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kz view___________
頼ってもらえなかった
一言で言うと、それに尽きる
旅行のあの日、あの夜、叫ぶように伝えた、はずだった、彼への想い
1人にならないでくれと、連絡をとってくれと、旅行から帰ったあとには、メールまで送りつけたのに
胸の熱さが、湧き上がる不快感が、何の感情なのかわからない
自分は今怒っているんだろうか?悲しいんだろうか?
どうしたいのかわからないのに、この衝動を何かにぶつけたくて、宛先のない想いにやるせなさを抱いた
歩行速度が上がる、必要なものが詰められたビニール袋がガサガサとゆれては、自分の足に当たって、それさえ不快に思えてしまう
りもこんの家の前で立ち止まる
ふうはやになにか聞かれるかもしれない、そうしたら、どう答えればいいんだろうか
彼は知っているのか?きっと知らないだろう、……いやわからない、あの2人は、すごく、すごく仲がいいから
…………じゃあ、おれは、
頼ってもらえなかった、おれは、いったい……
kz(………だめだ)
この思考はまずい、そう思って首を横にする
今はりもこんが優先だ、彼を楽にしてやること以外考えてはいけない
過去のこと、自分たちの仲のこと
お互いがお互いにどういう思いを抱いているかなんて、考えたところで仕方ない
何年も4人でそばにいる、それでいいじゃないか
kz「……お邪魔します」
先程の訪問とは違って、静かに玄関を開ける
りもこんが寝ているだろうから
部屋の明かりはついている、進み続ければ、緑色の髪の毛が視界に映った
kz「………ふうはや?」
布団の乱れたベッドの上に横になっているりもこん
……と、先ほどまでベッドに座っていたのだろうか、ほとんどりもこんのベッドに体を入れて寝てしまっているふうはやの姿
kz「……はは、なにしてんの」
何か聞かれた時のための返答を何度も脳内シミュレーションしていたものだから
いざ帰ってみて、眠ってしまった彼を見て、どこか落胆したような、されど気持ちが軽くなった
ふうはやの目元は少し赤い気がするけど、気づかないふりをして小さなテーブルに荷物を置く
りもこんの魘されている様子が、もうない
呼吸も安定している、顔はまだ赤いけど、さっきより楽そうだ
熱を確認しようと手を伸ばし、彼の髪の毛に触れる
普段さらさらな水色の髪の毛は、汗のせいか、少ししっとりとしていた
rm「…………、っ、……?」
kz「あ、」
撫でるように触れたせいで、りもこんが顔を歪めて目を覚ます
kz「ごめん、起こした」
rm「………、?」
意識がはっきりとしていないのだろうか、とろりとした瞳で、周囲を把握するかのようにゆっくりと視線を揺らす
体を起こそうとするので、ふうはやが起きないように支えながら、ゆっくりと起き上がらせた
しばらくして、眠たそうなオッドアイの瞳が、自分の元へ戻ってくる
rm「…………かざね」
kz「…うん、かざねだよ」
rm「……ぁ、ぅ、」
彼の声に反応してやれば、どこか怯むようにしゅんと縮まった
rm「……ごめん」
kz「なんで謝るの、言っとくけど迷惑じゃなかったから」
rm「…………」
りもこんが起きれば、その時には言われると思っていた
今の状態じゃ、謝られることなんて想定済みだ
なんで謝るの、なんて聞けば、迷惑かけたからと言われる確率は高いというか、大抵みんなそういうもんだろう?
案の定、りもこんは言い訳を潰されたらしく、困ったように目線を下見向けた
kz「…こっち向きなよ、りもこん」
rm「……っ」
声をかければかけるだけ、彼は怯えたような顔をする
kz「なんでそんな顔すんの」
ゆらゆらと左右を行き来して、ゆっくりと、またオッドアイが自分を写した
rm「……ぉこってる………」
rm「…ごめん……」
蚊のような弱々しい声が耳元に届けられた
え?怒ってる?俺が?優しく声をかけたつもりだったのに
……いやでも、思い返せば、病人の彼に強めに話してしまったか?
