部屋に入った。



「…あ…れ?これって…」



振り返った拍子に、床に置かれた1枚の写真が目に入って、そっと手にとってみる。


整った顔立ちの中学生らしい男子が、仲間とおぼしき数人と、校門の前に座っている。


1人は吉良だとすぐにわかった。


他の男子も、カッコいい子ばかり…じっと見てて閃いた。



「…これ、憂さんたちだ…」



…ということは、ここが吉良とその仲間たちが卒業した中学校。


吉良が通っていたとなれば、地方の中学校でも、私にとって特別な場所になる。


まさかこの写真を下さいとは言えないので、思いついて携帯のカメラで写真を写した。


その時、足音が聞こえたので、私は思わずキッチンへと急いだ。



コンビニで菓子パンを買ってきたらしい香里奈さん。

…私が部屋で写真を見たことはバレていないみたい。


「あの…お味噌汁とか、飲みますか?今から作ろうと思うんですけど…」


「いらない。あんたが作るものなんて信用できない!」


菓子パンだけじゃ栄養不足な気がして声をかけたんだけど…香里奈さんから返ってきたのは冷たいひとこと。


「だいたい、私はパンを食べてるのよ?なのにどうして味噌汁?!…合うわけないじゃないっ!」


さらに冷たく言い返されて、確かにその通りだと妙に納得した。そして私はまた、1人でおにぎりを作って昼食を済ませた。


ちなみに、この日の具はツナマヨ…


香里奈さんは昼食がすんでも、リビングのソファに座ったまま、ずっとスマホをいじっている。


私は終わったはずの洗濯物が出されていることに気づいて、もう一度洗濯機を回した。


それは香里奈さんが出したもので、自分でやったほうがいいんじゃないかと少し放置していたもの。


だって…ちょっと見たら、かなり派手な下着が出ていたから…。

私なら恥ずかしいから自分で洗うと思ったから触らないでおいた。


でも香里奈さんに洗濯機を回す気はないとわかって、私が回した…


夜までにギリギリ乾く時間。

吉良に…こんな派手な下着を見せたくない…。




『えーっ!何やってんのよモモ!』


大学時代の親友霧子から、久しぶりに会おうとメッセージが来た。


社会人になる前にもう一度会おうということになり、返信に困りながら現状を伝えると、驚きのひとことが送信されてきたのだ。


吉良の血の繋がらない妹が来ていること、つい…その世話を焼いてしまうこと。


それに対しての『何やってんの…』に、自分でも大きくうなずいてしまう。



『じゃあさ、こっちから新居にお邪魔していい?錦之助も誘って!』


あぁ…そうしてくれたらどれほど心安らぐだろう…



『うん!吉良にも聞いてみる!』


一旦やり取りを終えて、私は少しだけ明るい気持ちを取り戻しながら、夕食の買い物に出かけた。


不機嫌な彼氏の秘密に涙する

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コメント

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霧子ちゃん、久々の登場。 ガツンと言ってやってくれないかな。 吉良ティンの過去がこれから分かっていくのかな〜

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