テラーノベル
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スタートーー‼️
――午前零時十五分。
第七埠頭。
古びた航海管理室には、まだ二人が残っていた。
美月とコナン。
机の上には、五十年前の航海日誌。
そして、美月が撮影した一枚の写真。
そこに写っていたのは――
夜の海に浮かぶアルカディア号。
甲板に立つ謎の人物。
そして、その人物が持つ青い宝石。
蒼月の涙。
「……やっぱり、何度見ても変だ」
コナンが写真を拡大する。
「何が?」
「船が消えたのは五十年前。なのに、写真には現在の海の状態が写ってる」
「つまり……」
「この船が本物なのか、それとも何かの仕掛けなのか。まだ分からない」
美月は黙って写真を見つめた。
すると、あることに気づく。
「コナン君」
「ん?」
「ここ……」
美月が写真の右下を指差す。
そこには、小さな時計が写っていた。
「時計?」
「うん。船の壁に掛かってる」
針は――
9時17分を示していた。
「……9時17分」
コナンの表情が変わる。
「航海日誌に書いてあった時間と同じだ」
美月が日誌を開く。
午後9時17分。船の周囲に青い光を確認。
「偶然じゃない……」
コナンは考え込む。
「アルカディア号が消えた直前の時間だ」
「じゃあ、あの写真は……」
「五十年前の最後の瞬間を再現してるのかもしれない」
美月は写真を握りしめた。
そのとき――
航海日誌の間から、一枚の紙が落ちた。
「……?」
美月が拾う。
それは古い船内図だった。
だが、普通の設計図とは違う。
赤い線が一本だけ引かれている。
「これは?」
コナンが覗き込む。
赤い線は船の中央部から――
船底へ続いていた。
「ここに何かある」
「でも、アルカディア号は沈んだんじゃ……」
「だからこそ、調べる価値がある」
コナンは船内図の端を見る。
そこには小さな文字が書かれていた。
『第七保管室』
「第七……」
美月が呟く。
「また『7』だ」
「第七埠頭。『07』。そして第七保管室……」
コナンは腕を組む。
「全部つながってる可能性が高い」
⸻
◆
翌朝。
月影アイランド・海洋歴史資料館。
美月たちは、前日に見つけた航海日誌について調べるため、資料館を訪れていた。
「ここならアルカディア号の資料があるはずじゃ」
阿笠博士が言う。
「博士、朝から元気だね」
コナンが笑う。
「こういう古い資料を調べるのは好きなんじゃよ」
蘭と小五郎も一緒だった。
美月は資料館の展示を見回す。
壁には五十年前の新聞記事が並んでいる。
その中央には――
アルカディア号の大きな写真。
説明文にはこう書かれていた。
『豪華客船アルカディア号』
乗員・乗客総数――312名。
五十年前、東京湾沖を航行中に消息を絶つ。
その後、船体・乗員ともに発見されていない。
「312人……」
美月は呟く。
それだけの人が乗っていた。
それなのに、誰一人として発見されていない。
不自然だった。
「ねえ、美月ちゃん」
蘭が別の展示を指差す。
「こっちに船長さんの写真があるよ」
「本当?」
二人で近づく。
そこには、アルカディア号の船長を務めていた男性の写真が展示されていた。
その横には、当時の乗組員たち。
機関士。
航海士。
無線通信士。
そして――
「……この人」
美月が足を止める。
「どうした?」
コナンが隣に来る。
美月が指差したのは、一人の女性だった。
アルカディア号の記録写真に写っている若い女性。
首からカメラを下げている。
「この人……」
「写真家かな?」
蘭が言う。
説明文には、
『記録係・白石澪』
と書かれていた。
「船内で起きた出来事を撮影していた人物らしい」
阿笠博士が説明文を読む。
「最後の航海中も、船内を撮影していたそうじゃ」
コナンの目が鋭くなる。
「……最後の写真を撮ったのは、この人かもしれない」
「じゃあ、この人が持っていたカメラに……」
美月が呟く。
その瞬間。
展示ケースの奥に、一枚の写真があることに気づいた。
「これ……」
美月が近づく。
写真には、アルカディア号の甲板。
そこに白石澪が立っている。
そして――
彼女の隣に、一人の少女がいた。
「……え?」
美月が固まる。
コナンも写真を見る。
「この子……」
写真に写っていた少女。
年齢は十歳前後。
長い髪。
穏やかな表情。
首には、小さなペンダント。
そして――
その顔立ちが、美月とよく似ていた。
「……私?」
美月が思わず呟く。
「いや、美月じゃない」
コナンがすぐに答える。
「写真は五十年前のものだからな」
「分かってる……」
美月は写真を見つめる。
「でも……どうしてこんなに似てるんだろう」
その少女のペンダントには――
三日月と涙の紋章。
「蒼月の涙……?」
美月の声が震える。
コナンは展示ケースの説明文を読む。
しかし――
少女については何も書かれていない。
「名前がない」
「え?」
