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隠岐目線放課後、一人で帰っていると、視界の隅にふんわりとした影が映った。
――あれは……ナマエちゃん?
川辺の方へ歩いていく。
でも、歩き方がいつもより少しふらふらしていて、元気そうには見えない。
(なんで、ここに……)
自然を装って後を追った。
タイミングを合わせ、たまたま通りかかったかのように声をかける。
「ナマエちゃんやん、こんなとこで会うなんて偶然やな」
ナマエちゃんは少し驚いたように顔を上げ、笑顔を作る。
でも、目の奥には、なんだか影が見えた。
『……隠岐くん』
川風が吹いて髪が揺れる。
「元気そうやな」と言いかけて、ふと思った。
(あれ……そういやみんなは、ナマエちゃんのこと覚えとらんって)
遠回りな感じやけど聞いてみる。
「なあ、そっちのクラスで友達とかできたん?」
『んー?まだまだかなー』
「クラスの人とまだ馴れとらん感じ?まあでもすぐ⸺」
ナマエは少し息をのむようにして答えた。
「……当たり前だよ、だって、私──」
その時、俺のスマホが鳴った。
母親からの着信。
「……え?」
振り返る余裕もなく、画面を見ながら、川風とナマエちゃんの笑顔が、急に遠くに感じられた。