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終電間際の下り列車。
平日夜の車内は思いのほか混み合っていて、
元貴は自然と、車両の奥の角へと追いやられていた。
車内アナウンスが機械的に鳴る。
ブレーキ音が耳を撫でる。
だけど、それ以上の音は何もない。
滉斗の姿が目に入ったのは、ドアが閉まる直前だった。
「ちょうど乗れた!」と笑いながら、
すぐそばまでやって来て――
そのまま、元貴の背後にぴたりとついた。
「……近い」
「しゃーないだろ、混んでんだから」
そう言いながら、
滉斗はわざとらしく、腰をすこし前に押しつけてきた。
元貴が反応するのを知ってて、
その距離感を選んでるのは明白だった。
次の瞬間――
“その手”が、腰の脇に滑り込んできた。
「……っ、は?」
誰にも聞こえないような吐息が、喉の奥で跳ねた。
滉斗の指が、元貴のコートの裾をくぐり、
ズボンのウエストの中に忍び込む。
外から見えないように、さりげない角度で。
「や、っ……滉斗……やめ……」
小声で囁いても、返ってきたのは淡々とした声。
「バレなきゃ、いいんだろ?」
そのまま、手のひらが下腹部を撫でる。
指先が直接、敏感な場所に触れる。
「ッ……っ、や……ば……」
脚がわずかに震えた。
でも、逃げ場はない。
前も左右も人がいて、身動きできない。
ズボンの中、
滉斗の手はゆっくりと、でも確実に扱き始める。
満員電車の中、
誰にも気づかれてはいけない状況で、
快楽だけが静かに、でも鋭く元貴の神経を這う。
吐息すら漏らせない。
でも、腰がわずかに揺れる。
膝が勝手に折れそうになる。
「や、だめ……ほんとに……っ、ああ……」
耳元で滉斗が囁く。
「声、出したらアウトだよ?
電車降りた瞬間、俺が“こんなことしてましたー”ってバラすよ?」
「っ……くそ、性格悪っ……!」
罵りながらも、
元貴の腰は、滉斗の手の動きに同調してしまう。
ズボンの中、熱が集まって、
手のひらの圧に負けそうになる。
「もうちょっと……あと少しで、イけるんだろ?」
「っ……わかるわけねぇだろ、そんなの……っ」
「わかるよ。だって、さっきから……何回も、ピクッてなってる」
その言葉に、身体が勝手に反応した。
背中が震える。
肩をすくめると同時に、限界が来た。
「っ、ッぁ……ッ……!」
声は出せなかった。
でも、背筋が跳ねた。
指先が痙攣するように力が抜けた。
ズボンの中に放たれた白濁が、
滉斗の指先にまとわりつく。
電車が、ちょうど停車する。
小さな揺れ。
それに紛れて、滉斗がズボンの中から手を抜く。
その手の指先――
白濁に濡れたままの中指を、
そっと元貴の唇に近づける。
「なぁ……これ、どうする?」
元貴が目を見開く。
周囲には他人の背中と肩しかない。
会話もできない。
声も出せない。
なのに――
「……舐めて」
囁くように言われて、
本当に、唇が反応してしまった。
滉斗の中指を、
唇で受け取るように咥える。
苦くて、生々しくて、
でもそれ以上に、
背徳感で脳が焼けていくようだった。
舌でなぞる。
絡める。
全部、舐め取ったあと――
滉斗が、静かに笑った。
「……いい子」
電車が再び動き出す。
ふたりの間に言葉はなかったけど、
元貴の顔は、
汗と火照りで真っ赤に染まっていた。