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〆さば
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AK@アキ
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第一話・鯖江侑真視点
「あぁ…」
その男、鯖江侑真は公園のベンチに腰掛けてうなだれていた。
「あぁぁ…」
もう三十分もこの調子である。彼に何があったのか、それは簡単。
「失恋」である。想いを寄せていた女性と結ばれ、しばらくの間時
間を共にした。しかし、ちょうど三十分前に電話がかかってきて、
振られたのである。
「なんでだよぉ…」
正直言って、えげつないショックであった。
今まで彼女なんてできたことなかったし、初めてのことであったが
ためにどうすればよいのか、自分がこの後生きる理由が見当たらな
い程度には落ち込んでいた。
『鯖江侑真さんですね、準備はお済ですか?』
脳内に声が響いた。重く顔を上げ周囲を見渡すが、人影はない。
脳に直接語りかられているのだ。
(準備って何がだよ…俺何か予定なんて入れてたっけな…)
侑真には思い当たる節がなかったのだ。
『おや、覚えていませんか。茶吾会人狼です。』
あぁ、そんなのもあったな。と侑真は思った。
(確か勝利すれば願いが叶うんだっけか、今の俺には必要ないんだ
けどな…)
侑真が茶吾会人狼に応募した理由は、お金のためである。
別に特にお金に困っていたわけではない。
しかし、応募した当時は彼女がいた。侑真は彼女と遊びに行くために、お金が欲しかったのだ。お金があればやりたいことを何でも出来るから。
『行きたくなさそうですが、残念ながら辞退はできません。』
(まてよ、勝ってもう一度やり直せばいいんじゃないか?)
侑真は思った。
ゲームに勝って、自分だけ記憶を保持して時間を巻き戻してもらう。
そしてやり直すのだ。自分のだめだったところを直し、もう一度彼女とやり直したい。
侑真の中に新たな願いが生まれた。
また、同時に決意が固まったのである。
「分かった。準備はできてるから、連れてってくれ。」
投げ捨てるかのように言い放つ。
『分かりました。ご案内しますね。』
脳に響く声がそう告げる。すると、目の前に謎のゲートが出現す
る。そのデザインは禍々しいが、どこか落ち着いていて、調和の取
れたデザインだった。
『それをくぐってください。会場に着きます。』
拍子抜けであった。車か何かで向かうと思ったのだ。
しかし、同時に思い出す。会場はこの星にあるとは限らないのであ
る。つまり、このゲートは星間を、あるいは宇宙、それとも世界線
をも超えてしまうゲートなのである。
侑真は立ち上がり、ためらうことなくゲートをくぐる。
体を不思議な浮遊感が包む。
そしてそのまま段々と意識が遠のいていき…
目が覚めると。侑真は謎の部屋にいた。本当に謎の部屋だ。
周りにはたくさんの機械がある。観察していくと、読めない言語で
書いてあるが電気系の施設であることは分かった。
(とりあえず、ここ出るか。)
こんな部屋にいても何も起こらない。
そう考えた侑真は廊下に出た。
セキュリティの重い部屋だったのか、少しドアを開けるのに手こずったのは内緒である。
歩いていくと、広間があり、椅子が円形の卓を囲んでいた。
人は座っていない。座って休憩するか、探索を続けるべきか一瞬迷った。
しかしその葛藤は卓の上にあるお菓子を見て吹き飛んだ。
昼食を抜いていたこともあり、腹が減っていたのだ。
勝手に席に着き、勝手に菓子をほおばる。
マドレーヌだった。ただし、グレーの。
何でこんな色なのやら。そう思いつつ周囲を観察する。
その広間、というか建物は全体グレーを基調として作られていた。
そこでこのマドレーヌは建物の色に合わせられているのだと理解す
る。何故なのかは分からなかったが。
(これから騙しあいするといえど、流石にこれがもう既に罠で毒が
入っているなんてことはないだろう。何せやるのは人狼だ。毒なん
て要素出てこないだろう。)
そう考えてのことだったが、事実これは間違っていなかった。
そうして菓子で腹を満たしていると。
一人の人影が近づいて来るのが目に入る。そして、声をかけられる。
「あ、この建物の人ですか?」
自分と身長は同じくらいの、しかし顔立ちは整っていかにも筋トレ
していますという体の男性に声をかけられる。
「いや、違う目が覚めたらここにいた。多分同じでしょ。」
男性、というか青年はうなずく。
「とりあえず座りな。他にも人いそうだし、菓子でもつまみながら
集まるの待とうか。」
促せば、青年は椅子に腰かける。
そして互いに自己紹介をし、ほかの人が集まるのを待った。
彼の名前は芥川るいと言うのだという。とりあえず「るいくん」と
呼ばせてもらっている。俺はなぜか「さばちゃん」と呼ばれてい
