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どうも。3作目は隈ちゃんメインのお話です。
ヒロインちゃんの紹介です。
丹色 柚月ちゃんです。
いつもと変わらず駄作ですが見ていってくれると嬉しいです。それではどうぞ。
「可哀想に…まだ高校生でしょ?」
「あの子、母親が亡くなったのになんて目をしているの?」
「優しくて綺麗な人だったのに…遺体は酷かったんでしょう?」
「高校生なんてうちじゃ養えないわよ。誰が引き取るの?」
うるさい蝉の鳴き声と一緒に私の耳に入ってくるのは、様々な噂話。お母さんを偲ぶ声。私を哀れむ声。私を腫れ物扱いする声。
本人が近くにいるのによく話せるな、と思う。私が難聴とでも思っているのだろうか。どうせ聞こえないとでも思っているのだろうか。
人の大切な人の葬儀でなんて不謹慎なことを言うのだろう。呼ばなければよかったと、少し後悔した。
2週間前だ。お母さんが死んだという知らせを聞いたのは。
交通事故だった。道路に飛び出した子供を守ろうとして自分自身が犠牲になったらしい。
最後までお母さんはお人好しだ。誰かが困っていたら、自分のことなんで気にせずに助けに行く。そんなお母さんのことが好きだけど、もう少し自分を大切にして欲しいと常日頃思ってた。心配だった。いつか自分を犠牲にしてしまうのでは、と思っていた。
その予感が的中してしまった。
最初に病院から連絡が来た時、何も考えられなくなった。嘘だと、ただ怪我しただけだと思いたかった。けれども、そんな妄想なんて医者からの言葉によって簡単に壊されてしまった。
立っているのがやっとだった。耳に当てたスマホの感触が、全身に纏わりつくジメジメとした空気が、気持ち悪かった。
本来ならば家で、お母さんから「おかえり」と言って貰える、いつもの日常が待っていたはずなのに、その言葉はもう聞くことが出来なくなってしまった。
お母さんの顔や体は事故のせいで酷かった。思わず目を背けてしまうほどには。
お母さんとの何気ない日常が、一瞬にして全部全部壊されてしまった。
一時帰宅したとき、家には哀愁が漂っていた。電気が付いていない、暗い部屋にただ一人。それだけでもまた涙が溢れそうになる。本当に一人ぼっちになったんだという、現実を突きつけられた気がした。
生きる意味を見失った。
食事が喉を通らない日々が続いた。匂いを嗅ぐだけで気持ち悪くなる。日を追う事に自分自身がやつれて行くのを感じていた。いっその事このまま餓死しても良かった。それでお母さんの元に行けるのならば喜んで受けいれた。
けれど現実はそれを許してくれなくて、お母さんの訃報を聞いた母の兄夫婦が私の様子を見に来たのだった。見に来た2人は酷く辛そうな表情をした。それもそうだろう。妹を事故で亡くし、姪も餓死寸前だったのだから。
2人は私を優しく看病してくれた。暖かいスープを作ってくれて、そこでようやく私は久々の食事をとる事が出来た。久々に人の優しさに触れた私はまた泣いてしまった。そんな私を2人は優しく包み込むように抱きしめてくれて、心まで温めてくれた。
2人は何から何まで手伝ってくれた。部屋の掃除や料理の作り置きなど様々な事をやってくれた。申し訳なくて、私も手伝おうとすると、
「柚月ちゃんはまだゆっくりしてていいの。無理に立ち直らなくて大丈夫。柚月ちゃんのペースでね。」
なんて言ってくれた。おかげで私も少しだけ気持ちを整理することが出来た。
それに2人は私1人では出来なかった、葬式についてもいろいろとやってくれた。
そうして今に至る。
私はお母さんの遺影をぼんやりと眺めている。改めて、死んでしまったということを実感する。
そんな時、後ろから声をかけられた。
「柚月ちゃん、ちょっといい?」
声の主は叔母だった。
