テラーノベル
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ドキドキしている自分が篤久様と見つめ合っている場面を、頭の片隅のカメラで見ている気がする。
ちゃんと……すごくドキドキしている…嬉しい……嬉しいって思っていいのかなって思ったり……やっぱり信じられない場面だなと…
「信じてもらえないのは、俺の努力不足だ……」
「いやぁ…っと……そういうことではないのだと……あの……努力とかそういうことじゃない……じゃ…ぁ、何?って、言われても……私に答えられるはずがないんですけど……」
篤久様の言葉を遮ったわりには、自分が何を言いたいのか分からずに、最後には小さな声でボソボソと話す。
「真奈美さんのことだからいろいろと考えるだろうけれど、理由とか、どうして出会ったかとか、仕事とか、何も関係なく、俺のこと嫌い?」
「いえ……まさか、そんなこと…嫌いだなんてこと…ないです」
「ってことは好き、でいいんじゃないかな」
「え……?」
「一昨日激しい戦闘を終えたばかりで、まだ傷跡の残る真奈美さんが“はい、デート”“はい、買い物”と浮かれて出掛けるとは思っていないし、俺のことを愛してる、と言うとも思っていない」
あい…アイ……ぁ……私が無音で口をパクパクさせるのを見て笑った篤久様は
「今の感情で十分だから、一緒に出掛けるところから始めよう。これまでと同じ生活を繰り返すより、ずっと楽しく前に進めると俺が約束する」
と私に手を差し出した。
「前に…」
「そう、未来に」
「……」
「何も真奈美さんを邪魔するものはない」
私なんかが、篤久様の手を取っていいのだろうかという気持ちがゼロになったわけではない……なるわけがなかった。
それでも、今、今日、未来へと一歩踏み出せるのなら、この手を取って一歩だけ…お願い……そう思った。
「うん、行くよ?何も心配しなくていい」
僅かに私の手が動いただけで、篤久様はその手をキュッと握った。
あのキャンディー缶を見ただけで、嬉しくて悲しい気持ちになったのは、好きだという気持ちがあるからだろうと、自分の気持ちに薄々気づいていた。
今、手を繋いで、すぐにある扉から駐車場に出るだけで
“好き”
が薄々なんかじゃなくなりそうだ。
「あれ…?今、渡辺さんが走って行った?」
あ、そういえば運転手さんは渡辺さんという名前だった…初日から何となく私の中で“運転手さん”と定着していたけど。
「チラッと見えた気もしますけど…今日は運転じゃないお仕事ですか?」
私と篤久様はシートベルトをカチャ……としながら話す。
「ここで留守番をする予定のはずだよ。父さんはもう会社に行ったし」
「広瀬さんも、もう出ておられるみたいですからお留守番……?」
と言いながら、車はゆっくりと門を目指して動き始める。
「わっ……」
篤久様の車が近づいたから、門扉の隣の電動シャッターゲートが上がり始めたのが見えた途端に運転手さんがシャッターゲート前に現れて、止まって、止まってという風に腕を振る。
「なんだ…?」
と言いつつも、篤久様は停止して、何かボタンを押したかな…?
たぶん、手動でシャッターゲートを降ろしたのだと思う。
「何かありましたか?」
シャッターゲートが降りるのを見てから、動きがゆっくりになった運転手さん……渡辺さんが、開いた窓から顔を出す篤久様に
「池田の親が来ています」
と告げた。
「真奈美さんの未来を邪魔するものはないと……言った直後にこれか……誰ですか?父親?」
「はい。社長と副社長にお詫びに来たと…」
「もうそこで謝る相手が違いますね。車?」
「そうです」
「まさか追いかけてはこないだろうけれど…渡辺さん、会えない会うつもりもないってのんびりと引っ張ってもらえますか?その間に出ますから。で、そのあと西郷先生に連絡して“池田は排除に決定”だと伝えてください」
「承知致しました。池田は中園と直接取引があるわけではないのに、厚かましいにも程がありますね」
「そう言ってもらっていいですよ。お願いします」
「はい、では私が表に行ってからシャッターゲートを開けてください。真奈美さん、留守は任せてください。ゆっくりとランチを楽しんでからのお帰りで大丈夫です」
え……行っちゃった…
コメント
8件
篤久さま グイグイ来るね~どんどん来て来て~"(ノ*>∀<)ノそして池田親は来ないで来ないで~(。・ω・)ノ゙サイナラー
もう中園家を取り巻く皆様皆んな良い方ばかり🙆🙆🙆運転手さんは渡辺さんね。池田は,排除に決定🆗 真奈美ちゃんは篤久さんとおデート楽しんできてくださいましね
せっかくの篤久様からの愛と未来へ〜❤️ が、池田(もう存在を忘れてた〰笑)がブチ壊してる😠 西郷先生、退治よろしくです! 渡辺さんもデキる方ですね✨頼りにしてます〰