テラーノベル
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昨日投稿できなくてすみませンンンン!!!!!!!!
今日2個投稿するんで許してください(泣)
めちゃくちゃ急いだ書いたんで誤字ってたらすみません
かにのぐみ様、リクエストありがとう!!
いつも貴方様の作品読んで目を潤してます!!!
薄暗い医療室に、規則的な電子音だけが響いている。
窓の外はすっかり夜の帳が下りており、遮光カーテンの隙間から僅かに差し込む月光が、ベッドに横たわる小柄な体を白く照らしていた。
中原中也が目を覚ました時、最初に感じたのは全身を支配する凄絶な倦怠感と、内臓を雑に雑巾絞りにされたような鈍い激痛だった。
「……っ、つ……」
乾いた喉から掠れた声が漏れる。重い熱を孕んだパルスを自覚し、自分がまた「汚濁」を解放したのだと理解した。
ポートマフィアの最高幹部としての任務。敵対組織の急襲。想定以上の戦力。そして、自身の限界を超えた異能の行使。記憶の断片がじわじわと脳裏に蘇る。
だが、それ以上の現実味を帯びて中也の意識を覚醒させたのは、自身の右手を包み込んでいる、ひんやりとした異質な体温だった。
「――目、覚めた?」
鼓膜を揺らした声は、いつもよりずっと低く、そして酷く冷ややかだった。
視線を動かすと、ベッドの脇に置かれた丸椅子に腰掛け、中也の手を両手で包み込むように握りしめている男がいた。
太宰治だ。
普段の軽薄な笑みは微塵もなく、前髪の隙間から覗く暗色の瞳は、昏い感情を湛えて中也をじっと見下ろしている。
「だ、ざぃ……」
「そう、太宰だよ。自分の状況は分かっているかい、中也」
太宰は中也の手を握ったまま、親指の腹で彼女の甲を強くなぞった。痛いほどに強い力だ。まるで、ここに実体があることを無理やりにでも確かめようとしているかのように。
「任務は……敵の、本拠地は……」
「壊滅したよ。君が文字通り、跡形もなく消し飛ばした。実に見事な仕事ぶりだ。……命を削り散らかした甲斐があったね」
嫌味を多分に含んだ声音に、中也は僅かに眉をひそめた。しかし、反論しようにも、体中が軋んでまともに言葉が出てこない。
今回の任務、太宰は別の防衛戦線に出ていたため、中也とは別行動だった。現場に太宰がいない状況での「汚濁」の使用は、本来なら死を意味する。だが、中也が意識を失う直前、あの忌々しくも絶対的な安心感を伴う「人間失格」の光が視界を覆ったのを覚えていた。太宰が、間一髪で間に合ったのだ。
「怒ってる、のかよ……」
中也が視線を逸らしながら呟くと、太宰はふっと、温度のない笑みを漏らした。
「怒っている? まさか。私はとても、とても合理的な話をしているんだよ。君はまた、私が止めに来る確証もないのに汚濁を使った。もし私が一秒でも遅れていたら、今頃君の可愛いお顔は内側から弾け飛んで、ただの肉塊になっていたところだ。それを考えて、私がどんな気持ちになったか、想像できるかい?」
太宰の手の力がさらに強くなる。包帯の巻かれた長い指が、中也の細い指の間に割り込み、強引に指を絡めて恋人繋ぎの形にした。
付き合い始めてからそれなりの月日が経つ。互いが互いにとって唯一無二の存在であると、言葉にせずとも魂のレベルで理解し合っている相思相愛の仲だ。だからこそ、太宰の執着は、中也が女性であるという事実も相まって、時折常軌を逸したレベルにまで膨れ上がる。
「あの状況じゃ、使うしか、なかったんだよ……。部下も大勢、いた。組織の、面子だって……」
「そんなもののために君が死んでいい理由にはならない!」
医療室の静寂を切り裂くような、太宰の鋭い声。
中也は驚いて目を見開いた。太宰が感情を露わにして声を荒げることなど、滅多にない。
太宰はベッドに身を乗り出し、中也の顔のすぐ近くまで迫った。彼の瞳の奥にある、底知れない暗闇と、それ以上に深い「恐怖」の色が、中也の胸を突く。
「部下が死のうが、マフィアの面子が潰れようが、知ったことか! 私の世界にはね、中也、君がいなければ何の意味もないんだ。君がその身を削るたびに、私の心臓がどれだけ削られているか、少しは理解したらどうだい」
「太宰……」
「君はいつもそうだ。私を信頼していると言いながら、いざとなれば自分一人で全てを背負い込んで、無茶をして、ボロボロになって帰ってくる。……素直に『助けて』と、私を呼びさえすればいいものを」
太宰の手が中也の頬へと移動する。ひんやりとした手のひらが、まだ熱を持った中也の頬を包み込み、そのまま親指で彼女の唇を割り入るように愛撫した。
その指先は微かに震えていた。
いつも飄々として、全てを手のひらで転がしているような男が、自分を失うかもしれないという恐怖だけで、ここまで脆くなる。