柚月「ぁ、はい…大丈夫ですよ、」
叔母「本当?それならよかったわ。少し今後のことについて話したくてね。」
柚月「なるほどですね…」
叔母「柚月ちゃんに会わせたい人もいるの。少し移動しましょうか。」
柚月「わかりました」
そんな会話をしながら別室に移動する。するとそこにはガタイのいい男性がいた。
叔母「あら、先に来てたのね」
男性「お袋が呼んだんだろ?」
叔母「そうだったわね」
”お袋”…ってことはこの人は叔母さんの息子なのだろうか。それにしても威圧感が凄い…あと叔母さんに似てる。
男性「、で…?そいつがお袋の言ってた奴か?」
叔母「ええ、そうよ。柚月ちゃんよ」
柚月「あ、、丹色柚月です。初めまして、」
男性「俺は隈取だ。よろしくな。」
隈取さん…威圧感は凄いけど優しい人っぽい雰囲気が感じ取れる。
…隈取ってどこかで聞いたことある気がする。
隈取「お袋はこいつに話したのか?」
叔母「これから話そうと思ってたのよ。あんたと会って話した方がいいと思ってね。」
隈取「なるほどな」
柚月「えっと…話ってなんですか、?」
叔母「柚月ちゃん今一人暮らし状態でしょ?高校生で一人暮らししてる人もいるけど心配で…」
柚月「あ、それなら大丈夫ですよ、。一人でいる時もあったので…」
叔母「それは一時的な話でしょ?これからは長い間1人なのよ?慣れてる慣れてないの話じゃないのよ。」
柚月「そう、ですね…」
叔母「本当はね?私の家で引き取りたいのよ。義姉さんとは仲が良かったし、 柚月ちゃんとも何度もあったでしょ?会ったことがある人の方が柚月ちゃんも安心するでしょ?」
叔母「けどね、私の家は遠いから柚月ちゃんは転校することになるんだけど…仲いい子もいるし嫌だと思ってね、」
叔母「私の息子の隈取の家ならいいんじゃないかって!」
柚月「、へ…?」
聞き間違いかと思ったが真剣そうな叔母さんの目を見る限り、これは聞き間違いなんかじゃない。
私は隈取さんとの同棲を勧められているのだ。
隈取「あー、別にあれだぜ。俺と一緒に住むのが嫌なら全然断っていいんだぜ。決めるのはお前だ。」
柚月「ぁ、いえ…別に嫌って訳では無いんですけど、ちょっと急に言われてビックリしちゃって」
柚月「確かに転校はあんまりしたくないので…叔母さんの家に住むのは遠慮します。」
叔母「うんうん、やっぱそうよね」
柚月「えっと…隈取さんの家は私の学校に近いんですか?」
隈取「そんな近くじゃねぇよ。多分お前ん家よりかは少し離れてんじゃねぇか?」
隈取「まあそれでもお袋ん家よりかは全然近いな。」
柚月「なるほど…」
柚月「…悩みますね、」
叔母さんが心配してくれる理由もわかる。私だって一人暮らし出来るか不安だ。だったら誰か大人と一緒に暮らした方が全然いいだろう。
けれど初対面の人といきなり暮らすのは少し緊張してしまう。ましてや男性だから余計に。
一体どうしたらいいのだろうか。
隈取「…そんな悩むならやっぱ辞めるか?別に無理強いはしてねぇし」
柚月「ぁ、私か悩んでるのは隈取さんとは初めましてだからあんまり隈取さんのこと分からなくて…嫌って言う訳じゃないんです」
叔母「なら少しの期間だけ一緒に暮らしてみて、それでいい感じだったらそのまま暮らせば?もし合わなかったらまた考えましょ。」
柚月「そう、ですね…それなら隈取さんの事も分かるかもですし 」
隈取「俺もそれでいいぜ」
叔母「わかったわ。期間はそうね…1ヶ月ぐらいでいいかしら?」
柚月「大丈夫です」
隈取「わかった。なら帰ったら荷物まとめといてくれ。明日土曜で休みだし、荷物運ぶぞ」
柚月「分かりました」
そうして私と隈取さんとの同棲生活は幕を上げたのだった。
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