「乗客名簿にも、この子の名前が載ってない可能性がある」
コナンが言う。
「じゃあ、この子は一体……?」
そのとき。
「その少女のことを知りたいのかね?」
背後から声がした。
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――
昨日、美月に封筒を渡した白髪の男性だった。
「あなた……!」
美月が驚く。
男性は静かに近づいてくる。
「やはり、ここへ来たか」
「どうして私たちが来ると?」
コナンが警戒する。
男性は答えない。
代わりに、展示ケースの写真を見る。
「その少女は、アルカディア号の最後の航海で重要な役割を果たした」
「何をしたんですか?」
美月が尋ねる。
男性は少し黙ったあと――
「蒼月の涙を守った」
と答えた。
「……!」
「そして、最後の写真を持っていた」
コナンが尋ねる。
「最後の写真はどこにある?」
男性の表情が変わる。
「……それを知っている者は、もうほとんどいない」
「でも、あなたは知ってるんだろ?」
コナンが追及する。
男性はコナンをじっと見つめる。
「君は……よく見ているな」
「探偵だからね」
「……なるほど」
男性は小さく笑った。
「では、一つだけ教えよう」
男性は展示ケースを指差した。
「アルカディア号は――」
そこで言葉を止める。
「沈んでいない」
「!」
美月たちは息を呑んだ。
「じゃあ、どこに……?」
男性は答えない。
ただ一言だけ告げる。
「海の底ではなく、月の影に隠された場所だ。」
「月の影……?」
美月が聞き返す。
しかし――
男性はもう歩き始めていた。
「待って!」
美月が追いかける。
だが、展示室を出たところで――
男性の姿は消えていた。
「……またいなくなった」
美月が呆然とする。
コナンは床を見る。
そこには、一枚の小さな紙が落ちていた。
拾い上げる。
紙には――
「07:17」
とだけ書かれている。
「……7時17分?」
美月が首を傾げる。
コナンは時計を見る。
現在時刻は――
午前7時05分。
「あと12分……」
コナンが呟く。
「何が起こるんだろう」
美月は不安そうに紙を見る。
⸻
◆
午前7時17分。
月影アイランド・展望デッキ。
美月とコナンは海を見つめていた。
朝日が昇り始めている。
「何も起きないね」
美月が言った、その瞬間。
――ピッ。
コナンの腕時計が鳴った。
「……?」
同時に、美月のカメラも突然起動する。
「え?」
画面には、昨日撮影した写真が表示されていた。
しかし――
昨日はなかったはずの一枚が追加されている。
「これ……いつ撮ったの?」
美月が画面を開く。
写真には――
五十年前のアルカディア号。
そして、甲板に立つ少女。
少女の隣には白石澪。
だが、その少女が手にしていたものは――
美月が今持っているカメラと、まったく同じ形の古いカメラだった。
「……そんな」
美月が息を呑む。
そして写真の裏側には、いつの間にか文字が浮かんでいた。
『最後の写真は、未来へ託された。』
その下には――
「月影アイランド地下・第七保管室」
という文字。
コナンが顔を上げる。
「……行こう」
「うん」
美月はカメラを握りしめる。
五十年前に消えたアルカディア号。
謎の少女。
蒼月の涙。
そして、未来へ託された最後の写真。
すべてが一つにつながり始めていた。
だが――
二人はまだ知らなかった。
その地下に眠っているのが、
アルカディア号が消えた夜の真実そのものだということを。
そして。
その場所へ向かう二人を――
遠くから一人の人物が見つめていた。
黒いコート。
その手には、昨日盗まれた写真。
人物は静かに呟く。
「……見つけたか」
月明かりの残る空を見上げる。
「ならば、こちらも動くとしよう」
その手の中で――
蒼月の涙が青く輝いた。
――第4章・終――
次章予告
第5章「地下に眠る第七保管室」
月影アイランドの地下へ向かった美月とコナン。
そこには五十年間封印されていた、アルカディア号の本当の航海記録が眠っていた。
しかし、第七保管室の扉を開いた瞬間――
美月のカメラに、存在しないはずの五十年前の映像が映し出される。
そして、その映像の中で少女が口にした言葉とは――。
コメント
3件
いぬ🐶さん、第4章読了です! 「07:17」の紙、まさかの伏線回収の始まりって感じで震えた……。未来に託された写真って、もうロマンしかないっすね。美月と瓜羽な少女が五十年前にいたのも気になりすぎるし、白髪の男性の正体もやばい。黒コートの人の「見つけたか」も最高に不気味で、続きが気になって夜しか眠れないわ。地下の第七保管室、楽しみにしてます🔥
る あ 。
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鬼灯 哀雷⚔️🥀
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