テラーノベル
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・紫桃
・R15
📢「あー…いってぇ、」
寝相で乱れた前髪を適当にかき揚げながら、水で濡らして適当に歯磨き粉をつけた歯ブラシを口に突っ込んだとき、うなじあたりを抑えてうだうだ吃っているいるまと鏡越しに目が合う。
🌸「……なにしてんの」
📢「キョトン顔してんなよ。お前がつけた跡だろうが」
いるまが抑えている手を離すと、うなじ辺りには赤紫色の歯型のようなものが薔薇のように幾つも咲いているのが見えた。
よくよく見ると、その抑える腕にも薄く引っ掻き傷のようなものが浮かんでいる。
🌸「……ごめん」
寝起きで特に何も考えて無かったけれど、その跡とやらを見ていると昨日の夜の記憶が徐々に浮かび上がってくる。
確か、何度か止まってといるまにお願いしたが言うことを聞いてくれず、腹いせにこいつの身体中を噛んだり引っ掻いたりしたっけ。
📢「謝んなよ。余裕のなさそうなお前見れて俺にとっちゃプラスだし?」
🌸「いや絶対にお前が悪いけどな」
痛いと言いながら肌を摩っているけど、でもどこかうれしそうに目を細めている。
よくわかんねぇやつ。
📢「いや、お前も悪いぞ?」
📢「噛むにしても限度があるだろうが」
🌸「だから、俺は甘噛みのつもりなんだってば!」
あのな、と言わんばかりにいるまは露骨に顔を顰めてみせた。
小さくため息を零して、俺の胸元あたりに人差し指を突きつけてくる。
📢「甘噛みも限度があるって前話しただろ。」
🌸「うっ……」
いるまが言うには、自身が甘噛みだという体で噛んでも加減が過ぎると受け取り側は本気噛みだと思うらしい。
どうやら、甘噛みの限度を知るには実際に自分を甘噛みしてもらって加減を覚える必要があるだとか。
📢「…しゃーねぇな、舌だせ、舌。」
🌸「ちょ、は?なんっ…」
📢「俺が正しい甘噛みを教えてやる」
いるまは俺が咥えていた歯ブラシを抜いて勝手にコップに突っ込んだ。
刹那、肩を軽く掴まれて急に顔をずいっと近付けてきやがる。
🌸「なんで舌が…っ」
📢「舌って神経が敏感だから痛みを汲み取りやすいらしいぞ」
🌸「尚更嫌だわ!!」
こいつに噛まれる事自体まだ俺は条件を呑んでないと言うのに、ましてや痛みを覚えやすい舌を噛むとか。
こういうのは同じ場所に噛んで教えるとか、それこそ言葉で教えるもんじゃないのか。
📢「…っおい、口閉じんな」
🌸「………っ、」
どうにかして甘噛みを覚えさせたいいるま対、絶対に口を開けない俺。
長い冷戦になりそうだと察したのか、いるまは善からぬことを考えるときの悪い笑みを浮かべた。
📢「…口開けてくれたら金やる。」
🌸「え、まじ!?何円くれっ…」
視界が急にぱっと暗くなり、舌に柔らくて熱い感触が。
金に目が眩んでしまってつい口を開けてしまったと察したときにはもう遅かった。
🌸「っあぇ、……/」
📢「…っ、……」
一度捕まえたら逃がさないというようにいるまは俺の舌を捕まえた。
まるで、目待ちに待った獲物が目の前を飛び交った瞬間に喰らいつくハイエナのように、お構い無しに自身の舌を滑らせてくる。
🌸「っは、ん…っう、…/♡」
🌸「ん、む…っ、…♡」
水の音を立てながら暴れる舌が激しく絡みついて、歯列をいやらしくなぞって、甘い呼吸が重なって、口の端から溢れた唾液が垂れそうになる。
こんなの普段やっているキスと変わらないじゃないか、なんて馬鹿みたいな考えを抱いたときだ。
