藤澤 side …
次の日、僕は朝から予定が入っていたため、午前7時頃に家を出ていた。正直、この仕事はスタッフの方でやる仕事だが、あまり会議が上手くいかなかったようで、急遽僕もその仕事に関する会議に参加しなくてはならなくなったのだった。
「…はぁ、」
行きのタクシーで小さく着いたため息。元貴は今頃何してるかな。まだ起きないか。今日は一日中元貴のことばっかり考えているんだろうな。そんなふうに思ったが、想像以上に会議はひとつの議題でなかなか話しが進展せず、しかも会議の次には別の仕事も入ってしまったため、元貴のことを考える時間なんて1秒たりとも与えられなかった。
「お疲れ様でしたー、」
仕事が全て終わったのは22時頃だった。もう元貴は寝てるか。暗くなった空を見上げながら深呼吸すると、白い吐息がぶわっと視界を覆った。早く帰って、今日はもう寝よう。
…でも、なんか忘れてる気がする。
買い物だっけ?でも、今別に欲しいものなんてないし…なんだっけ?考え事をしながら家までの道を辿っていくと、あの廃ビルを見て忘れていたことを思い出す。
「…あ、」
そうだ。僕、昨日若井の様子をそろそろ見に行かなきゃって思ってたんだった。…まぁ、流石に死んでると思うけどね、こんなに寒いんだし。
僕は人目を見て、ゆっくりと廃ビルの中へと入っていく。廃ビルの中はコツコツという革靴の音がよく響いた。
ゆっくりと若井を拘束し、監禁した3階に足を踏み入れると、そこには椅子に縛り付けられた若井であろう人影が見えた。
「…久しぶり」
僕が声をかけると、男は虚ろな目線をこちらに向けた。
「……りょう、…ちゃん、?」
掠れきった声は若井の声だった。げっそりと痩せ、肩に着くぐらいまで伸びた髪の毛に、見慣れない髭面。若井は完全に変わり果ててしまっていた。
「よく生きてたね、若井」
「……もうすぐ死ぬよ」
僕は若井の言葉ですぐに分かった。
本当に若井は死ぬんだ。
「…元貴は、元気、?」
若井は心配そうにそう問いかけてきた。
「……うん、最近は暗いけどね」
「……そっか、…元貴に、会いたいな」
顔を上げたかと思えば、若井は天井を見上げ、遠い目をしていた。
「ねぇ、元貴に伝えて、…?」
「…いいよ?」
「…愛してる、……って」
若井の頬には涙が伝っていた。そして、いつの間にか若井は喋らなくなった。
「…若井、?」
触れなくても分かった。
若井は死んだんだって。
「…元貴に伝えるよ、」
「今日で終わらせるから」
僕はそれだけ言い残し、廃ビルを後にした。
家に帰ったのは深夜1時頃。扉の鍵を開け、家の中に入る。
「…ただいま」
家の中は廊下まで冷えきっていて、靴下越しでも寒さを感じた。どうやら元貴はもう眠ってしまったらしい。
「…はぁ、最悪、」
なんだか気分が悪い。若井が死んだから?今の気分はどう言ったものなのかも、自分では分からなかった。イラついているのか、悲しんでいるのか。それとも若井を殺してしまったという焦り?後悔?
「……チッ、」
そうだ、元貴と体でも重ねれば、気は紛らわせられるだろう。そうだよ、そうしよう。また適当なことして、また忘れて。その繰り返しだ。
僕は荷物を適当に玄関付近に投げ捨て、そのまま寝室へと向かった。
寝室に入ると、静かにすやすやと眠る元貴の姿があった。長いまつ毛がふわりと風に乗ったり、ふっくらとした唇が時々むにゅっと動いたり。僕は元貴の上に馬乗りになる。
大好きだよ。
これは自分の口から出た言葉なのか、心の中で呟いた言葉なのか、もう僕にはさっぱり分からなかった。
「…んッ、?」
元貴がゆっくりと目を開く。どうやら起きてしまったみたい。
あーあ。もっと早く殺しとけばよかった。
そうして今に至る。
涼ちゃんの過去系のお話は今回で以上です!
そしてそして、次回はついに最終回🥲
あっという間すぎて……
まだ作者次のお話書いてないよ〜!!😅 ((
お話のネタ?的なのは何個かあるんですけど、
なかなか筆が進まない……みたいな……
でもめちゃくちゃお話にしたい気持ちも
ちゃんとあるので、とにかく頑張ります!
では、また次のお話で^^
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コメント
4件
あぁぁぁぁぁぁ!!ついにこの時が来たんですね😭😭 何かみんなつらすぎますね😢
わ…かい… …もうこの世界のミセスは 壊れちゃったんですね…