kz「…怒ってない」
rm「…ぉ、おこってるって、」
kz「怒ってない、!」
rm「!!」
kz「……ぁ」
あれ、怒ってないよって、優しく諭すつもりだったのに
kz(…………あぁ、なに?俺、怒ってんじゃん)
感情への自覚は、本当に唐突だった
買い物の時、怒りだと思ってもすんなり納得できなかったそれが、りもこんを前にしてきちんと形作られた
いや、もしかしたら怒りという感情が優位になっただけで、さっきまでは本当にごちゃ混ぜな想いだったのかも
じゃあなんで怒ってるんだろう、なんで、彼に対して、どこか不安定な想いを抱くだろう
なぜ、
…そんなの、
kz「………怒ってる」
rm「っ、」
自分で人の感情を指摘しておきながら、認めた瞬間目の前の彼は体を揺らした
kz「なんでだと思う」
漠然と、そうなのかもしれないと思える答えは自身の脳内に用意されていた
でも、今はその答えを咀嚼したところで、なんの解決にもならない
rm「……ご、め、」
怯えたまま弱く謝る彼が、旅行の時と重なる
この答えを、彼にちゃんと理解してもらわないと
なんで怒っているのか、彼と自分の間で、一致させないと
kz「なんで怒ってると思う?って聞いてる」
rm「………ぅ、」
りもこんの声に震えが混じる
ごめん、ごめんりもこん、しんどいだろうに、うまく動かない脳を頑張って動かして、理由を探してるんだ
ごめん、でもなんか、今は俺、引き返せる気がしない
rm「……熱、ぁるの、気付け、なくて、…?」
kz「…」
予想の斜め上の回答に顔が歪む
熱があることに気づけない人間なんて一定数いるだろ
「馬鹿は風邪をひかない」なんて言葉に、「馬鹿は風邪を引いたことに気づかない」という解釈がなされるくらいだ
思わずため息が溢れて、彼の空気が焦りを纏ったのを感じる
rm「……ぉ、おれが、役に」
kz「それは違う」
kz「………めちゃめちゃ役に立ってるよ、りもこんは」
ありえないことを言おうとした彼を遮って否定する
まだ自身が無価値だなんて思っているようなら、何度でも言ってやるって、そう決めたから
fu「………ん、ぅ”」
りもこんの手元で緑色が声を上げた
眠たそうなまま開かれた瞳が、自分とりもこんの両方を映し出す
瞬間、がばりと体を上げて彼の名前を呼んだ
fu「りもこん!!起きたのか、お前」
rm「……ぁ、…」
嬉しそうな声を上げるふうはやに対して、先ほどまで圧力をかけられていたりもこんが発する声は酷く弱々しい
そして、ふうはやはそれに気づけない人間ではない
fu「……どうした」
ふうはやがこちらを見る
伺うような、まっすぐな瞳に当てられて、気まずくなって視線を逸らした
fu「……なんか、あった、?」
rm「……なにもない」
沈黙を破ったのは、意外にも渦中の彼だ
rm「なんでもない、大丈夫だから。…心配かけた」
kz(___________は?)
…………はぁ???
何を言ってんの?こいつ?
ふうはやに事情を説明するのが怖い?それは俺だってそうだ
だって俺、病人に対して怒ったんだし
でも、違うだろお前、なんだよそれ
kz「………にが、」
fu「ぇ、」
kz「っなにが大丈夫だよッッ!!!!!?」
rm「んぁ”ッえッッ!?!!」
沸騰したかのように湧き上がる感情が、声となって、表情となって、行動となって、とめどなく溢れる
ラフな格好をしたりもこんの肩と胸ぐらを掴んで、伸びることも気にせず引っ張り上げる
fu「かざね!?!?!?」
普段ならこんなことしない、普段なら、
目の前の人間が、お前でさえなければ、きっともっと冷静になれていたのに
kz「大丈夫じゃないからこんなことになってんだろ、1人で解決できなかったからこんなになってんだろ!!?」
rm「ぃ、だ、っかざ、、!」
kz「苦しんどいて大丈夫ってなんだよ!!役に立つとかそんなことばっか気にしてさぁ!!心配させといて、変なとこで壁作ってんなよ!!!」
fu「かざね!!!」
慌てた表情のふうはやが視界に映って、瞬時に理性が帰ってくる
やってしまった後悔と、解消しきれていない不満が、残り香のように瞳から溢れ出す
視界がぼやけて、また鮮明になったかと思えば、2人の驚いた顔が映し出される
……ぁあ、泣いてる、俺
kz「……んで頼ってくれないの」
kz「…そんなに、頼りない?」
頼られたい、頼られたかった
みんなの役に立ちたいって、そう願ってるお前に、頼られたかった
再びの沈黙、下を向いたまま、もう泣くしかない俺の頭を撫でているのは、きっと緑色の彼だ
fu「……ぁー、一旦、落ち着いた?…かざね、」
kz「………ごめん」
fu「いや大丈夫、お前の言いたいこと、多分わかった」
顔を上げられない目の前の彼が、どんな顔をしているかなんて、怖くて見れない
fu「………りもこん、は、…伝わった?ちゃんと」
……ふうはやからの問いかけに、彼の声は響かない
fu「…りもこん、聞くぞ?………大丈夫なんだな?お前」
rm「……」
rm「………わ、かん、なぃ、」
kz「……なんだよそれぇ…」
大丈夫じゃないって、さっさと言えよ
でも、りもこんらしさの残る返答に気が抜けて、ゆっくりと顔を上げる
…前と同じ、少し危なげのある顔が、今日は眉間に皺を寄せている
rm「わかんなぃ、大丈夫って、どこから、?…おれ、どこからもうダメなの?」
rm「おれは、大丈夫じゃない…?」
kz「……明らかアウトだろ…」
fu「………うーん、」
そうかこいつ、大丈夫なラインをわかってないんだ
いや実際、数値化とかできるわけじゃないし、俺にもわからないんだけど
同じように答えに悩んだらしいふうはやと目が合う
しばらく考えて、彼はりもこんを抱き寄せた
fu「かざねの言う通り、とりあえずりもこんはもうアウト。ぜんっぜん大丈夫じゃない」
fu「頼るの怖いなら、頼る練習から始めるか」
fu「習うより慣れろっていうしな」
ほら、かざね
そう呼ばれて、引っ張られ、3人で抱き合う形になる
fu「お前が全部、ぜーんぶ相談したくなるくらい、ちゃんと吐き出せるくらい安心できるようにしてやるから」
fu「こんなにお前のこと好きなんだし、俺ら」
fu「ま、今しゅうとだけいないんですけどね」
kz「……」
fu「あそうだ、今度みんなで遊ぼーぜ。俺ん家でいいからさ、予定合う日あったし」
諭されるように背中を撫でれられる
なんだか恥ずかしいし、どこか負けたような感じが気に食わなくて、目の前のりもこんの頭を撫でた
fu「うんと甘やかしてやるよ。なぁりもこん」
rm「………ぅん」
小さく響いた肯定の言葉を、俺たちは聞き逃さなかった