中也は、自身の胸の奥がきゅっと、切なく疼くのを感じた。
……ったく、本当に過保護で行き過ぎなんだよ、手前は
そう毒づきたいのに、言葉が喉の奥でつかえる。
男勝りな口調で、普段はマフィアの幹部として毅然と振る舞っている中也だが、恋人である太宰の前でだけは、どうしても素直になれない性分だった。「心配をかけて悪かった」とか、「愛しているから死にたくない」とか、そんな殊勝な言葉を口にするのは、あまりにも気恥ずかしくて死にそうになる。
「……別に、死ぬ気は、なかった」
中也は、太宰の胸元を、まだあまり力の入らない手で弱々しく掴んだ。
「手前が、来るって……どっかで、分かってたからだ。だから、使った」
「それはただの、結果論に基づいた甘えだよ」
太宰の顔がさらに近づく。互いの吐息が触れ合うほどの距離。
「そんな不確実なもので、私を試さないでくれ。私は君を、この部屋から一歩も出したくないとさえ思っているんだ。四肢を縛って、私の目の届く場所にだけ置いておけば、君がこんな風に傷つくこともない。……本当に、そうしてしまおうか?」
声音はどこまでも甘く、そして本気だった。
普通の女なら恐怖で引き攣るような監禁の宣言。だが、中也はただ、ふっと小さく鼻で笑った。太宰のこの狂気じみた過干渉が、自分への歪んだ、しかし純然たる愛の裏返しであることを知っているからだ。
「やってみろよ。……そんなことされたら、手前を噛み殺してでも逃げ出して、また汚濁を使ってやる」
「中也」
「だから……そんな顔、すんじゃねぇよ」
中也は顔を僅かに上げ、自分を縛り付けようとする過保護な恋人の唇に、自らそっと触れた。
カサついた唇同士が重なる。ほんの短い、けれど確かな体温の共有。
離れようとした中也の後頭部を、太宰の手が逃がさないようにガッチリと固定した。
「……んっ、……」
今度は、深く、貪るような口づけだった。
太宰の舌が、中也の硬く閉ざされた口内を容易く抉じ開け、蹂躙していく。汚濁の反動で呼吸が苦しいはずなのに、太宰は容赦なく中也の酸素を奪い、己の存在をこれでもかと植え付けていく。
熱い。苦しい。けれど、不思議と痛痛しかった全身の痛みが、太宰の濃厚な愛の重さに塗りつぶされていくようだった。
どれだけ深く貪り合っていただろうか。ようやく太宰が唇を離した時、中也の銀灰色の瞳は潤み、息を荒く切らせていた。
「は、ぁ……手前、病人、相手に……ッ」
「病人が、勝手に無茶をしたお仕置きだよ。これでも手ぬるいくらいだ」
太宰は中也の濡れた唇を指で拭うと、満足げに、けれどやはり執着の消えない目で彼女を見つめた。
「今回の件、首領には私から厳重に抗議しておくよ。中也への任務の割り振りが不適切だってね。しばらくの間、君には私の監視下で療養してもらう」
「はあ!? 俺は幹部だぞ、そんな長期休暇が通るかよ!」
「通らせるさ。マフィアの最重要戦力をこれ以上摩耗させるわけにはいかない、というもっともらしい理由でね。……本当は、私の傍から一秒も離したくないだけだけど」
太宰は中也の体に負担をかけないよう配慮しながら、ベッドに横たわる彼女の体にそっと寄り添うように覆いかぶさった。中也の首筋に顔を埋め、彼女の独特の香りと、生きている証である脈動を確かめるように深く息を吸い込む。
「中也……中也……。私の、可愛い中也」
呪文のように、何度も名前を呼ばれる。
その声に含まれた圧倒的な独占欲に、中也は呆れつつも、自身の左手を太宰の背中に回した。
素直に「寂しかった」とも「怖がらせてごめん」とも言えない。けれど、こうして彼を受け入れることだけが、中也にできる精一杯の愛情表現だった。
「わかったから、もう分かったから……。どこにも行かねぇよ」
「本当かい? 嘘をついたら、本当に部屋に閉じ込めて鎖で繋ぐからね」
「ああ、本当だ。手前を置いて、死んでたまるかってんだよ、クソ太宰」
中也が少し乱暴に、けれど愛おしさを込めて太宰の背中を叩くと、太宰は本日初めて、いつもの悪戯っぽく、けれど心の底から安堵したような笑みを浮かべた。
「うん。約束だよ。君の命は、髪の毛一筋に至るまで私のものなんだから」
過剰なまでの干渉と、素直になれない不器用な応酬。
歪で、けれど誰よりも深く結ばれた二人の夜は、静かに更けていく。太宰に抱きすくめられたまま、中也は心地よい疲労感の中で、今度こそ穏やかな眠りへと落ちていった。
コメント
6件
書いていただき本当にありがとうございます! 上手く甘えられない中也が良い… 夏の穂さん、いつも語彙とか表現が美しすぎません…?
中さんはやっぱりツンデレですよね!太中も歪すぎるぐらいが美しい
歪で不器用ながらの愛情表現が、ほんと2人らしいですよね!!