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fu view___________
rm「俺はふうはやたちにとって、なに?」
ちょっと前、といっても、二、三ヶ月くらい前に問われた言葉
毎日のように会うから、馬鹿騒ぎも落ち着いて沈黙が生じることがあるのは当たり前のこと
そんな時に、りもこんから投げかけられた質問に、何か嫌なものを感じ取った
rm「…役に立ててると思う?おれは」
すごく不思議な気分だった
自分から役に立とうなんて、必死になって何かに貢献することのないりもこんが、そんなことを聞くものだから
普段ならもっと、別の人ならもっと、正しく対処できたかもしれないのに
長年の相棒の、突然の変わり様に言葉が出なくなった
fu「………なんで、そんなこと、きくの」
多分、それは言ってはいけないことだった
あの時、俺は、役に立ってるよって
お前がいなきゃ俺は楽しくないし、お前がいなきゃ、いんくは成立しないって
お前が、お前の存在が、大事だって、きっとそう、答えるべきだったのに
実際、それがあまりにも正しくて覆しようのないものなのに
俺の質問に黙ったまま、こちらを見て困ったように笑ったお前は、ひどく疲れているようだった
rm「やっぱなんでもない。ごめん」
その返しで、自分の大きな過ちにすぐに気がついた
混乱から生じた俺の返答は、お前をなにか縛るものだったに違いなかった
fu「りもkっ」
rm「今日は帰るわ。明日予定あるんでね」
rm「じゃあな」
自分の声も聞かず遠ざかって行く彼の背中は、酷く小さく苦しげに見えた
あの日、俺は大きな過ちを犯したのだ
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fu「………」
静かな家に1人、こういう時は、どうしても彼のことが頭に浮かんでしまう
あれから、りもこんの俺たちに対する謙遜というか、遠慮というか、壁が厚くなったような、そんな感じがする
いつか絶対に、いや、はやく、彼から聞き出さないといけないのに、最近の話を持ち出したところで本人によって遮られてしまう
最近は画面越しでしか会うことができていなくて、直接会ったのは旅行以降皆無だ
俺が忙しいというのもあったんだけれど、基本彼に断られているのだ
fu「………」
話をしよう、彼と
ちゃんと直接会って、話をしないといけない気がする
そうでなければ、いつか手遅れになってしまうような、そんな不安を、漠然と抱いている
時刻は……21:30、生活習慣が模範のようにぶっ壊れている彼のことだ、もしかしたら起きているかもしれない
スマホを手に取って、慣れた手つきで画面を操作する
fu「……よし」
覚悟を決めて、通話ボタンを押そうとした
___________その時
fu「っ!?!!」
突然画面が暗くなって、『かざね』の名前が表示された
かざねから電話が来たのだ
珍しい、彼からこんな時間に連絡を受けるなんて
驚きのせいで数コール逃して、ようやく応答ボタンを押す
fu「もしもs」
kz『ふうはや!!!助けて!』
kz『りもこんが倒れた!!!!!!』
___________がつんっっっ
精密機器から響く音声に酷く混乱した自分がいた
fu「…まて、なにがあった?今どこにいる?」
自身の脳内を支配するのは、さっきと変わらない、彼のこと
電話の向こうでかざねが叫ぶ、その名の持ち主のこと
kz『りもこんの家!!熱がすごくて…っ1人じゃ運べない、変な呼吸もしててっ!!』
kz『ひっぐッッ……はや”くきてぇ”……!!!』
fu「すぐいく、っ落ち着けかざね」
fu「りもこんが楽な体勢とらせて、もしできるなら氷と桶の準備して」
kz『なに、楽な体勢って、わかんない!』
fu「呼吸、苦しくなさそうな体勢試してみて!!」
電話の先のかざねはすでに混乱しきっているらしい
いつもの冷静な彼からは想像しづらい慌て様で、こちらの気分まで掻き立てられた
必要最低限の荷物だけ持って、乱暴に玄関を施錠し家を飛び出す
かざねの声よりももっと奥で、わずかな人の気配がする
………うなされている、ような、
fu「かざね!!!!」
kz「っふぅはやぁ!、」
見慣れた道、見慣れた家の並びを頭だけではなく体も覚えていて、りもこんの家に着くまでそう時間はかからない
玄関を開けた先には、予想した通り座り込み涙を浮かべているかざねと、そんなかざねに守られるかのように支えられているりもこんの姿があった
りもこんの肩は不自然に上下に揺れている
kz「離してくれなくて、」
fu「大丈夫、一緒にベッドに運んでやろう」
上半身はかざねが支えているからと、自分はりもこんの下半身に触れる
とたんに、彼の体はびくりと跳ねたが、抵抗されることはなかった
そんな力すら残っていないくらい、弱っているのかもしれない
そう思うと不安が増倍する
この不調が、ただの風邪やらであってほしいと祈るばかりだった
ベッドへ運ぶまで、りもこんからは酷く弱々しい声で支離滅裂な言葉が聞こえる
魘されている、こんな酷い状態の人間は初めて見た
それが長年の相棒だというのだから、自身への衝撃は言うまでもなく大きかった
かざねにりもこんの手を握らせておいて、自分は部屋のものを借りて看病の準備をした
ある程度足りないものはリスト化して、準備物を持ってかざねのもとへ運んでいく
りもこんの手を握っていた彼はこちらをみて、右手を差し出した
kz「俺買い物行ってくる、さっき書いてたリストちょうだい」
