テラーノベル
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「あれ、涼ちゃんは?」
縁側に腰をかけて何となく外を眺めていると、後ろから若井に声をかけられた。
MVの撮影も順調に進み、今は一段落ついたところで。
「スタッフに連れてかれた」
「何でだろ、撮り直しでもあるのかな」
手に持っていたカメラを机の上に置いて、
俺の隣に腰を下ろす。
「撮って来たんだ、写真」
「ちょっとだけね。
帰りまでに時間あればもう少し撮ろうかな」
「いーじゃん。後で見せて」
汗を拭いながら、響く蝉の声に改めて夏を実感する。
「…大分暑くなってきたね〜」
日差しに目を細めながら、若井が手で顔を仰ぐ。
「ほんとだよ。これ以上気温上がったら
耐えらんないかも。」
畳に倒れ込むようにして、天井を見上げた。
頬を撫でるように通り抜ける柔らかい風が
心地良い。
「なんか、懐かしい気分になるね」
仰向けになったまま、そう呟いた若井の横顔を見つめる。
空を見上げる柔らかい表情が、酷く綺麗で。
「…色々思い出すよね」
言葉を返しながら、若井から目が離せずにいる。
吹いた風で小さく揺れる髪。
夏の暑さで火照った頬。
「高校生の時、今ぐらいの時期に元貴の部屋でギター練習してたのとか」
「お前アイス食べてただけじゃん」
「ちょっと。ちゃんとやってたよ。笑」
───思えば、あの夏も目が離せなかった。
弦を抑える細い指が動く度に、目で追ってしまう程。
髪を耳にかける仕草にさえ、心を掻き乱されるようで。
……ずっと、伝えられてない。
あの夏に伝えられてたら良かったのかな。
「何でもない」なんて言葉で誤魔化した、あの夏に。
「……若井」
無意識に体を起こし、名前を呼んでいた事に気づいて我に返る。
「ん?」
優しく見つめるその瞳に、心臓が大きく音を立てた。
「…………ごめん。何でもない」
このまま隣に居たら、痛い程に煩く
鳴り続ける鼓動を聞かれてしまいそうで。
「…ちょっと外出てくる」
立ち上がろうと手をついた瞬間、若井に袖を引かれた。
「今年も言ってくれないの」
今年も、って。
「……………覚えてたの?」
予想外の一言に、頬が熱くなっていくのが
分かる。
「何でもないって顔してないよ。
10年前も、今も。」
そう言って笑う若井がたまらなく愛おしい。
「……っ、もう……ほんと、敵わないな」
小さく息を吐いて抱き締めると、背中に腕を回して受け入れてくれて。
今度は、誤魔化さないから。
10年前、胸につかえて隠れた言葉を紡ぐ。
「…………好き。大好きだよ、若井」
夏の影イメージです〜
他の楽曲からも何か書いてみたいなぁと思ってるので良ければまた見てやってください(めり込み土下座)
コメント
2件
キャ~~~~~~~~😭😭😭😭🫶🏻🫶🏻🫶🏻大人なもとぱにキュンキュンする😭😭😭😭🫶🏻🫶🏻🫶🏻🫶🏻