🌸「っぃ、゙…!?//♡」
📢「は、….♡」
白い火花がバチッと散るような、ビリッとした強い電撃のようなものが舌に流れた。
途端に広がる猛烈の痛みと、満足気ないるまの呼吸で直ぐに噛まれたことを理解した。
🌸「ぁ、え、っ…♡(涙目)」
🌸「っは…ん、…/♡」
本来共存するはずのない痛いと気持ちいという対立関係に有る感覚が、俺の中で何度も交差している。
襲ってくる痛みに怯えているはずなのに、何故か辞めて欲しくは無いとも思う。
🌸「ぃ、うま…っ、…♡」
🌸「っ、〜〜〜…/♡」
ジンジンするこの熱さは、クラクラする頭の混乱は、ビリビリする震える指先は、咬まれたことによってなのか。はたまた、激しいキスによって起こったのか俺は見分けることが出来ないくらいに馬鹿になってしまった。
📢「…っは、……♡」
🌸「ん、っ……/(泣)」
いるまのせいで頭の中が快楽に蝕まれる。
そう、いるまのせいだ。全部。
キスだけで蕩けちゃう頭も、既に疼いてる下腹部もいるまがなにか変なことしたんでしょ。じゃなきゃ有り得ない、こんな感覚俺は知らない。
📢「…ど?やられた強さを返しただけだけど笑」
🌸「っ、…ぁ、え…?/♡」
口が離れ、俺を抑えていた手も離された瞬間、俺は地べたに座り込んだ。
何故か足腰に力が入らない。
目に見えてわかるほど、自分の手が震えていて熱くなっている。
📢「……なに、噛まれんのハマった?笑」
🌸「っちが、く、て…/」
📢「違う?これが?笑」
いるまは今まで見た表情の中で最も悪い顔をしていると言っても過言では無い程に、ニヒルに微笑んだ。
そんな顔をしながらすっとしゃがみこみ、俺の顔にまた近づいてくる。
📢「っ、……♡」
🌸「ぁ、っ…ん、…♡」
🌸「や…め、っ…/♡」
俺の首にグッと歯型を押し付けてくる。
ただそれだけで、まだ噛まれていない。
なのに身体はさっきの記憶を鮮明に受け取ってしまった様で、ドクンと心臓が大きく波打った。
📢「…なんてな。」
📢「俺八重歯あるし、流石に首は痛いだろうから今はしないでおいてやる」
🌸「ぇ、っ……」
思わず情けない声が不意にも漏れる。
そんな俺の口を手で優しく塞いで、いるまはまだ話は終わっていないぞと言いたげに首を横に振った。
📢「…ただし。」
📢「お前が他の男んところ行った暁には身体中この自慢の八重歯で噛みちぎってやっから、覚えとけよ。」
🌸「っ、……!」
『わかった?』と口パクされた際に鋭い八重歯がチラッと覗く。
そのときのいるまの表情が本気で、圧をかけられるがままに首を縦に振った。
📢「……いい子」
にぱっと満足気に笑いかけてくれたいるまは、俺の頭を雑に数回撫で回して立ち上がった。単純だな。
🌸「……へぇ、」
にしても、浮気したらあの八重歯で噛んでくれるんだってさ。
満足気にスタスタと部屋から出ていくいるまの小さな背中を見送って、 すぐさまなっちゃんの連絡先に飛んだことはまだナイショ。
今から会える?と端的な七文字を打ち込んで、俺は直ぐにスマホを閉じる。
🌸「…おいいるまー!俺のこと置いてくなよ!」
📢「あ?遅いお前が悪い」
俺も同様に立ち上がり、 電気を消しているまを早足で追いかける。
その際に鏡に反射した俺の顔は、これでもかと言うくらいに悪い顔をしていた。
にんまりと上がっている口角をきゅっと締めて、俺はいるまに抱きついた。
コメント
2件
か"わ"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ" 噛まれたいってのいいな