fu「え?いやいいよ。俺、財布持ってきたし」
kz「ぃや、いくよ」
りもこんの手、握っててあげて
そう言って、買い物に行こうとして頑なに譲らないかざねを見て違和感を覚える
今の彼は、あの時のりもこんのような、変な危うさが見て取れて、己の心に酷い不安を招いた
fu「どうした?…かざね、」
kz「俺が行きたい」
言葉を遮られるようにかざねの声が強く響いて、ピンクの瞳が歪んで写る
水が今にも溢れてしまいそうな、部屋の光に満ちた瞳
fu(…あぁ、1人になりたいのか)
きっと何かあったんだ、俺の知らないところで、りもこんと、何かあったのだ
悩んでいるのか、苦しんでいるのか、それを、今は1人で考えて向き合いたいのかもしれなかった
fu「……わかった」
自分の承諾に、彼は少し安心したように息を吐いた
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かざねが家を出て数分が経つ
氷嚢がないから仕方なく、できるだけ綺麗そうな手ぬぐいを氷水で冷やして、りもこんの額に当てる
汗がひどい、顔だって赤いし、肩で息をしている
苦しんでいることが、一目でわかる
別のタオルで滲んだ汗を拭ってやるけど、その中に、汗ではない…瞳から流れ落ちる水滴もタオルに吸収されて行く
止まらない、意識はないだろうに、泣いてしまうほど辛いか
そんなりもこんを見ていて、…一緒にいてやるしかできない自分が、どうしようもなく無力なのだと知る
fu「がんばれ、がんばれよりもこん」
呼吸音と共に唸るような声を漏らすりもこんの手を両手で握りしめて、祈るように呟く
fu「……ごめんなぁ…」
俺があの時、お前が俺に問いかけたあの時、ちゃんと、お前と向き合おうとすることができたら
ちゃんと、俺たちに取って正しい答えをお前に提示できていたら
お前は今、同じような状況にいたんだろうか?
赤くなったりもこんの顔を撫でてやれば、額に置いたタオルが手に当たる
……ぬるい、冷たいものに替えてやらないと
机に置いた氷水に目をやれば、氷はもう溶け切っている
無理もない、冷房をつけているとはいえ、この暑さなのだから
水ごと取り替えて冷たくしてやろう
そう思って立ち上がった瞬間、己の重心が後ろへ引っ張られるのを感じた
fu「ぅえっ!?!」
慌てて後ろを振り向けば、体を起こし、俺の服を掴んでこちらを見るりもこんと目があった
何か信じられないものを見たかのような顔をして、その瞳は先ほどのかざねと同じくらい潤いきっていた
rm「っ、はっ、はぁっは、!っ」
fu「りも!?おまえ、」
rm「ふ、はゃ、っ、なんで、」
なんでここにいるのか
そう言いたいのか,あるいはもっと別の、何かを問いたいのかはわからない
くしゃりと顔を歪めたりもこんの瞳からは、事切れたように涙が溢れ出す
言葉に詰まって、りもこんはひどく苦しそうに咳をした
慌てて背中をさすり、あたりを見渡す
……しまった、飲み水なんて持ってきてない、いずれ起きるんだから用意したってよかったじゃないか、俺の馬鹿!
fu「ち、ちょっとまってろ、」
とりあえず、りもこんの喉は枯れているだろうから、せめて水をのませてやりたい
そう思って、己の服を掴むりもこんの手を離そうと試みる
rm「ゃだ行かないで!!!」
fu「りもっ、!?!」
己の行動にをどういった意味で捉えたのか、恐怖の混じる声でりもこんは俺の体ごと抱きしめる
普段の彼なら、絶対にしないことだ
ベッドから乗り出すものだから、落ちそうになって、それを間一髪で抱き留めた俺を、誰か褒めて欲しい
rm「ちょっとまって…、!」
蚊のような弱々しい声が耳に入り込む
やめてくれ、今の俺に、お前の苦しげな声は酷く莫大な効果をもたらすのだ
fu「おいどうした、りもこん落ち着け、」
rm「…ぃい子にするから、」
fu「…は」
rm「捨てないで、お願い、っ、いらないって、っいわないで、」
“…役に立ててると思う?俺は”
いつか問われた、俺の未練が脳内を反芻する
そうか、いや、やっぱりそうなのか
りもこんは、俺がずっと懸念していたことで悩み続けて今に至るのか
漠然と祈っていた、”ただの風邪”なんかではなく、しっかりと、りもこんの心から体全体を、お前の悩みが蝕んでしまったのか
そんなになるまで、放置してしまったのか,おれは、俺たちは
fu「おまッッ…」
rm「………ぉねがぃ…」
fu「………俺がそんなこと、お前に言うわけないだろ…!」
強く、それはもう強く、腕の中の彼を抱きしめて、ぐしゃりと顔を歪める
泣きたい、泣き叫びたい、謝らないといけない
どうしてこんなになってしまった?いつから悩んでたんだ?
あの時の問いかけは助けを求めていたのか?あれからお前が逃げるように壁を作ったのは、やっぱり俺のせいなのか?
何が正しかった?お前は何をして欲しい?何を隠してる?
聞きたいことがある
知りたいことがある
やり直したいことがある
その全てをぐちゃぐちゃと混ぜ込んで、解消しきれなくなった感情が宛先のない怒りとなり、涙として形になった
fu(くそ、くそ!!俺のアホ!!)
最悪だ、今日は、本当に最悪で、情けない日だ
腕の温度が高くなっているのがわかる
揺れが酷い、呼吸音が掠れて、痰の絡んだ咳が出ている
それなのに、彼を離してやれない
それは他でもない、彼のために
彼が,限界を迎えて再び眠りにつくまで
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