る。何故苗字にしたのか、それもあだ名なのかは分からなかった
が、ここに来る前の友達にもそう呼ばれていたので特に違和感は感
じなかった。
二人で雑談をし、友好を深めていると三人目、四人目と段々と人が
集まってきた。そしていつしか場はるいが仕切っていた。
(まぁこんなよく分らん奴よりイケメン好青年がまとめたほうがい
いわな。本人も苦手ではなさそうだし。)
そんなことを考えていると、最後の一人、13人目が現れる。
その男性にるいが座るように促し、全員が席に着く。
見回して思ったこと、それは全員が若いことだ。ほとんどが学生と
見て取れた。
13 人目が座ったのを確認したるいが立ち上がり、言葉を発する。
「え~っと、多分これで全員なので、自己紹介でもしようか。」
その場の全員が静かにうなずいた。
るいの言葉に従って、全員が自己紹介を行っていく。
全十三人で、内訳は男性10人女性3人。男性に偏っている。
ざっくり自己紹介の内容をまとめると、こんな感じ。↓
青山蒼宙 あおやま そら 男 あおちゃん
鯖江侑真 さばえ ゆうま 男 さばちゃん
霧島優 きりしま ゆう 女 太郎
芥川るい あくたがわ るい 男 るいくん
天城秋 あまぎ あき 男 あっきー
吉良玲央 きら れお 男 キラくん
龍華輪廻 たつか りんね 男 リンリン
花沿善 はなぞい ぜん 男 ゾイちゃん
宵闇一香 よいやみ いちか 女 やみちゃん
栗栖虹輝 くりす こうき 男 くりぼー
鈴木佳奈 すずき かな 女 かなねぇ
時雨飴 ときさめ あめ 男 あめちゃん
飯森湊 いいもり みなと 男 みぃにぃ
どうやら全員面識はない様子。
太郎こと霧島優が全員にあだ名をつけた。
みんなと仲良くなれるように!と言っていたが必要だったかは分からない。
一人、天城秋だけは俺の顔に見覚えがあったそうだが、俺は覚えていない。
おそらく、天城君の世界線では知り合いだったのだろう。
実際、僕のことを見るなり
「さばさん!?どうしてここに」
と聞いてきたし、向こうの世界では志目鯖人というらしいし。
さて、そうして一段落したところで疑問が起こる。
その事を口にしたのはるいだ。
「で、え~っとこの後はどうすればいいのかな。」
確かにその通りだ。とりあえず、自己紹介はしたがこの後出来るこ
とはなんなんだろうか。
『ここから先については私から説明いたしましょう。』
誰のものか分からない声が広間に響いた。
それと同時に、円卓から少し離れた場所にホログラムで女性が出現
する。長髪で、身だしなみの整った女性だ。
「私の名前は四宮紬(しのみやつむぎ)。今回の茶吾会人狼の運営
をさせていただきます。」
全員の視線がその女性に集まる。
「分からないことがあったら適宜聞いてください。まず、みなさん
の手元には今資料が現れたと思います。」
そう言われて全員の視線が卓上に戻るなり、そこには先ほどまで無
かったはずの資料が現れていた。
「時間をとりますので資料に目を通してください。」
言われるがままに全員が資料に目を通す。
(読者の方々も資料を別で公開していますので、目を通していただけると幸いです!)
そして、全員が資料を読み終わったことを確認した紬が再び話始め
る。
「補足説明ですが、キルされてもその場に死体は残りません。です
ので、誰がキルされたのかは次の日の昼に分かることになります。
以上ここまでで何か質問はありますか?」
紬の問いかけに手を上げるものは居ない。
「それでは、さっそくゲームを始めましょうか。質問については答
えられる範囲であれば昼の会議中に答えますし。なにより実際に体
験したほうが分かりやすいでしょう。全部で三ゲームあるのでその
うち慣れると思います。」
(いや雑だし急だなぁ。そんないきなりやれって言われても…)
「それでは、皆さんをランダムに館の中に転送したらゲームを開始
します。くれぐれも役の確認だけは忘れないようにしてください。
それでは、ご武運を。」
そう言うなり、参加者全員の体が薄くなっていく。
(はいはい有無を言わせずですか…まぁ良いでしょう。)
その言葉を最後に、全員の体が広間から消える。
そうして、突然ながらゲームが始まった。
コメント
3件
さばさん最高です! 天城を出してくれてありがとうございます!
みぅです🤍 読了しました〜! 失恋した直後の侑真、序盤の落ち込みっぷりがもう胸に刺さる…「なんでだよぉ」が切なすぎるよ。でも「時間を巻き戻してやり直したい」って希望を見つける流れ、すごく良かった。失恋のどん底からまた立ち上がる決意がちゃんと描かれてて。 13人の自己紹介あだ名つけるシーン、各キャラの個性が一気に見えた感じがして好き。特に「太郎」ってあだ名つけられた霧島優が気になる…これからどんな動きするんだろ。 るいの仕切る感じとか、四宮紬のミステリアスな雰囲気もすごく好み。次の展開が気になる!続きも読ませてもらいますね🌙