テラーノベル
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しばらくしてドラキュラは戻ってきた。そして俺に訪ねた。
「どぬく、なんでそこにいるの?」
「え…?」
「僕、鍵閉めてないよね?」
「…」
確かに逃げようと思えば逃げれたのかもしれない。枷だってゆるゆるのものを敢えてつけているのだろう。俺が選べるように。でも俺は逃げなかった。何故か落ち着くのだこの空間が。ドラキュラが。
「ドラキュラさん、なんで連れてきたの?俺を。」
「やっと震えなくなった。良かった。君が可愛そうだから、かな。あと僕はドラキュラじゃないよ、」
「じゃぁ、なんで肌がそんなに青白くて、この部屋は血の匂いがするの?」
淡々と喋るなぁ、と言いながらドラキュラは口を開いた。話したくなさそうだった。
「どぬくは聡明だね。僕は生まれつき食べ物を食べることができない。」
「えっ…」
「信じられないよね、僕は去年までどぬくのようにベッドの上で栄養を無理やり躰に流し込まれて生きてた。」
「…」
俺と同じだ。ドラキュラ、違う、君は、俺と同じように生きてきたのだろうか。まともに笑うなんてできない俺とすぐに笑える君。雲泥の差を感じてしまう。事実が受け入れられない。でも不思議と体が震えない、怖くない。
「そんな自分が嫌だった。たまたま見たんだよね本で。ドラキュラは人の血を吸って生きる。そこで人の血には食べ物より養分があることを知った。」
「だから、俺の血も吸うの?そのために生かしてるの?」
「違うよ。どぬくは死なせない。あと血は2日に1度医者である親から輸血パックをもらってる。」
俺と同じように苦しんでたんだ。君は。無性に胸がいたんだ。痛い、痛い。
「だったら俺の血を吸ってよ、」
「そんなことはできないよ。こんなに可愛いのに。」
君は拒絶する。俺はいいのに。
「俺は父さんを裏切った。罰を受けるべき罪人だよ、」
「そんなことで罪人だったらこの世のほぼすべての人が罪人になってしまうよ、どぬく。」
「違う。俺は君から罰を受けないといけないんだよ、ドラキュラさん。」
なんだろう。思っていないはずの言葉が次から次に出てくる。
「俺に罰をください、」
俺はこう思っているのかな、
「だめだよ。あげない、あと俺はもふって言うから。」
「もふくん、…」
「ほら、がっかりしないでどぬく。そうだ今日はいいところに連れて行ってあげよう。着替えて、」
「え」
「外、出たいでしょ、つれていってあげる。」
眼の前にもふくんが差し出したのは黒くて長い服。俺のメイドさんが着てたやつに似てる…
「ねぇっ、これっ俺、おとこっ…/」
「いいでしょ、絶対似合う。着替えて、ほら」
「っ…/」
もふくんの予想外のチョイスに驚きながらも俺は渋々着替える。もふくんも着替えてくるから準備したら出てきて、といい部屋を出ていった。
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