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あまね🍡💠
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ズズズズズ……
山肌がゆっくりと動き始める。
「全員下がれ!」
九条の声が響く。
湊と神童はすぐに後方へ飛び退いた。
その直後。
ドサッ!
斜面の一部が崩れ落ちる。
土煙が舞い上がり、視界が一瞬白く染まった。
「大丈夫か!」
九条が二人を見る。
「大丈夫です!」
「問題ねぇ。」
神童はすぐに斜面へ視線を戻した。
「……本当に崩れた。」
九条も険しい表情で山肌を見つめる。
訓練とはいえ。
危険は本物だった。
その時。
無線から富山の声が聞こえた。
『第一班、状況を報告してください。』
九条は無線を取る。
「第一班です。」
「こちらは全員無事。」
「小規模な土砂崩れを確認しました。」
『了解しました。』
『第二班との通信は、まだ回復していません。』
九条の表情が変わる。
「まだですか。」
『現在、通信の回復を試みています。』
『第一班はその場で待機してください。』
通信が切れる。
神童が一歩前へ出た。
「待機?」
「第二班が危ないんだろ。」
「助けに行くぞ。」
九条は首を横に振る。
「行く。」
神童の表情が少し緩む。
しかし。
九条は続けた。
「でも。」
「今じゃない。」
「何でだ!」
神童の声が響く。
「今動けば。」
「俺たちまで巻き込まれる可能性がある。」
「そんなこと言ってる間に!」
「第二班は助けを待ってるかもしれねぇ!」
神童は拳を握る。
九条は冷静だった。
「だから助ける。」
「でも。」
「全員で帰るために助ける。」
静かな言葉だった。
しかし。
その一言には班長としての覚悟があった。
神童は悔しそうに歯を食いしばる。
湊は二人のやり取りを見つめていた。
助けたい。
その気持ちは神童と同じだった。
でも。
富山教官の言葉が頭をよぎる。
『まず、自分が生き残ってください。』
その時だった。
湊は周囲を見回した。
「……。」
「九条さん。」
「どうした?」
「もし。」
「また崩れたら。」
「この道は使えません。」
九条は湊の視線を追う。
一本道だった山道。
土砂が少し崩れれば。
完全に塞がれてしまう。
「反対側なら。」
「まだ通れます。」
湊が指差す。
木々の間。
少し遠回りにはなるが、安全そうな斜面が見えた。
九条は頷く。
「ありがとう。」
「助かった。」
その瞬間。
無線が鳴る。
ザーッ……
『……い……は……』
ノイズが混じる。
『……助……』
三人の表情が変わる。
九条が無線を握り締めた。
「第二班!」
返事はない。
もう一度。
「第二班、応答しろ!」
ザーッ……
再びノイズだけが流れる。
だが。
確かに聞こえた。
「助……」
誰かの声だった。
九条は決断する。
無線を握ったまま。
「第一班より本部。」
「状況が変わりました。」
「第二班から断続的な通信を確認。」
「救助へ向かいます。」
数秒の沈黙。
やがて。
富山の声が返ってきた。
『……許可します。』
『ただし。』
『必ず全員で戻ってきてください。』
九条は小さく頷く。
「第一班。」
「救助へ向かう。」
三人は力強く駆け出した。
第29話 初動 完
コメント
1件
九条班長の「全員で帰るために助ける」って言葉、めっちゃ響きました…。神童くんの即行動したい気持ちと、班長の冷静な判断、どっちも正しくて切なかったです。湊くんが別ルートを見つけた場面、彼の観察眼が光っててじんわりきた。第二班の「助…」っていうノイズ混じりの声、めっちゃ怖かったし胸が締め付けられました…!