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#ブラフラ
なみゃ
20
skbn
11
て ぃ あ ら 。
2,081
8
病室を出て、他の患者の回診もいつもと変わりなく行うことができた。エレベーターに乗り込んで、背中を壁に預けながら考えた。
この仕事を始めてから実感したことがあるならば、孤独や絶望に名前があるのはきっと、誰かがそれを生き延びた証拠なのだ。それでもなお、まだ名前のついてない暗闇が、この世界のありとあらゆる場所に確かに残っている。とても悲しいほど沢山。
その証拠に自分の担当している患者のカルテだけでもずっしりと重いのに、この重さ以上に彼らの抱えているものは重い。
皮肉なものだ。人間は生まれながらにして感情という名の痛みを持っている。その感情(いたみ)は人間に多くのものを与えるが、ふとした時にはその感情(いたみ)は心を蝕み、飲み込んでしまう。
感情を表現できるのに、それが胸の奥に落ちる瞬間をまだ知らないというのは、どれほど危ういことか。私たちはいつしか、それを知りながら歩いている。
「はぁ…。」
ふと、ため息混じりに抱えていたカルテに視線を落とす。
―番下のカルテを見る。
―患者名:三浦奈月(みうらなつき)
―病名:うつ病(中等度)
―病状:気分の落ち込み、睡眠リズムの乱れ、“朔”に心をひらいている
本来ならばこの患者は私が担当するものだが、三浦さんは私ではなく朔に心を開いている。
「まぁ…ある意味俺が担当しているからいいか。」
そう思いながら完璧に回診を終えた私は、医局の自分の席に腰を下ろす。
―ここで戻されるなら…。
そう思い私は眼鏡と髪ゴムを片付け、関係者カードを朔に変えて瞼を下ろした。
瞼を下ろせば暗闇に包まれ、あいつのいる“思考の森”に来た。
―早く見つけ出して現実に戻さなければいけないのに…。
湿った森の地面、朝露なのか草木がキラキラと輝いていて儚げに地面へと落ちていた。
「冷たっ…。」
眼の前に広がる木のどこかから雫が私の頬に落ち、私の頬を伝う。それを拭いながらあいつを探す。あいつはゆっくりとあたりを見渡していた。
「あのバカ…。」
私は近づいて、そいつの背中を強く蹴飛ばした。
「ほら、行って来い!」
「うわっ…!」
私に蹴られたそいつは地面に空いた大穴に落ち、闇の中に姿を消した。
―これでしばらくは寝ていられるな。
そう安堵しつつ近くにある太い木の下に腰掛けて眠った。
コメント
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寺島あおいです、読ませていただきました🌷 「孤独や絶望に名前があるのは、誰かがそれを生き延びた証拠」——この一文、すごく心に残りました。まだ名前のついていない暗闇がある、という感覚、とてもよくわかります。医師としての冷静さと、その内側で“思考の森”にいる自分との距離感、そして最後に蹴り飛ばす行動の切実さ…。感情の痛みを抱えながらも、ちゃんと前に進もうとする強さのようなものを感じました。続きが気になります。